そうだったんだ！ ランウェイ〝噂″の真相
プロが選んだベストルックから、アップカミングなデザイナーや話題のモデルのインタビュー、オフランウェイのスナップまで。各都市で開催されたコレクションから気になるトピックを徹底取材。モードラバーたちの「知りたい！」のすべてがここに
今季もさまざまなブランドが環境負荷を減らす取り組みを実践。その先頭に立つデザイナーの肉声から、未来に思いを馳せて
ファッションSDGsのトップランナー、ステラ・マッカートニーにインタビュー！
2023年夏コレクションで使用されたウェアの91％の素材がエココンシャスで、ブランド史上最もサステイナブルな構成を実現したステラ マッカートニー。デザイン性と持続可能性の両立を模索してきた彼女に、日本を代表する画家・彫刻家の奈良美智とのコラボレーションピースを発表したショーへ込めた思いや、今後の展望を聞いた。
「今回のテーマは＂Change the History＂。奈良美智が掲げる、反骨精神にあふれたメッセージです。私も心打たれたこの言葉は、世界が混乱している今こそ発信するべき重要なものだと思っています。私たちには、『自然と動物との共存』への共通の思いがあり、再びコラボレーションを実現しました。ファッションとアートの融合により、社会問題への強い注意喚起を行うというアイデアは、とても気に入っています。さらに今シーズン、コレクションのウェアの91％に責任ある素材を採用。森林の環境に配慮したビスコース、再生ナイロン、リサイクルポリエステル、オーガニックリネンやデニム、追跡可能な供給元からのRWS認証ウール……あらゆる素材や技術を駆使して目標となる数値を達成したことを誇りに思っています」
このほかイタリアのワイン産業から出る搾りかすを使用したブドウ由来の素材のバッグや、キノコの菌糸から作る素材を採用した「フレイム マイロTM」というバッグも登場。さらにバイオダイバーシティの保全につながると注目を集める、再生コットンも初めて使用した。
「再生コットン農業には、土壌を健康にし、気候変動に対処し、最終的には農業をより強靭にする可能性が。私たちは3年前からSoktas社とパートナーシップを結び、トルコでこのプログラムに取り組んでいます。春には、再生コットンでつくったＴシャツを販売予定です。毎年発行するエコ・インパクト・レポートによればほかにもさまざまな素材が調達可能な段階にあることがわかっており、今後もオーガニック素材や再生素材の使用を徹底し、91％以上の達成を目指していきます」
情熱を持って持続可能なファッションの実現に取り組む彼女は、2019年からLVMHのサステイナビリティ・アドバイザーも務めている。
「（LVMHグループ会長兼CEOの）ベルナール・アルノーは環境問題に関心が高い。これは、世界が変わる＂ゲームチェンジ＂を意味します。グループは再生コットン事業への投資をしており、これからの展開も大いに期待できる。私も素晴らしいポジションを与えられたので、組織の内側からいろいろなアクションを起こしていきたいです」
1 森林管理協議会によって認証を受けた森から調達したパルプから作られた、トレーサブルなビスコース製のジャケット
2 アイコニックなチェーンのバッグ「フレイム」には、再生可能なキノコを原料とした素材「マイロTM」を採用
3 2度目となる奈良美智とのコラボレーション。パンクな姿勢でメッセージを投げかける彼にステラ・マッカートニーは共鳴する
4 再生ナイロンを使ったトップスは、目が覚めるような発色のよさも魅力
5 カットオフデザインがきいたオーガニックデニムのセットアップ。サステイナブルな素材を厳選しながらデザイン性も妥協しない。ブランドのこだわりを感じるルック
6 ブドウの搾りかすを素材の一部に用いたヴィーガンレザー製のクラッチバッグ。動物性の皮革と見間違うような、なめらかで上質な質感に驚く仕上がり
Profile
Stella McCartney
英国のセントラル・セント・マーチンズ卒業後、デザイナーとしてのキャリアをスタートし、2001年より自身の名前を冠したブランドをスタートさせた。
