浜田英枝 × 栗山愛以 ランウェイ語り【2023年春夏コレクションをSPUR視点で超解説!Part.2】

そうだったんだ! ランウェイ〝噂″の真相

プロが選んだベストルックから、アップカミングなデザイナーや話題のモデルのインタビュー、オフランウェイのスナップまで。各都市で開催されたコレクションから気になるトピックを徹底取材。モードラバーたちの「知りたい!」のすべてがここに

"浜栗コンビ"のパリコレクション体験レポート。私たちの心をつかんだ9のブランド

パンデミック以降最大となる、105ブランドが参加したパリコレクションから、 二人のプロが気になったルックとは

浜田 ドリス ヴァン ノッテンは生でショーを見たかった筆頭。ブランドならではの独特の色使いにぐっと心をつかまれました! 撮影したいルックが多かったです。

栗山 花柄のルックが大集合したフィナーレでは皆感動していましたよね。

ドリス・ヴァン・ノッテン

2023 S/S コレクションのドリス・ヴァン・ノッテン
ドリス・ヴァン・ノッテンのショーは3部構成。黒のシリーズからスタートし、パステルカラー、ブランドの得意とする花のデザインをアップデートしたフラワープリントへと展開した

浜田 今季はメンズのルックも光っていました。これまで、フェミニンな要素を用いたメンズウェアは頑張りすぎていたり奇抜に見えるものが多かったのですが、ヴァレンティノはさりげなく、そして品がありました。

ヴァレンティノ

2023 S/S コレクションのヴァレンティノ
モヒカンの男性モデルが、パールのネックレスや透ける素材のトップスを自然体で着こなす。肌の色と調和する多様なヌードカラーが目立った

栗山 ウィメンズとメンズの同時発表をスタートしてからそういう流れがありますね。久々にパリにカムバックしたジュンヤ ワタナベの男性モデルの起用も気になりました。無理にフェミニン方向に寄せるのではなく、ニューロマンティックのアーティストのように着飾る男性特有の色気があって。

浜田 ヘアメイクや音楽も含めて、求めていたバランスでした。

栗山 ウィメンズのファッションウィークで男性モデルが登場するのはもう普通になりましたね。

ジュンヤ ワタナベ

2023 S/S コレクションのジュンヤ ワタナベ
ブランドらしいものづくりにニューロマンティックのイメージを融合。男性モデルも登場した。「デュラン・デュランをはじめとする"軟派な"音楽もツボで、『来た!』と覚醒しました」(浜田)

浜田 アクネ ストゥディオズで男性モデルたちも含めてリボンやレースなどの甘いディテールのルックを着用していた姿も心に残りました。

2023 S/S コレクションのアクネ ストゥディオズ
パリでのコレクション発表10周年を記念して、「ひねりのきいたウェディングパーティ」をテーマに。「花つきの細いベルトの使い方など、スタイリングも気がきいていました」(浜田)

栗山 今季から参加しているスタイリストのヘイリー・ウォレンズのセンスもあるのか、上品さをキープするギリギリのラインで表現していましたよね。

浜田 ロマンティックであり、辛口でもある……。客席がシルクのシーツで覆われたベッドで、ピンクで統一された会場の雰囲気にも圧倒されました。そしてディオールが美しかった! 展示会でルックを間近で見て、採算を度外視して職人技を駆使したものづくりに心を動かされましたし、その姿勢がかっこいいな、とも。

ディオール

2023 S/S コレクションのディオール
メディチ家出身でフランス王家に嫁いだカトリーヌ・ド・メディシスが持ち込んだといわれるコルセットやブラーノレースなどを再解釈

栗山 クラシックな要素にカジュアルなアウトドア風アイテムなどを組み合わせていたり、ジーンズも発表。少し肩の力を抜いている感じも素敵でしたね。ロエベにもその傾向がありました。ここ数シーズン非現実的な世界観を展開していましたが、今季はスタンダードなアイテムを基にしているので、より身近に感じました。

浜田 ゲームのキャラクターみたいなルックも面白かったですね。

ロエベ

2023 S/S コレクションのロエベ
コンピューター画像のピクセルを拡大したようなグラフィックを用いたり、変形させたルックを展開。「インパクトはありつつもベースはフーディなので着やすそう。ほかにもカンバセーションピースがたくさんありました!」(栗山)

栗山 エルメスは、ディオール同様アクティブな要素もあり、印象的でした。「砂漠でのレイブパーティ」がテーマで、テントの機能性やディテールを反映している。乗馬にテクノを融合した先シーズンの「テクノ・エケストル」コレクションを思い出しました。

エルメス

2023 S/S コレクションのエルメス
砂漠でのレイブパーティがテーマの今季、テントが持つ機能性に着目し、ロープや釘を想起させる留め具がデザインのアクセントとなっていた

栗山 ほかに好きだったのはクレージュ。ビーチを意識したセットで肌見せも多かったのですが、Y2Kブームとは一線を画し、クリーンで洗練されていました。会場に煌びやかなセレブの姿が少なかったのが落ち着いた雰囲気につながっていたのかも……!? 

クレージュ

2023 S/S コレクションのクレージュ
真っ白な空間に砂時計のように天井から砂を降らせ、フレンチシックなビーチスタイルを発表した

栗山 終盤のミュウミュウは超ミニ丈とニュアンスカラーのレイヤードが新鮮でしたね。過去のシーズンを引用しているアイテムもあり、2022年から続くスタイルをアップデートした感じ。この傾向は他ブランドにもありますね。

浜田 原点に立ち返ったり、アーカイブスをより発展させるようなものづくりですよね。個人的にはこの先の大きな展開を見据え、各々が改めて好きなスタイルを突き詰めている時期なのかもしれないと思いました。

栗山 「驚き」を期待してしまうタイプなので、次に大きな変化が待ち受けていそうで、うれしいです。来季の取材もますます楽しみですね!

ミュウミュウ

2023 S/S コレクションのミュウミュウ
超ミニ丈のレイヤードスタイルを打ち出した。ロゴ入りのアンダーウェアのチラ見せは今季も登場
Itoi Kuriyamaプロフィール画像
ファッションライターItoi Kuriyama

2014年からパリコレを取材しているものの、今回は2年半ぶりの渡仏。記者として刺激的な変化を求めながらも、消費者目線で"着たいルック"探しも忘れない。

Fusae Hamadaプロフィール画像
スタイリストFusae Hamada

ドリス ヴァン ノッテン2023年春夏メンズの映像を見て、久しぶりのパリコレ行きを決意。自身が手がける撮影で何を表現するか、という視点でショーを見ている。