アジア発の才能に注目だ!【2023年春夏コレクションをSPUR視点で超解説!Part.5】

そうだったんだ! ランウェイ〝噂″の真相

プロが選んだベストルックから、アップカミングなデザイナーや話題のモデルのインタビュー、オフランウェイのスナップまで。各都市で開催されたコレクションから気になるトピックを徹底取材。モードラバーたちの「知りたい!」のすべてがここに

世界各国で萌芽する、アジア発のニューカマー。ソウルと台北のレポートに加え、ミラノを拠点に活躍する日本人デザイナーに直撃!

ソウル by Cheri Yun(スタイリスト、ファッションブロガー)

JIMINLEE、UL:KIN、AJOBYAJO

ニッチブランドの成長にさらなる期待

2年ぶりの開催となるファッションウィークだからか、以前より多くの一般の観客も参加して、お祭りのような雰囲気に。まず注目したのは、JIMINLEE。メンズ服がこんなにセクシーさを醸し出せるとは!と感動したブランド。計算されたカットアウトに老練さが潜み、今後にも期待したい。

UL:KINはコマーシャルな部分と芸術性をうまく融合しているブランド。アスレジャー・フューチャリズムなムードを今季も提案した。解体主義的なデザインが目立つものの、デニムを巧みに活用してユニークなポイントを加えたのが面白い。

最後は、乙支路(ウルチロ)発のアンダーグラウンドブランド、AJOBYAJOのデビューコレクション! アバンギャルドなトップスのフィット感と、メッセージ性のあるプリント、ルーズフィットなパンツなどが象徴的。GUCCIのショーから注目していたツインモデルの演出がソウルでも登場し、印象深くもあった。

1 袖からサイドにかけてカットアウトを施したシャツルック。難しいディテールはなく、抑制された色気が感じられる
2 装飾的なデニムパンツはローライズで。毎回新しい姿を見せながら、トレンドも押さえているのがポイント
3 プリントが目を引く。さまざまな性別、年齢のモデルが登場し、多様性を尊重したキャスティングも目立った

PROFILE
韓国やロンドンで英文学、ファッションビジネス、VMDを専攻。
Instagram: @cheristyle_

台北 by Yu Masu(ジャーナリスト)

Chiahung Su、Jenn Lee、Seivson

サステイナブルな服作りに注目

コロナ禍以降初めて海外からのゲストを迎えた、台北ファッションウィーク。今、デザイナーによるクリエーションの発表だけでなく、台湾文化やサステイナビリティに基づいた、最新テキスタイルの発信の場にもなっている。

幕開けを飾ったのは、台湾原住民の女性伝統技術職人たちと5ブランドのコラボレーション。そのひとつがChiahung Suだった。以前から、原住民による風合いのある手織生地を使用。迪化街にあるアトリエでは、デッドストック素材を自身で植物から抽出した成分で染色する、サステイナブルな服作りにも取り組んでいる。

このプロジェクト以外で注目したのは、Jenn Lee。オリジナルのプリントを用いたパンキッシュなコレクションを展開し、プラスサイズモデルやドラァグクイーンを起用。ダイバーシティなショーを表現した。

以前東京で発表していたSeivsonは、デザイナーの友人やセレブリティがフロントローに集結。会場を華やがせた。

4 ロンドンでメンズウェアを学んだだけある、美しいテーラリング。古い硬貨をボタンに加工するなど、細部までこだわりが光る
5 台北ローズガーデンで雨の中モデルもゲストも傘を差して行われた屋外ショー
6 シグネチャーともいえるトレンチコートやそれを再構築したガーメントが並ぶ。今後は東京でのフィジカルショー復帰も考えている

PROFILE
ロンドンと浜松拠点のファッションジャーナリスト。LVMH PRIZEのスカウトも手がける。

What is SETCHU?

アジア発の才能に注目だ!【2023年春夏の画像_3

ミラノを拠点に、長く愛される服を作る
日本人デザイナーの桑田さとしが手がけるセッチュウは、パンデミック中にスタートしたファッションブランド。「コロナ禍でミラノを活動の拠点にしたことが、かえってよい結果となりました」と語るように、イタリアで昨年18回目を迎えた気鋭デザイナーを発掘するコンテスト「Who Is on Next」で最優秀賞に選ばれた。

「自分のルーツから出発して、さまざまなカルチャーが交差するものづくりがしたい」というアイデアを温めてきた彼の経歴もユニークだ。老舗テーラーのハンツマンからガレス・ピュー、ジバンシィ、そしてイードゥンでキャリアを積むことでよりコンセプトが明確になり、"折衷"というネーミングも自然に生まれた。

完成したのはサヴィル・ロウで学んだテーラリングをベースに、自分らしい"崩し"を加えたスポーティ&ドレッシーなコレクション。折り紙や着物からヒントを得た折り目が特徴的なデザインに、素材からこだわって制作するオリジナルの色と布地、さらに仕上げの丁寧な手縫いが独特の風合いを醸し出す。ややオーバーサイズでクールに落とし込んだユニセックスのジャケットやコートは、体に寄り添うように優しくフィットする。着心地のよさは抜群だ。「大事なのは、世代を超えて長く愛されること。"定番デザイン"をこれからも作り続けたい」

インターナショナルギャラリー・ビームスで一部アイテムが購入可能。
7 「将来は、目に映るものすべてをデザインするライフスタイルブランドにしたい」と語る桑田さん
8 コンセプチュアルかつクリーンな佇まいのコート。推しポイントはガンフラップのディテール!
9 定番人気のジャケット。「毎回、コレクションの半分は定番品で構成します。そのほうがサステイナブルで、長く愛着を持って着てもらえるから」

PROFILE
Satoshi Kuwata
京都出身。セントラル・セント・マーチンズ卒業後、パリ、NYを経てミラノでブランドを設立。2021年春夏より始動。Instagram: @setchu.official

FEATURE
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