いつもより“エンタメタイム”を確保できた活動自粛期間において、私の可処分時間の多くを消化したのは、Apple TV+で配信されているオリジナルドラマ作品『ザ・モーニングショー』でした。きっかけは、好きなアーティストのYouTubeライブ配信トーク。中盤、MCもアーティスト本人も、本題そっちのけでこのドラマのレビューで盛りあがっていたのを観て興味津々。トーク終了後、Apple TV+にアプリを切り替え第1話を観たところ、いわゆる“沼”にハマりました。
その最大の魅力は、ドラマの域を超えた“攻めっぷり”。配信ドラマだからこその既存の常識にとらわれない攻めた内容、1話あたり約16億円といわれる制作費を投じた攻めのクオリティです。
ジェニファー・アニストン、リース・ウィザースプーンのW主演ほか魅惑のキャスティングに、ドラマとは思えない映像美(Apple TV+のオリジナル作品はすべて、4K HDRの映像とDolby Atmosの音響で制作されています)。内容もコメディ、サスペンス、ミステリー、ドキュメンタリー要素もありながら、超一級のエンタテインメントとしてまとまっている。1話ごとの完成度も高く、よくできた映画を10本観たような気になります(全10話)。
奇をてらうのではなく、質実ともに上等な作品を、破格のスケールで丁寧に作る。その正攻法がかえって新鮮で、配信ドラマ界に一石を投じたように思えました。
あらすじは、いろんなサイトに詳しいので割愛しますが、MeToo運動を主軸にしつつ、メディアのこれから(TV vs YouTube)、パワハラ、プライベートと仕事のバランスといった、現代の課題が絶妙に物語をリードします。そこに派生するのは、女性vs男性、女性vs女性、男性vs男性、本音と建前、経営陣と現場といった、社会や人間関係におけるしがらみ。現代ドラマでありながら、人間関係における普遍的なテーマにまで踏み込んでいて、観る人の“共感神経”を刺激します。
ポイントは、それらをステレオタイプの対立構造としてではなく、様々な視点から描いているところ。セクハラ問題も加害者側のストーリーを織り交ぜ、誰もが被害者にも加害者にもなりえるという、一筋縄ではいかない様子を繊細にかつわかりやすく映します。さらに、問題に対して沈黙したり他人事を貫く人についても焦点をあて、その是非を問いかけます。
そして何より、主演を務めたふたりが本当にチャーミング。相反するキャラクター同士を意外な展開で絡ませプラスのケミストリーを生じさせる演出は、多様性時代のひとつの解をみた気がしました。ドラマ鑑賞後は、主演ふたりのどっち派?でもりあがること必至でそれもまた面白い。
ほか、早送りしないで見入ってしまうオープニングも素晴らしいし、ラスト3話の、毎回異なるエンディングの演出は鳥肌もの。ツイストのきいた台詞がポンポンでてきて、これはもう暗記して使いたいほど。と、書きたいことはたくさんで続編が待ち遠しいのですが、あいにくコロナウイルスの影響で制作が延期されている模様。かくなるうえは英語の勉強をかねて英語字幕でおさらい鑑賞をしつつ、次の配信を待ちわびたいと思います。
食べること、カラダを動かすこと、旅することが大好物のアクティブ派。その反動か、ワードローブは甘め嗜好。花柄アイテム&ワンピースがクローゼットを占拠しています。