英国ベテラン女優が素敵な理由

英国の俳優たちは若いうちから何かがひと味もふた味も違うけど、年を重ねた女優たちの活躍ぶりは特筆ものだ。そこにはそういう年格好にふさわしい役を創り続ける関係者たちの才能もある。


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Judi Dench/ジュディ・デンチ
1934年生まれ。アカデミー賞、英国アカデミー賞、ローレンス・オリヴィエ賞など数多くの賞を受賞。’88年には英国王室から「Dame」の称号を授与。代表作に『恋におちたシェイクスピア』(’98)、『アイリス』(’01)ほか多数。

「そうなのよ! 前の『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』(’11)のロケでインドに滞在したとき、暇さえあればきれいなショールや布を物色して買っていたの。私ぐらいの年齢になると、ちょっとしたパーティや映画祭、そしてレッドカーペットに参加するときのファッションとしても最適でしょう。荷物も軽くなるし(笑)。で、近年の私の正装はもっぱらインド風をテーマにしていたら『マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章』での私の役イヴリンは、それを職業にまでしてしまう。なんて素敵なアイデアかしら、と思ったわ。年を重ねてからの恋愛は最近の映画にないわけじゃないけど、主婦がおばあちゃんになってから起業するなんて、とても勇気づけられるでしょう(笑)」

本当にジュディ・デンチの言うとおり。「これなら私もやってみたい」「やれるかも」と背中を押される女性も少なくないだろう。

「女優って、若くなくなると活躍できないと思っている人は多いけど、私は『クイーン・ヴィクトリア 至上の恋』(’97)に出たとき、もっと映画の演技を勉強したい!と思ったの。親友のマギー(・スミス)なんかに比べると、舞台ではそれなりに認められてはいたけど、映画のことはまだまだ知らなかったから。それが今では、ジョニー・デップやヴィン・ディーゼルのようなスターとも共演できる。楽しいわよぉ」

英国の名優が顔を揃える『マリーゴールド〜』で人生を明るく深く考察してくれると思えば、『007 スカイフォール』(’12)では、ジェームズ・ボンドの女上司Mとして、シリーズ最高の泣けるシーンを演じていた。

「そうだっけ? クライマックスのあのシーン、私、死ぬ演技に熱中していたからダニエル(・クレイグ)の唇の感触なんて覚えていないわ(笑)」「おのおのの仕事を誠実にやっていると、あるとき、自分にあて書きした役が回ってきたりするのよ」はまさに名言だ。

その他英国ベテラン女優たち

81歳となった今も現役バリバリのジュディ・デンチマギー・スミスの二大“デイム(尊称)”コンビを筆頭に、英国ベテラン女優の層の厚さには驚かされる。たとえば『ハリー・ポッター』シリーズに出演している女優たちは、ほとんど舞台で主役を張っていたりするのだ。なかでもオスカーも得ているヘレン・ミレンの活躍はめざましく、再びエリザベス女王に扮した『THEAUDIENCE』は舞台のライブ上映が大好評。一方ジュリー・ウォルターズは『ブルックリン』でシアーシャ・ローナンと実力勝負を見せている。マギー・スミスは舞台でのあたり役を映画化した『THE LADY IN THE VAN』が改めて評価され、演じる役の幅広さをしっかり見せつけた。

SPUR2016年3月号掲載
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