5月26日、シャネルは昨年12月にニューヨークで発表した2026年 メティエダール コレクションのレプリカショーをソウルで開催した。会場となったのは、6月4日にオープンを控えるポンピドゥー・センター・ハンファ。こけら落としとなる展覧会「The Cubists:Inventing Modern Vision」のために、パブロ・ピカソやジョルジュ・ブラックなどのキュビズム作品が展示された空間に、アンバサダーであるジェニー、G-DRAGON、キム・ゴウン、ティルダ・スウィントンをはじめ、『ミナリ』(’20)でアカデミー賞助演女優賞を受賞したユン・ヨジョンやぺ・ドゥナ、イ・ビョンホンにチ・チャンウクなど実力派俳優、RIIZEのWONBINやILLITのWONHEE、LE SSERAFIMのKAZUHA、CORTISのMARTINとKEONHOなど、K-POPのライジングスターたちが集結。日本からはアーティストのちゃんみなが参加し、ランウェイを見守った。

日本のメディアではSPURだけが許されたバックステージ取材で、アーティスティック・ディレクター、マチュー・ブレイジーにコレクションとレプリカショーに込めた思いを聞いた。

2026.05.29

【シャネル】ソウルでマチュー・ブレイジーが教えてくれたこと

5月26日、シャネルは昨年12月にニューヨークで発表した2026年 メティエダール コレクションのレプリカショーをソウルで開催した。会場となったのは、6月4日にオープンを控えるポンピドゥー・センター・ハンファ。こけら落としとなる展覧会「The Cubists:Inventing Modern Vision」のために、パブロ・ピカソやジョルジュ・ブラックなどのキュビズム作品が展示された空間に、アンバサダーであるジェニー、G-DRAGON、キム・ゴウン、ティルダ・スウィントンをはじめ、『ミナリ』(’20)でアカデミー賞助演女優賞を受賞したユン・ヨジョンやぺ・ドゥナ、イ・ビョンホンにチ・チャンウクなど実力派俳優、RIIZEのWONBINやILLITのWONHEE、LE SSERAFIMのKAZUHA、CORTISのMARTINとKEONHOなど、K-POPのライジングスターたちが集結。日本からはアーティストのちゃんみなが参加し、ランウェイを見守った。

日本のメディアではSPURだけが許されたバックステージ取材で、アーティスティック・ディレクター、マチュー・ブレイジーにコレクションとレプリカショーに込めた思いを聞いた。

INDEX

表現したかったのは“多くの女性たち”

ソウルで開催されたシャネルの2026年 メティエダール コレクションのランウェイ写真

©CHANEL

開口一番「今日は本当にありがとう。ここは私たちだけの特別な瞬間なので、スマートフォンは使わないようにしましょう」と優しく語るマチュー。控えめで、親密な関係を大切にする彼らしい挨拶に、思わず笑みがこぼれる。

 彼が手掛けた初めてのメティエダール コレクションは、ファッションの枠を超え、すべての女性への賛歌のようでもある。

「シャネルに来てすぐ、ある種の“シャネルのユニフォーム”のようなものがあると気づきました。ジャケット、スカート、シャツ、カメリア、そしてツイード。それらはひとりの女性像を示す、とても限定的な表現だと理解しました。ですが、今回のコレクションで表現したかったのは“ひとりの女性”ではなく、“多くの女性たち”です。一日の異なる時間帯に存在する、さまざまな女性の姿。そして彼女たちは、自分のなりたい姿を、好きなときに選べるということ。たとえば、子育てに忙しい母親にもなれるし、大企業のリーダーにもなれる。家でくつろぐこともできるし、スーパーヒーローにもなれるかもしれない。夫や恋人とオペラに行くこともできる。それらは彼女の権利です。女性の人生は、ただひとつの服装で定義されるものではありません。それ以上のものです」

 

大都市で起こる、思いがけない出会い

ソウルで開催されたシャネルの2026年 メティエダール コレクションのランウェイ写真

©CHANEL © Adagp, Paris, 2026

「ニューヨークでは地下鉄でショーを行いました。というのも、こうした多様な女性たちが出会い、ぶつかり合う場所としてふさわしいと考えたからです。人生や自由とは、新しい人と出会い、思いがけない出会いに驚くことにあると思うのです。今回のコレクションをニューヨークから韓国へ持ってくることができたのは、私たちにとって本当に素晴らしい冒険でした。ニューヨークとソウル、私にとって両者は似たエネルギーを持っています。ソウルには強い磁力のようなものがある。その理由のひとつが“カルチャー”です。ここでいうカルチャーとは、世界的な影響力を持つ文化。素晴らしいシェフ、料理、音楽。K-POPの影響で、アメリカで学ばれる言語として韓国語は第3位となっています。映画も含めて、ソウルはレプリカショーの舞台として完璧だと思いました。さらに、この新しいミュージアムも興味深い存在でした。キュビズムを扱っている点が特に。それはひとりの人物を多面的に表現する芸術です。今回のテーマと非常に重なりますよね」

注目ルックをマチューが解説

ソウルで開催されたシャネルの2026年 メティエダール コレクションのファーストルック

©CHANEL

ショーはアンバサダーでもあるバヴィータ(左)と韓国を代表するモデルのヒョンジのふたりがミュージアム内のエスカレーターから降りてくるところからスタート。

 「以前から一緒に仕事をしてきたふたりで、大好きな存在です。彼女たちが着ることで、ファッションは単なる服ではなく“着る人そのもの”になる——それが重要です。シャネルの女性は、自分自身のために服を着る。日常の装い、オフィスへ行く服、買い物に出かける服——そうしたリアルなルックを提示しました」

ソウルで開催されたシャネルの2026年 メティエダール コレクションの展示会場の写真

レプリカショーの翌日開催された展示会にて。タートルネックニットは、今季のキーアイテムの一つ。

「アニマルプリントにも注目しました。一般的なシャネルのイメージにはありませんが、アーカイブスを調べると、ガブリエル・シャネル自身は1920年代にすでに多用していたのです」

ソウルで開催されたシャネルの2026年 メティエダール コレクションの展示会の写真

「スーパーヒーローの要素も取り入れました。例えばスパイダーマンをアール・デコ風に解釈したスーツなど。このコレクションには特定の時代という枠がありません。現代もあれば70年代もあり、アール・デコもある。今の時代、時間の境界は曖昧になっていて、街では40年代のヴィンテージが当たり前に混ざり合っている、一種のメルティングポットだと感じています」

ソウルで開催されたシャネルの2026年 メティエダール コレクションのランウェイ写真

エスカレーターから降りてくるブルーのシャツとパンツのルック ©CHANEL

「(奥の)学生のルックもユニークです。デニムのように見えて、実はすべて刺しゅうで表現されています。これはメティエダールによるものです。メティエダールとは何か。それは“手仕事”によるレディ・トゥ・ウェア。シャネルが長年にわたり傘下に収めてきたアトリエ、羽根細工のルマリエ、刺しゅうのルサージュなど、職人たちとの協働です。40年以上の技術を持つ人々と向き合うとき、私はとても謙虚になります。話を聞き、学ぶことが大切だと思っています」

ソウルで開催されたシャネルの2026年 メティエダール コレクションのランウェイ写真

©CHANEL © Adagp, Paris, 2026 © Suzanne Duchamp / Adagp, Paris, 2026

「オペラに行く女性のルックもあります。そしてそのまま地下鉄に乗るかもしれない。そうした現実感を重視しました」

ソウルで開催されたシャネルの2026年 メティエダール コレクションの展示会の写真

てんとう虫の飾りは、取り外しができる

「スタジオでは“カップケーキ”と呼んでいるキュートなルックもあります。ビジネスウーマンであっても、可愛らしくあることを選ぶ権利がある。可愛さもまた選び取れるのです」

ストリートウェアの始まりはシャネル

ソウルで開催されたシャネルの2026年 メティエダール コレクションのランウェイ写真

©CHANEL © Succession Picasso 2026

最後に重要な話として、ストリートウェアの始まりについて想いを巡らす。
「1930年代、ココ・シャネルはハリウッドで映画衣装を手がけましたが、求めていた自由を見出せませんでした。帰路の途中、ニューヨークに立ち寄り、ダウンタウンで“シャネル風”の服を着た女性たちを見かけます。パリのサロンの上流階級ではなく、日常を生きる女性たち。これがファッションを変えました。彼女はパリに戻り、アームホールを少し下げ、動きやすさを加え、スカートの布量を増やしました。歩ける服へと進化させたのです。私はこれをストリートウェアの始まりだと考えています。シャネルとは単なる装いではなく、ストリート、解放、自由、そして動きそのものなのです」

 

韓国のトップモデル、スジュとソラ・チョイとの再会

ソウルで開催されたシャネルの2026年 メティエダール コレクションのランウェイを歩くモデルのスジュの写真

大きな羽根のセンスを持ち、タキシードスタイルを披露したスジュ。©CHANEL © Succession Picasso 2026 

ソウルで開催されたシャネルの2026年 メティエダール コレクションのランウェイを歩くモデルのソラ・チョイの写真

妊婦姿のソラ・チョイ。フィナーレでは満面の笑みでウォーキング。©CHANEL 

「最後にもうひとつ! 韓国のトップモデル、スジュやソラと再び仕事ができてとても嬉しかった。ソラは妊娠中ですが、こうした人との再会や変化もまた、このショーの一部です」

 そう締めくくったマチューは、充実感に満ちた笑顔を向けてくれた。3年前、桜の季節に東京でインタビューをした時と同じように、クラフツマンシップへの情熱と敬意を胸に、聡明で、ヒエラルキーの無い視点で物語を紡いでいく。その姿が頼もしく、私たちの日々を明るく照らしてくれるようだ。

日本では6月4日に店頭展開スタート!

ソウルで開催されたシャネルの2026年 メティエダール コレクションのエスカレーターを登るモデル

フィナーレの様子。©CHANEL

現在発売中のSPUR7月号シャネルブックでも大特集しているコレクションが、日本ではいよいよ6月4日にローンチ。誰かのシャネルではなく、私のシャネルと思えるような親密な体験が待っているはず。

シャネルは、私たち1人ひとりの人生を肯定する。

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エディターKINUGASA

顔面識別が得意のモデルウォッチャー。デビューから好きなのはサーシャ・ピヴォヴァロヴァ。ファッションと映画を主に担当。