モードプロが選ぶ マイベストルック【2023年春夏コレクションをSPUR視点で超解説!Part.3】

そうだったんだ! ランウェイ〝噂″の真相

プロが選んだベストルックから、アップカミングなデザイナーや話題のモデルのインタビュー、オフランウェイのスナップまで。各都市で開催されたコレクションから気になるトピックを徹底取材。モードラバーたちの「知りたい!」のすべてがここに

今季のランウェイを、おしゃれな インサイダーたちはどう見た? 玄人の心を射抜いたルックを、 熱愛コメントとともに紹介する

ミケーレ最後のショーはエモーショナルな演出に感涙!

グッチの2023 S/S コレクション

グッチ

「双子という、そっくりながらも異なる二人を題材に多様性を表現。まさか今季がアレッサンドロ・ミケーレのラストになるとは知らず……。今思えばこれが集大成だったのだと納得しました」。特に大杉さんの心に残ったのは、ファーストルック。「トム・フォード期のデザインからヒントを得ていて、目に留まりました。クラシカルなスーツとボウタイブラウスに、ガーターベルトのようなパンツがセンシュアル」

大杉真心さん
(ライター・エディター)

Profile
『WWDJAPAN』の編集記者を経て、2021年8月にフリーランスとして独立。ファッションとフェムテックに関する編集や企画にも携わる。

ルックや会場演出で体現する芯のある女性像が素敵

ジル サンダーの2023 S/S コレクション

ジル サンダー

「ワントーンにパンツで装飾的なニュアンスを加えるのがモダン。自分が取り入れるなら、色使いやフリルなどを少し加えることで凛とした中にも女性らしさを足したい」と金子さん。ショーの演出にも心打たれた。「いつもミニマルながら、遊び心が感じられる。今季は雨や植物など自然に囲まれた会場のムードが、今の気分とマッチ。洗練された洋服とナチュラルな空間とのバランスがとても素敵でした」

金子夏子さん
(スタイリスト)

Profile
数々のパリコレクションも現場で見続けてきた、鋭い審美眼にファンが多い。冬はスキーアクティビティが定番。

ミニマルかつひねりがきいたスタイルに夢中

プラダの2023 S/S コレクション

プラダ

毎シーズン発見があるというプラダより選出。「このブランドらしいミニマリズムがきいていて、ベーシックな中に少し違和感のあるところが好き。こちらはレイヤードしているかと思いきや、ジャケットとレースのガウンが一体化したデザイン。トラッドなスタンドコートに甘いレースを合わせる、対極のものをミックスする感覚が面白いですね。自分ならTシャツとデニム、スニーカーの普段のスタイルに羽織りたい」

飯島朋子さん
(スタイリスト)

Profile
モード誌のほか、広告やブランドカタログなどで幅広く活躍。撮影裏話とともに投稿するInstagram(@iijiytomokoiijima)が人気。

理由がないくらい無条件に敬愛するブランド

ラフ シモンズの2023 S/S コレクション

ラフ シモンズ

「とにかく好き!」と愛を叫ぶ飯田さん。「音楽やアート、ユースカルチャーとの強い結びつきがあることもラフ シモンズに惹かれる理由のひとつ。このルックは、個人的に好みなオールインワンかつ、ニットの素材感やロンパースを思わせる丈の短さも最高ですね。ボディスーツのように着たり、透ける素材のスカートをレイヤードしても。ラストコレクションの記念に購入したい」

飯田珠緒さん
(スタイリスト)

Profile
広告から雑誌まで数多く手がける。10代からのめり込んだ音楽をはじめ、カルチャーにも精通。ボディスーツ、ランジェリーやタイツをこよなく愛する。

自分の装いにも取り入れたいヒントがたっぷり!

チョポヴァ・ロウェナの2023 S/S コレクション

チョポヴァ・ロウェナ

パンキッシュなマインドとチャーミングな感覚のミックスに厚い支持があるブランド。ロンドン・ファッション・ウィークでもその力量を発揮した。「チョポヴァ・ロウェナ待望の初ランウェイに興奮! メンズモデルを交えたジェンダー・フルイドなアプローチには、自身を重ねて見ていました。デッドストック素材を使ったシグネチャーのキルトスカートはスタイリングに大活躍しそう! ラメニットも気になる」

マスイユウさん
(ジャーナリスト)

Profile
ロンドンと浜松を拠点に、グローバルに活躍するジャーナリスト。お肉と餃子をこよなく愛するスタイルアイコン。自称・浜松餃子親善大使。

ショーの要素すべてがデムナの考えや意志を反映

バレンシアガの2023 S/S コレクション

バレンシアガ

「そのときのムードや思いを"総合演出"として表明するデムナの真骨頂が、ショーなんです」と長谷川さん。「最近は怒りや疑問などの"state of mind"を感じています。このルックは、ニコラ・ジェスキエール時代のバッグ、"シティ"を再構築。アデライデで多く買いつけてきたこともあり、個人的にも思い出深いリバイバルでした。それをオールレザーで仕立てたところに強い意志を感じました」

長谷川左希子さん
(「アデライデ」ディレクター)

Profile
高校卒業後すぐに渡英。現在はアデライデ、アディッション アデライデのディレクター兼THE WALLのPR・コンサルタントとしても活躍。

次世代が継いでいくクリエーションの真髄

イッセイ ミヤケの2023 S/S コレクション

イッセイ ミヤケ

「ブランドを象徴するプリーツを、100%植物由来ポリエステルの新素材でデザイン。シンプルながら革新的なルックですね」と根岸さん。「ブランドの"イズム"とその進化を含みながら、どこかニュートラルな印象に惹かれました。今回は三宅一生さんが亡くなられて初めてのショー。改めてその偉大さを感じつつ、これまでの歴史が次世代へと受け継がれる過程に自分もいるような、荘厳な時間を過ごしました」

根岸由香里さん
(「ロンハーマン」 ウィメンズディレクター)

Profile
文化服装学院スタイリスト科卒業。2008年にサザビーリーグに入社。バイヤーを経て2016年に現職に就任し、国内24店舗を取り仕切る。

着る人自身の個性がより大切な時代

スポーツマックスの2023 S/S コレクション

スポーツマックス

「多様性とあえてうたわずとも、人種や年齢を超えたモデル選びが定着しましたね。このルックは、お布団のようなユニークなフォルムとパステルイエローの一見"可愛い"要素に、クールな印象のモデルを選ぶところがさすが」とキャスティングも含めて評する吉田さん。「モデルの個性とルックをどう組み合わせるかもブランドの姿勢ですよね。着る人ひとりひとりのパーソナリティが大事だと改めて思いました」

吉田佳世さん
(スタイリスト)

Profile
ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを経て、2007年にスタイリストとして本格的に始動。ロマンティックな世界観にファンが多い。