『梨泰院クラス』『ヴィンチェンツォ』『私の解放日誌』など。心を震わす名作韓ドラには“22人分”の秘密があった! #深夜のこっそり話 #2001

「発売されたら絶対に買う!」と決めていたこちらの本。『韓国ドラマを深く面白くする22人の脚本家たち』です。韓国書籍を取り扱うクオンから出版されています。私がかれこれ20年以上Kドラマにどっぷり浸かっていることはさておき、想像以上に内容が濃く、端的に素晴らしすぎた! このレベルの22人の売れっ子脚本家の記事を見られるなんてそうそうないですし、韓ドラ好きはもちろん、日頃から文字に触れる機会が多い人や、脚本家志望の人も見て損はしないというかインスピレーション源になるのではないかと思う、そんな本です。

「発売されたら絶対に買う!」と決めていたこちらの本。『韓国ドラマを深く面白くする22人の脚本家たち』です。韓国書籍を取り扱うクオンから出版されています。私がかれこれ20年以上Kドラマにどっぷり浸かっていることはさておき、想像以上に内容が濃く、端的に素晴らしすぎた! このレベルの22人の売れっ子脚本家の記事を見られるなんてそうそうないですし、韓ドラ好きはもちろん、日頃から文字に触れる機会が多い人や、脚本家志望の人も見て損はしないというかインスピレーション源になるのではないかと思う、そんな本です。

日本でも大ヒットした、あのドラマの誕生秘話に心躍る

『韓国ドラマを深く面白くする22人の脚本家たち』ハンギョレ21、シネ21著/文 岡崎暢子訳(クオン/2,420円)
7月17日に発売された新書。『韓国ドラマを深く面白くする22人の脚本家たち』ハンギョレ21、シネ21著/文 岡崎暢子訳(クオン/2,420円)

潔く、わかりやすすぎるデザインにもグッと来ます。日本リメイク版が制作されたことでも、日本人にとってより馴染み深い『梨泰院クラス』や、「私を崇めて」という名言を生み出した名作ヒューマンドラマ『私の解放日誌』、主演級キャストが大集結し、チェジュ島に暮らす人々の人生を丁寧に描いた『私たちのブルース』。アン・ボヒョンとキム・ゴウンの最高値のケミに加え、実写×アニメーションという挑戦的な演出方法をなんの違和感なく、それどころか感情移入しまくり状態にさせられる現代ロマンス『ユミの細胞たち』などなど。それはそれはもう、名作中の名作ばかり!なドラマの名が連なっているんです。韓ドラ好きは作品名を見ただけで笑みが溢れてしまうのではないでしょうか。超大御所から若手実力派まで、22人もの(忙しすぎる)脚本家たちにインタビューするなど、並大抵のことではないことを重々承知しているため……(涙)、ハンギョレ新聞社『ハンギョレ21』と姉妹誌の『シネ21』の皆さんに心から感謝を述べたい!!

『韓国ドラマを深く面白くする22人の脚本家たち』ハンギョレ21、シネ21著/文 岡崎暢子訳(クオン/2,420円)
まず本作に掲載されている韓ドラは、間違いない作品たちです。未視聴でも、本を読んで気になった脚本家のドラマを観るのも楽しいはず。

脚本家それぞれのルーツを知ると、ますます作品への愛着が湧いてくるというか。例えば『梨泰院クラス』。パク・ソジュン演じるイガグリ頭のタフガイ、パク・セロイと宿敵の長家グループとの闘いを描いた物語でしたが、チョ・グァンジンさんによると、セロイのイメージは自身の母だったとか。『二十五、二十一』など、様々なドラマのモチーフにもなっている1997年のIMF通貨危機のあおりを受けたグァンジンさん一家は、南原(ナムウォン)への移住を余儀なくされ、都会の生活から一転したそう。そんな苦しい状況のなかでも「貧しさを感じずに夢を見ながら成長することができた」のは、いつも頼もしく支えてくれた母のおかげと話している。『SLAM DUNK』『NARUTO-ナルト-』『ONE PIECE』を読みながら伸び伸び育ったというグァンジンさんをはじめ、日本文学や漫画からインスピレーションを得たと話す脚本家がたくさんいるんです。

ヒューマンドラマの巨匠パク・ヘヨンさんが描く不朽の名作『マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜』『私の解放日誌』。誰も触れることができなかった韓国の兵役制度の闇に食い込んだキム・ボトンさんの『D.P. –脱走兵追跡官–』。「自分の仕事で誰かを傷つけるようなものを書かないように」と視聴者に最大限の敬意を払いながら、社会問題への問いをスリラーサスペンスで描いたキム・スジンさんの『怪物』。母になった経験を活かし、歴史ドラマに性的マイノリティをしなやかな演出で強く表現したパク・バラさんの『シュルプ』etc.。語り出したらキリがないくらい、どの作品も現代社会が抱える問題点をうまく盛り込みながら視聴者に投げかける、そんな作品ばかりです。

台詞ひとつ取っても、それぞれの脚本家がこれまでの人生からヒントを得た言葉もあれば、今後の社会への思いを乗せた言葉もある。キャラクターを介して視聴者や社会に伝えたいことは何なのか? 改めてもっと深く、注意深くドラマを観ていきたいと感じました。

ヒューマンとロマンスの配分が絶妙な『その年、私たちは』、『私たちのブルース』

『梨泰院クラス』『ヴィンチェンツォ』『私の画像_3
左は『その年、私たちは』、右は『私たちのブルース』のオリジナルサウンドトラック、DVD集です。まだサブスクが主流ではなかった頃に焼いたり、購入したりしたDVDは膨大すぎて、実家に保管しています(笑)。

個人的にもすごく好きな『その年、私たちは』も掲載されています(P223)。脚本家は、1993年生まれで本作が長編デビュー作となったイ・ナウンさん。ナウンさんのインタビュー記事を担当されたキム・ヒョシルさんも語っていますが、まさに「すごい脚本家が現れた!」と度肝を抜かれるような作品でした。「王道の青春ロマンスの見せ方はもう出尽くしたよね」と思っていたところに、まだこんな演出があったのか!と思わず膝を叩くような不思議な空気感が漂うドラマに仕上げてきたんですよね。実力派俳優チェ・ウシクとキム・ダミ(映画『THE WITCH/魔女』で共演。しかしその時は敵役)が無名の新人作家のドラマに出演!?と、キャスティング発表時点から騒がれていたくらい、ビッグニュースでした。が、今となってはこのふたりが心惹かれた脚本なのだから、そりゃあ名作だよね……と感じます。

『梨泰院クラス』『ヴィンチェンツォ』『私の画像_4
エモーショナルでいて新しさも感じられる。作品の演出方法も素晴らしかった! チェ・ウシク演じる覆面作家コ・ウンが描いたイラストも素敵なんですよね。
『梨泰院クラス』『ヴィンチェンツォ』『私の画像_5
ポストカードを見ると、ドラマのワンシーンが蘇ってきます。良質なヒューマンドラマに目がないのです。

ヒューマンドラマ好きであれば問答無用に観てほしいと切に願うのが、こちらの『私たちのブルース』(P23)。本に取り上げられている脚本家のなかでも崇拝する人が多い、大御所脚本家ノ・ヒギョンさんの作品です。側から見て「え、この人も出演するの?」と驚くような、これまであらゆるドラマで主演を張ってきたような俳優たちが大集結しているんですね。それだけでも名演技が炸裂することは想像に易いかと思いますが、登場人物全員への愛を感じられるような作品です。誰も蔑ろにしない、大切に描きたい、という思いがきちんと伝わってきます。ひとつのブレない軸のなかで描かれるオムニバス形式。世代関係なく、心に刺さるキャラクターやエピソードが必ずあるはずです。

原稿を書く手が止まらず、このままいくと朝までタイピングし続けてしまいそうなので……この辺りにしておきたいと思います(苦笑)。「より良い社会にしたい」「視聴者の心を震わすドラマにしたい」と試行錯誤する22人の脚本家たちが紡ぐ言葉を前に、このドラマも、あのドラマも見直さなければ!という使命感に駆られています。時間がいくらあっても足りない……!!

エディターKISHIプロフィール画像
エディターKISHI

ハマり癖のある、いわゆるミーハー。愛犬と過ごす時間と、韓国ドラマ鑑賞が生きがい。主にファッションとセレブを担当していますが、美容ネタも大好物。

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