【2023-'24年 ミラノFW】 注目5ブランドの見どころを現地取材エディターが語る!
2月22日から27日まで行われた2023-24年秋冬ミラノ・ファッション・ウィーク。新クリエイティブ・ディレクターのデビューラッシュだった先シーズンが、記憶に新しい人も多いはず。デザイナーの真価と実力が試されるのが、セカンドシーズンに他なりません。続く秋冬コレクションを現地取材すべく、各国から多くの取材陣がミラノに集結しました。
パンクスタイルが炸裂したモスキーノや、ドルチェ&ガッバーナの支援を受けてコレクションを発表したトモ コイズミも話題に。また、韓国スターに加えて中国、タイとアジアンセレブリティへの注目度が高まりを見せ、各所で熱気を感じるシーズンとなりました。今回は編集部が特に注目した5ブランドと、その推しのルックを厳選。日本からLIVEでオンライン取材したエディターRと、現地へ出張したエディターKのトークとともにお届けします!
エディターR(以下R):ミラノコレクションを取材したKさんお帰りなさい! 3年ぶりの現地取材、どうでしたか?
エディターK(以下K):1月に開催されたメンズのファッション・ウィークからその兆候は明らかだったけれど、韓国勢を中心としたセレブリティを巻き込み、お祭りのようなムードが加速していました。そんな私も、SNS用に必死で撮影を試みる日々。左手に照明用、右手に撮影用のスマホを常に持っていたために、いまだに首と肩が痛い……。ですが、みなさまから多くの反響をいただいたことが、救いになりました。もちろん、ファッションも盛り上がっていて、プラダやフェンディ、ジョルジオ・アルマーニ、ドルチェ&ガッバーナにトッズなど、上質な素材とクラフツマンシップという後ろ盾に支えられた提案は、どれもため息が出るほど素晴らしいものでした。
R:来場ゲストたちがとても豪華でしたよね!
K:特にボッテガ・ヴェネタのショーにゲストとして来場したBTSのRMことキム・ナムジュンさんは、オーラが別格でした!取材しようとカメラを向けたら彼のパワーで(⁉︎)スマホに接続していたマイクが壊れたくらい。さすが、破壊神と呼ばれるだけある‼と感動しました。そばに近づいただけで、人生100周目?と思うほど人間力の高さを感じましたね。
R:興奮が伝わってきます(笑)。じゃあ、そんなボッテガ・ヴェネタからいってみましょう!
【Bottega Veneta】イタリアの芸術を見つめ直す”イタリア三部作”のラスト
K:クリエイティブ・ディレクターのマチュー・ブレイジーは、コレクションを「パレード」と表現。ストリートに集う多様な人々をルックに投影したそうです。
R:確かに、実業家のようなストイックなルックから、センシュアルなレース、ウロコのようなディテールを纏ったマーメイドのようなルックもありますね。
K:それはギリシア神話の海のアイコン、セイレーンがモチーフだからなの。マチューは、”服を通してなりたい人になれる”というメッセージを込めたそう。ファッションのパワーを信じる前向きなムードにも共感できます。
R:思わず二度見したのですが、ファーストルックで履いていたソックス! あれは……?
K:あのソックス風シューズ、マチューお得意のレザー製なんです。編むのに片足48時間かかるそう。展示会で間近で見たら、ちゃんと靴底も付いていました。生で見たにもかかわらず、触るまでレザーだとわからなかった!
R:す、すごい。前回アイコニックだったタンクトップとデニムのルック同様、今回もレザーのトロンプルイユを用いているんですね。
K:個人的には、ボッティチェッリの『春』をイメージした花柄のエンブロイダリーのシリーズにときめきました。ルックでは、トップス、ドレス、グローブなど、複数のアイテムを重ねています。こうしたレイヤードの提案も数多く見られましたね。
R:可愛いです! バッグの傾向はどうでした?
K:キャッチーなハンドルの「サーディン」バッグは、ハンドルがムラーノガラス製に更新されて登場。職人技の詰まった、まさに芸術です。イントレチャートのシリーズには、ハーフムーン型も新しく発表されていましたよ。
R:みんなのウィッシュリスト入り確定ですね。
K:ラストルックは、数年ぶりにランウェイにカムバックしたアジアの宝、中国人モデルのリュウ・ウェン! 凛とした美しさに釘付けに。ゲストのナムジュンさんの知性と呼応するような、見応えのあるコレクションでした。
【FERRAGAMO】新たな世界観を切り拓いたマクシミリアン・デイヴィスの2シーズン目
R:シャープでモダン! フェラガモのコレクションの第一印象です。
K:創業者サルヴァトーレ・ フェラガモ氏への敬意を示し、彼がともに仕事をしたソフィア・ローレンや マリリン・モンローなど50年代のハリウッドスターたちをヒントにしたようです。
R:なるほど。とはいえ、ジャケットの切り裂いたような鋭いライン、フード付きコート、ジッパーのブルゾンなど、今っぽくアップデートした形ですね。
K:よく見ると、クロップド丈のジャケットはコクーンシルエットで当時のクチュールからシルエットを引用していたり、ドレスはドレープが効いていたり、デコルテを強調するようなショルダーラインだったり。伝統的でグラマラスなコードが織り交ぜられている。現代性とフェミニニティの掛け合わせが絶妙です。
R:たしかに。リアルに着たい! と思うアイテムも多かったです。前半に登場したスリムなパンツにアウターというバランス、そのまま真似したい。
K:そのパンツ、めちゃくちゃ細くて履けるだろうか……と不安がよぎったのだけど、ニット地でストレッチ性もありました。ウェアラブルで現代人のニーズもしっかり反映されているんですね。
R:ネイビー×ホワイト、ブラック×レッド、差し色で投入された鮮やかなイエローなど、色数を絞った都会的なカラーパレットも印象深いです。特にネイビーは、エレガントで着たくなりました。
K:そのネイビー、“イタリアンブルー”と呼ばれる今回のメインとなった色だと聞きました。あとクリエイティブ・ディレクターのマクシミリアン・デイヴィスは、色を統一したい主義らしい!
R:そうなんですね。まだ知らないことの多いマクシミリアン・デイヴィスについて少し分かった気がします。最後に、やっぱりアクセサリー類が気になります。
K:新しく登場したワンハンドルバッグがエレガントでとても素敵でした。カラー素材ともにバリエ―ションもあって……。ちなみにまだ名前はないそう。
R:ネクスト・アイコンバッグ候補ですね。要チェックです。
【ETRO】デビューショーで封印していた、ペイズリー柄がついに登場
R:先シーズン就任したマルコ・デ・ヴィンチェンツォによる初の秋冬シーズンですね。SPUR3月号でクリエーションの秘密について答えてくれましたが、今回もブランドのアーカイヴスのテキスタイルからアイデアを得たんですかね?
K:先シーズンは“エトロからペイズリー柄が消えた!”と話題になりましたが、今回は満を持して登場しました。後期ラテン語で「ルーツ」という意味に由来する「ラディカル」がテーマでした。
R:ルーツとくれば、やはりペイズリー柄に触れないわけにはいかないですよね。
K:今季ミラノは、ミニマルなワントーンで緊張感のある提案が多くのブランドで見られたけれど、エトロは柄のオンパレード! ムードも全体的にゆるっとしていました。タータンチェックにペイズリー柄のドレスなど、大胆な柄on柄のスタイルも多くプレイフルで、際立っていましたよ。
R:とにかく目が楽しい!見るだけでハッピーな気持ちになりますね。ペイズリー柄もフレッシュな解釈がなされてました。ローゲージニットとのスタイリングなどは若い世代にも受けそう。
K:注目してほしいのが、ごく薄い柄タイツやインナーを差し込んでいるところ。ミニスカートとサイハイブーツの隙間から少し見える太ももさえも柄で主張していて、こだわりを感じました。
R:わ! ほんとですね。自由な発想が散りばめられていて、ファッションの楽しさを感じられるポジティブさが素敵です!
【Max Mara】中世の宮廷衣装をモダンに。時空を超えた創造力に感動
K:いきなりですが私、マックスマーラのテディコートが大好きなんです。今回のファーストルックを見た瞬間、“まだバリエーションがあったんだ!”と脳内で叫びました。
R:今回のコレクションの出発点となったエミリー・デュ・シャトレ侯爵夫人という人物は数学者であり物理学者、そして著述家でもあったんですね。おまけに劇作家のヴォルテールの愛人でもある。とにかくハイスペックな人であることは分かりました(笑)。
K:18世紀の啓蒙時代、多大な影響を残した人物。女性が軽んじられていた当時、常識を打ち破って現代に通じるワードローブを選び取ったアイコンとしてマックスマーラは捉えたようです。
R::なるほど。そう言われてみると、テディコートが宮廷衣装のガウンに見えてきました。
K:通常よりロング丈で、たっぷりとしたシルエット。上品なショールカラーのタイプもあります。
R:コルセット風のベルトをスタイリングしているのも納得です。
K:コルセットベルトやビスチェ風のトップスを着ているとはいえ、窮屈な印象はないですよね。パフィーなコートやニットと合わせているので、むしろ心地いいムード。全体を通して、”マックスマーラに包まれたい“という願望が広がりました。スーツスタイルのモデルでさえも、気持ちよさそうにウォーキングしているんです。見逃せないのがヘアメイク。ナチュラルなウェーブを施したロングヘアを黒のリボンで一つ結びにしているだけなのに、柔らかなエレガンスを表現していて心惹かれました。
R:一環して心地良いエレガンスを貫いているのが伝わってきますね。
【GUCCI】ブランドの歴代デザイナーへのオマージュを捧ぐ
R:今季のグッチは、“どんな感じでくる!?”と皆が気になっていました。アレッサンドロ・ミケーレ退任後初となるウィメンズショーであり、今回のコレクションはデザインチームが担当しています。
K:いきなりフィナーレの話をしますが、最後にデザインチームが出てきた時、グッチのCEOマルコ・ビッザーリが率先して立ち上がって大きな拍手を送っていたんです。多くのファンを持つミケーレ後、さらに次のクリエイティブ・ディレクターがサバト・デ・サルノに決まった中での製作は、デザインチームにとってプレッシャーだったろうなあ……と思うと、思わずウルウルしちゃいましたね。
R:そんな中で、 “グッチらしいグッチ”がたくさん見られた印象を抱きました。
K:「グッチの遺伝学」という考えのもと、歴代デザイナーたちへオマージュを捧げられています。創業者グッチオ・グッチが生み出したアイコン、トム・フォード時代の官能性、ミケーレの折衷主義などを現代の感性でアップデートし、あえていろいろなスタイルを発表しました。
R:だからブランドのDNAを各所に感じたんですね!
K:演出にもブランドの歴史を時間旅行しているイメージが表れていました。エレベータ―を模した自動ドアやランウェイを回遊するモデルがそうです。
R:具体的なルックを見ていきましょう。
K:ブラにタイトスカートのセクシーでグラマラスなルックは、まさにトム・フォード期を彷彿とさせます。ローライズのルックも90年代的ですよね。
R:ジェンダーレスなスーツやカラフルなファーのルックからは、“ミケーレ感”が伝わってきます。バッグ&シューズにもアーカイブスを引用したデザインが見られますね。
K:トム・フォード期を思わせるホースビットを配したチェーンバッグ、90年代に人気を博したスキーコレクションからのスキーブーツ、ミケーレが愛したライオンヘッド付きのバッグも発見しました。
R:あのデザインはあの時代の……と元ネタを探すのも楽しい。
K:サバトへとバトンを繋ぐ前に、レジェンド達の功績を称え、振り返る。ブランドのアーカイブス展を鑑賞するような、見ごたえのあるコレクションでした。
R:次のシーズンへの期待も高まります。グッチといえばゲストとしてNewJeansのハニが来ていましたね。SPURへコメントを寄せてくれたので、SPUR公式TikTokでぜひチェックしてください!