韓国でのリアルイベントチケットが秒速で完売するほど人気の『ソンジェ背負って走れ』や、チャン・ギヨン除隊後復帰作の超能力×ロマンスにグッと来る『ヒーローではないけれど』など、実は今シーズンは良作韓ドラが続々誕生中。「ロスに陥るのが怖い……!」と感じるほど今絶対に見逃せない4作品と、ドラマの見どころを韓ドラマニアのライター&エディターが熱くリコメンド!
【韓国ドラマ ナビゲーター】
さすらいのライター 山崎敦子
『最高の愛 〜恋はドゥグンドゥグン〜』より韓国ドラマに魅せられ、日々最新ドラマをリサーチするさすらいのライター。さまざまなジャンルを渡り歩き、今では美容記事に携わること多し。サバイバルオーディションも大好物で、今の推しはENHYPEN。推しの俳優は絞りきれないほど多数。エクラwebでも韓流連載執筆中。
韓ドラ追っかけ班/エディターK
母の影響により、第1次韓流ブームの火付け役となった『冬のソナタ』から韓国ドラマの世界へ足を踏み入れる。「寝不足だけど幸せ」を合言葉に、約20年間あらゆるジャンルの韓流ドラマを観続けている。ドラマに加え、アイドル、コスメ、ファッションなど、日々韓国まわりの情報をキャッチアップ。ドラマを観るたびに推しの俳優が増えていく毎日です。
ピョン・ウソク×キム・へユン『ソンジェ背負って走れ』/今最も韓ドラ民を沼らせる、タイムスリップロマンス!
このレビューがアップされる頃には、すべて解決がついているはずです。そのラスト2話を残して、今、実のところは原稿どころではないのです。そう、もう、気もそぞろ。一体、ふたりは結ばれるのか。何度トライしてもトライしても引き戻される負の運命から逃れることができるのか……。推しのアイドルが突然の転落死。ドラマは、そんな彼を救うためにタイムスリップを繰り返すオタ・ペン(オタクなファン)ヒロインの奮闘を描くもの。そう鉄板のファンタジーロマンスです。アイドル×一般人という組み合わせは、古くから少女漫画でも愛され続けている構図で、なるほど、この作品もその手の夢見るキュンキュン恋愛ドラマなのね、なあんて軽い気持ちで観始めたわけですが、蓋を開けてみれば、ふたりの間には実は本人たちも気づいていなかった繋がりがあったようで、それがタイムスリップするごとに深〜く複雑に絡み合っていき、単なるアイドルとの胸きゅんラブに終わらないといいますか。というか、アイドルなんて、もうどうでも良くなってくるというか。
ヒロインのソルを演じるのは実力派のキム・へユン。15年前のある事故で半身不随になり自暴自棄になっていたソルを救ったのが、ピョン・ウソク演じる人気バンドのヴォーカル、ソンジェのラジオ越しにかけられた言葉。以来、ソルはソンジェに対して一途なオタ・ペンになるわけですが、そんな彼が突然、この世を去ってしまうわけですね。悲しみに暮れるソルなのですが、突然2008年の高校時代にタイムスリップ。実はソンジェはソルの同級生で、他に推しがいたソルはソンジェの存在にすら気づいていなかったというか。これは、ソンジェを救うことができるかもしれない! タイムスリップしたソルは、運命を変えるべくソンジェを見つけて、なりふり構わずガンガンと彼に関わっていくのですが、つまり、過去が変われば、未来も変わるということか……。
高校時代のソンジェがフツーの高校生だったというのもドラマが面白くなるポイントですが、15年前のソルの事故にも曰くがあり、さまざまに形を変えてふたりに襲いかかってくる予測不能な展開へ。韓国では、最終回を前に本作のイベントチケットが秒殺で完売、サーバーもダウンするなど、大フィーバー中。泣きも笑いも自在に操るキム・ヘユンの確かな表現力と、存在自体に儚さと切なさを滲ませるピョン・ウソクのケミも素晴らしく。だからこそ、今、気が気でないというか。あ〜、一体ふたりはどうなっちゃうの〜〜〜。(さすらいのライター山崎)
チャン・ギヨン×チョン・ウヒ『ヒーローではないけれど』/超能力と現代社会を味わい深くミックス!
カムバック、チャン・ギヨン!! かなり体型を絞りながら挑んだという本作で演じるのは、超能力一家、ポク家の息子ギジュです。彼の能力は「幸せだった過去に戻れる」こと。ただ妻を事故で亡くしてから鬱病になり、どの瞬間も幸せだと感じられなくなったことで能力を失っている状態。スマホ依存症で能力は未だ不明の娘イナとの関係性も亀裂が入ったまま。母マヌムは予知夢の能力で稼ぎまくっていたものの、不眠症に陥り夢を見られなくなったことで家も破産寸前。ギジュの姉ドンヒは精神的ストレスで暴飲暴食を繰り返した結果、空を飛ぶ能力を失ったと。これらの原因はすべて“現代社会”の荒波によって起きたことだという。とまぁそんなどん底にいるポク家の救い?あるいは災い?となるのがチョン・ウヒ演じるト・ダヘです。ウヒとギヨンのケミが控えめに言って最高でして、配信を待ちわびる日々です。
なんだか序盤はストーリーもふわふわしているというか、曖昧な部分が多く、間の取り方とかも独特。だからこそ「ん?つまんない?」と視聴をやめてしまう人がいたら3話まで観てほしい。そこからグッと物語にのめり込めるはずです。完全ファンタジー設定なんだけれど、現代社会の風潮をうまく盛り込み、ここに良質なメロとヒューマンを入れ込んでいて、決してとっ散らかっていない。物語後半もこのムードであれば、下半期のベスト10入りしそうです。実際に韓国のNetflixでは常に上位圏内にいるので。
ポク家の遺産目当てでマヌムが通うスパのマッサージ師として潜入するダヘ。そう、詐欺師なんですよ。ダヘの施術を受けるとよく眠れる!と感動するマヌムが(実は睡眠薬を入れているだけ)、鬱病のギジュをなんとかせねばとふたりを恋人にさせようとするんです。それがダヘには願ったり叶ったりで、ポク家の妻となってお金をむしり取る算段。ところがです。惹かれ始めてしまうんですね、ギジュに。常套句だけれどまんまとときめくメロパート。なんと言っても「気怠い雰囲気で色気ダダ漏れ」なギヨンに心奪われます。もちろんギジュも最初こそ拒みまくりでしたが、なんとダヘといることで能力が復活! しかもギジュが戻った過去では皆がモノクロに見え、決して触れたりできないにもかかわらず、ダヘだけは色が付いていて、触れられる。この理由は何なのか?が物語の核心になりそうです。実は悲しい過去を背負うダヘの切ないシーンも胸にグッと響くので、未視聴の方は騙されたと思ってぜひ。(エディターK)
イ・ジェフン『捜査班長 1958』/韓国の国民的ドラマが、新たな形でカムバック
国民的大ヒットドラマ『捜査班長』をモチーフにした本作。ドラマがどれくらい有名かと言うと、1971年〜1989年と18年間も放送され続け、OPのメロディをほとんどの人が口ずさめるほど。そんな大人気ドラマファンからのプレッシャーがのしかかるなか、最高な演技で、視聴者を笑って、泣いて、ときめかせるイ・ジェフン。得意のアクションと変幻自在な演技が本作でもピカイチに輝いている! ジェフン演じる主人公パク・ヨンハンは『捜査班長』同様。当時の主演チェ・ブラムが老人のヨンハンを演じており、まさにファン感動の瞬間であるはず。ちなみにジェフンは一人二役で、ヨンハンの孫(祖父に憧れ刑事に)も演じています。さすがの安心感!
ヨンハンが捜査班長になる前の話とあって、当時の『捜査班長』では見られなかったストーリーが盛り込まれているのがポイント。日本在住の私は当時の『捜査班長』を知らぬままの視聴ですがまったく問題なく、純粋に物語を楽しめます。とある田舎の刑事として奮闘するヨンハンが牛泥棒の検挙率1位の実績で(笑)、鐘南署へ栄転。そこで一見難あり?な人たちを次々と仲間に率いれ、1チームとなっていきます。この過程がまた「ベタだけどいいんだよね〜」という感じ。これこそエモい。政治家の手下と化した鐘南署のなかで、ひたむきに“正義”に向き合う捜査1班のユ班長を筆頭に、ヨンハンも自分が信じる正義を貫いていくんですね。警察署の狂犬ことキム・サンスン(『応答せよ』シリーズのイ・ドンフィ)、人並外れた怪力でバッタバッタと悪人を投げ倒すチョ・ギョンファン(チェ・ウソン)、超高学歴&ハイスペックながらどこか間抜けなソ・ホジョン(ユン・ヒョンス)と、5人で事件を解決していくと。時には、便器に顔をうずめさせて情報を聞き出したり(苦笑)、ヘビをばら撒いてみたり、取引の場にトラックで突っ込んでみたり、そのトンデモ行動の連発で笑えます。ただすべては罪人を捕え、罪なき国民を救うため。
とはいえ内部で厄介者のレッテルを貼られている捜査1班は、上層部にとっても目障り極まりない存在。ある日、ヨンハンの忘れられない心の傷をつくった張本人が署長となって現れるんですが、そこから物語が急展開を迎えていきます。警察署内に潜む、偽りの正義の殻に包まれた悪党たちとどう戦うのか。全10話と割とコンパクトだけれど、すでにシーズン2を求む声が多く期待に応えてくれそう!? なんと言ってもジェフンのメロも見られる貴重なドラマなので、その視点でも楽しんでほしい。(エディターK)
ソン・ガンホ『サムシクおじさん』/名俳優の初出演ドラマがついに放送開始!
飽食の時代と言われて久しい今。一日三食お腹いっぱい食べることが夢だという時代があったことは想像するのでさえも難しいのではないでしょうか。タイトルの「サムシク」とは三食のこと。漢江の奇跡とも呼ばれる経済成長と民主化への激動の歴史は映画やドラマでもよく描かれていますが、これは、その最も起点となる時代の物語です。名優ソン・ガンホの初めてのドラマ出演としても多くの関心を集めていたこの作品。彼が演じる主人公のパク・ドゥチルは、貧困極まる朝鮮戦争下でさえも毎日三食与えたという逸話を持つ人物で、「サムシクおじさん」とは、それに由来してつけられた愛称なのです。
1961年のクーデターにより韓国は一気に軍事独裁政権への道を進むわけですが、それ以前のいわゆる内戦後は復興も工業化も一向に進まず、世界最貧国のひとつとされていた時代。つまり、一日三食は、まさに夢のまた夢。サムシクおじさんことドゥチルは、政界の裏で暗躍する謎のフィクサーなのですが、一日三食の夢のためには、人殺しさえも厭わないというか。なのに、飢えを知らない政治家たちは、そんなドゥチルの夢なぞ誰も気にかけたりしない。そんなドゥチルがついに出会うわけです。同じ夢を持つ若き青年に。ピョン・ヨハン演じるキム・サンは奨学生としてアメリカで経済を学び、韓国を産業国家にしたい夢をもつ青年ですが、立ちはだかる現実になす術がない。そんなサンがある演説で情熱的に語るのです。「私が求めるのは銃や刀ではなく経済だ。誰もが一日三食、腹いっぱいに食べる国を!」と。この一言にドゥチルの胸は射抜かれるわけです。まるで、恋焦がれていた永遠の恋人を見つけたかのごとく。
ドラマは、そんなふたりを時代の中に描いていくわけですが、混乱極める政治の中で、さまざまな思惑と現実が交錯しながら、騙し合いやら裏切りやら暗殺やら不穏極まる画策が実行され、そして時代が動いていくという。まだ7話の視聴ではありますが、いやあ、政治の裏側はマジで凄まじい。そして、ドゥチルとサンのブロマンスです。サンに恋するドゥチルです。私ごとで恐縮ですが、子どもの頃からひとりポツネンと食べ物を口いっぱいに頬張る男子に心奪われる傾向にあり、なんか、それを見るだけで切ないというか、胸いっぱいになっちゃうというか。そんな哀しさがドゥチルを演じるソン・ガンホからそこはかと漂ってくるわけでして。「ピザという食べ物を知っているか?」。らんらんと目を輝かせて話すドゥチル。それだけでもう涙腺崩壊。はたして、ふたりは今につながる豊かな国、韓国の礎となるのか。それとも捨て石となってしまうのか。固唾をのんで見守りたいと思います。(さすらいのライター山崎)