今度のジョニーは男祭りだ!

先輩俳優アル・パチーノと組んだ『フェイク』のように、実は男のドラマの中ではいつもと違う光を放つジョニー・デップ。禿げ頭で挑んだアイリッシュ・マフィアは?

Johnny Depp/ジョニー・デップ
1963年生まれ。ミュージシャンとしてキャリアをスタート。『エルム街の悪夢』(’84)でデビュー。代表作に『エド・ウッド』(’94)、『パイレーツ・オブ・カリビアン』(’03〜)シリーズなど多数。待機作に『Alice Through the Looking Glass』。

「青い瞳のコンタクトレンズを入れたのはなぜか、だって? 確かにアイルランド系のギャングを演じるからといって、みながみなブルーアイズになる必要はないんだろうけれど、鏡の前でいろいろ話しているうちに、〝やっぱり、青にしよう!〟と思ったんだよ。自分が演じる役にモデルとなる人物がいる場合、最大の敬意を払うべきだ、と僕は思っているからね」

ああ、そうだった。ジョニー・デップという俳優にとっては、役に合わせて外見を変えたり、しゃべり方のイントネーションを変えたりするのは当たり前のことで、「その人物のバックグラウンドも絶対に影響するはずの身体のゆがみ、動き方まで研究するのが面白いんだよ」とまで語っていたのだから。

『ブラック・スキャンダル』で描かれる、南ボストンを舞台にしたギャング、FBI、政治家を巻き込んだ抗争は、ボストン出身のベン・アフレックやマット・デイモンらも映画化を企画していたという。ジョニーほどのスターが主演するなら、主人公の描き方にも少々手が加えられたとしてもおかしくないが、主人公の残酷な面はそのまま残し、家にあってはよき家庭人という自己矛盾のある人間を創り出していた。

監督は『クレイジー・ハート』( ’09)でジェフ・ブリッジス初のオスカーをもたらしたスコット・クーパー。この作品で参加した昨年のベネチア映画祭では、ジョニーをはじめ、ベネディクト・カンバーバッチ、ジョエル・エドガートン、ケヴィン・ベーコン、ピーター・サースガードといった「アート系の作品では十分主役も張れるのに、アンサンブル・キャストで作品に参加した場合、その個性と力強さで作品により強力なパワーを加えてくれる」と、男優たちの豊作ぶりに童顔をほころばせる。当たり役の海賊に戻る前に、真剣にアイリッシュ・ギャング役に挑んだジョニーの本気ぶりはやはりカッコいい。

Joel Edgerton/ジョエル・エドガートン
1974年生まれ。オーストラリア出身。シドニー・シアター・カンパニーで舞台の実績を積む。オスカー受賞作『ゼロ・ダーク・サーティ』(’12)で国際的に注目を集め、『華麗なるギャツビー』(’13)のトム・ブキャナン役で絶賛された。

Kevin Bacon/ケヴィン・ベーコン
1958年生まれ。『アニマル・ハウス』(’78)で映画界へ。’83年に舞台『The Slab Boys』でブロードウェイデビューを果たす。『激流』(’94)、『告発』(’95)、『アポロ13』(’95)など出演作は60本以上。妻は女優のキーラ・セジウィック。

Benedict Cumberbatch/ベネディクト・カンバーバッチ
1976年生まれ。BBCドラマ「SHERLOCK/シャーロック」(’10〜)で爆発的人気を得る。代表作に『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(’14)ほか。『SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁』が2月に劇場公開。


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『ブラック・スキャンダル』
南ボストンを拠点とするアイリッシュ系ギャング、上院議員、FBI捜査官は実は子ども時代からの友達。年を経て、互いに協力し合ううちにギャングのテリトリーも広くなるが、疑問を抱く人間も現れる。( 1 月30日公開)

SPUR2016年3月号掲載
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