[vol.116☆最終回☆] 元祖パンクのセックス・ピストルズのジョン・ライドンが妻を介護。ジョン&ノラは、シド&ナンシーよりずっとタフだ。

70年代のパンクロックシーンの幕開けとなったバンド、セックス・ピストルズの生きざまを描いた米テレビドラマ『Pistol』(FX on Huluにて、全6話のリミテッド・ドラマシリーズ)が、ダニー・ボイル監督によって撮影されている。セックス・ピストルズといえば、パンクロックの古典「アナーキー・イン・ザ・U.K.」や「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」が有名だが、メンバーのシド・ヴィシャスと彼の恋人ナンシーのヘロイン中毒による死亡や、一大ブームを起こしたパンクファッションなど、時代を揺るがす話題に事欠かないバンドだった。

 

 

 

そのセックス・ピストルズのフロントで目玉をひん剥いて歌っていたのがジョニー・ライドン(当時はロットン)だ。セックス・ピストルズ解散後は、パブリック・イメージ・リミテッド、通称PILを結成してパンクロックとは決別。65歳となった現在、LAに住む彼は、一時は活動休止していたPILやセックス・ピストルズを再結成してツアーやテレビ番組に出演していたが、このコロナ禍では音楽活動もままならず、自宅に宅配させたファストフードを受け取る写真などがパパラッチされている。セックス・ピストル時代の、痩せてオレンジ色の髪をツンツンに立てた青白い顔の若者は、今ではすっかりかっぷくのいいシニアになった。相変わらず言いたいことをぶちまけて、未だパンクスピリットは健在なジョンだが、半面、アルツハイマー病を患う40年以上連れ添った妻ノラの介護を続けていて献身的な夫でもあるのだ。

 

70年代のロッカーというと、酒、女、ドラッグなどのイメージがつきものだが、生き延びるスターというものは、知性と誠意と、崖っぷちから生還するような運の良さを持ち合わせているものだ。ジョンもまた、もがきながらもタフに生き残り、愛する女性の一生を引き受けて、最後まで彼女を支えていく覚悟なのだ。記憶をなくしていくノラを診ながら愛の偉大さを訴える彼の音楽は、まだまだ形を変えて進化するに違いない。

 

 

 

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イラストレーター&エッセイスト 石川三千花

映画、ファッションを独自の視点からイラスト+エッセイで斬る!著書に『石川三千花の勝手にシネマ』、『勝手にオスカー』など。

https://twitter.com/michikaishikawa

 

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