【ディオール展】に行ってきました。私的見どころをレビュー #深夜のこっそり話 #1665

世にも美しいポスタービジュアルをひと目見たその日から、何があっても観に行かねば、と決めていた展覧会があります。それは、東京都現代美術館にて開催中の「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展。2017年、メゾンの70周年を記念してパリで開催されたのをを皮切りに世界各地を巡回してきた大規模な回顧展で、ムッシュ ディオールの手による貴重な作品はもちろん、彼の後を継いだ歴代のクリエイティブ ディレクターたちの数々のピースも展示されているだなんて。ファッション展が大好物な私が、ふつつか者ながらいくつかの感動ポイントをレポートします。

①服飾史に燦然と輝く伝説の「バー」スーツ

「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展に展示されている「バー」スーツ
「バー」スーツの進化形とも呼べるピースとともに、ブラック&ホワイトの空間に佇んでいます。 「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展示風景(2022年)東京都現代美術館

会場に足を踏み入れて間もなく、1947年に発表された世にも有名な“ニュールック”の象徴である「バー」スーツと対面します。なだらかな肩、大胆に絞られたウエスト、ふんわりと広がる裾とプリーツスカート。ファッション好きならきっと誰もが目にしたことのある、セーヌ河岸で撮影されたモノクロ写真が思い浮かぶのではないでしょうか。女性をリスペクトし、その美しさを称えてきたムッシュが世界中の女性たちにかけた魔法を目の当たりにしました。

②およそ70年にも及ぶ日本との関わり

「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展に展示されている資料
大丸でのドレス制作に大いに役立ったであろうスタディブック。日本のファッションにこんな歴史があったとは!

みなさんは1950年代に日本でディオールの製品が作られていたことをご存じでしょうか。恥ずかしながら私は知りませんでした! 正確には、鐘紡や大丸がディオールとパートナーシップを結び、メゾンから提供された型紙を用いて自社で製作を行なっていたのだとか。新米ファッション編集者の友、『新・田中千代服飾事典』でもおなじみの田中千代先生も携わっていたそうで、日本との70年近くにも及ぶ関わりを知り、当時の女性たちにディオールのクリエイションはどう映っていたのだろうか、と興味が湧いてきました。

③歴代の名作が一堂に会するスペシャルな空間

創設者であるムッシュ ディオールの後には、イヴ・サン=ローラン、マルク・ボアン、ジャンフランコ・フェレ、ジョン・ガリアーノ、ラフ・シモンズ、そして現クリエイティブ ディレクターのマリア・グラツィア・キウリが続くのですが、7名それぞれの作品にフォーカスした空間が用意されています。シルエットも素材もさまざまながら、ひとりひとりがディオールのレガシーであることが感じられる演出!

④ため息の出るほど美しいオリジナル写真作品

「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展 高木由利子の写真作品
目の前のマネキンもじゅうぶん美しいのですが、やはり人の身体が通るとドレスが“生きる”ように思います。 「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展示風景(2022年)東京都現代美術館

巡回展の域を超えているな、と思ったのが、会場に展示されていた写真家・高木由利子さんによる写真作品の数々。私が目を奪われたポスタービジュアルを撮影したのも彼女です。今回のために高木さんはパリに渡り、貴重なアーカイヴピースを120点も撮影したそうなのですが、ドレスとモデル、そして一輪の花を自然光で捉えた作品はタイムレスな美しさ。普段はきっと厳重に保管されているであろうドレスたちが生き生きと語りかけてくるような、とても素敵なプロジェクトだな、と思いました。ここ最近で目にしたファッションフォトの中でも特にお気に入りです。

⑤これぞモードの夢! 圧巻のイブニングドレス

実は本展の展示は1階と地下2階の2フロアに渡っており、美術館の構造上、吹き抜けになっているエリアがあります。展覧会の空間演出を手掛けたのは建築家・重松象平さんなのですが、この空間の生かし方に感動! かなりの高さまでずらりと並ぶきらびやかなイブニングドレスにプロジェクションマッピングが施され、荘厳なムードさえ醸し出している大作です。プレビューでは展示のあまりの規模感に焦ってじっくり見られなかったのですが、次回はこのスペースでゆっくり過ごすことを決めました。

他にも、トワルだけを集めた純白の世界、虹のように配置されたドレスやアクセサリーのジオラマ、天井まで陳列されたアーティスティックなレディ ディオールなど、見どころはたくさんありますが、キリがないのでこのあたりで。ぜひ時間に余裕を持って訪れるか、何度か足を運ぶことをおすすめします。私も1月のチケットを予約しました!なお予約制の日時指定券は数に限りがあるものの、MOTのTwitterでは当日券の販売状況もアナウンスされています。

そして最後にお楽しみのギフトショップへ。高木さんの作品を収録した豪華なカタログも素敵でしたが、次の予定もあったので、今回は特に気に入ったポストカードと鉛筆をさくっと購入。ポストカードを飾るために早く大掃除をせねば、という気持ちにさせてくれる意外なご利益もありました(!)。

「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展のポストカードと鉛筆
何度眺めてもうっとり。鉛筆はディオールならではの配色にしました。

今年は「ガブリエル・シャネル展 Manifeste de mode」、「SEE LV展」や「BETTY CATROUX - YVES SAINT LAURENT 唯一無二の女性展」など、東京にいながらにして美しいものをたくさん観られたなあ、と。もちろん時代の空気をこの上なくエレガントに捉えるのがモードの醍醐味ではありますが、かつて人々を熱狂させた傑作が今もここに美しくあるさまを見るのは本当に大好き。来年は「イヴ・サンローラン展」も予定されているようで、こちらも楽しみです!

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エディターMATSUE

モードとカルチャーの狭間で15年。音楽と鉱石とフレンチフライから逃れられません。

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