砂漠の町マーファを目指して/Part 1: 田舎に突然、素敵なお店 

テキサス・マーファ
『COMMUNITIE』

陸の孤島にある創作のための理想郷

テキサス州のエルパソ空港から砂漠の道を車で3時間、メキシコ国境にも近い町、マーファ。ジョン・パトリックが新開店した「コミュニティ」は決して地の利があるとはいえない場所にある。人口は今も2000人足らずの小さな町だが、プラダのブティックを模したアート作品「PradaMarfa」をはじめ、現代美術のギャラリーやデザインホテルなどもでき始めている。そもそもは70年代にミニマルアートの巨匠ドナルド・ジャッドが移り住んだことがこの町をクリエイターたちの理想郷にしたきっかけだった。ジョンがここを初めて訪れたのは昨年2月。

「そのとき〝マーファライト(この界隈でそう呼ばれる火の玉のような現象)〟に遭遇して、空ってなんてミステリアスなんだろうと感動し、その後、広大な空をず っと観察した。ジャッドの作品や生き方にも憧れていて、インスパイアされ続けている。彼の作品は今もなおコンテンポラリーで素晴らしいよね」。

この町がすっかり気に入り、数カ月後にはスタジオを構えてものづくりを始めた。

「〝コミュニティ〟とはさまざまなレベルでのコミュニケーションの集合体。ここでの最初のプロジェクトはマーファ在住の詩人ドット・ディヴォタに黒いペンキで手書きの詩を15mもある長い壁に書いてもらったんだ。ショップオリジナルの商品も作っている。シーズンごとに替えるのでなく、一生使ってもらえるようなものにしたいから、じっくりデザインしているよ」。

マーファがトレンディになるのでは?という心配については
「ここはとても隔離された土地で、住むには簡単なところじゃない。人々も物事もやってきては、去っていく。でも僕のモットーはいつも振り返らない、ってこと」。

写真2
創設者のジョン・パトリックは2003年にオーガニック素材とサスティナビリティをコンセプトとする「オーガニック」を立ち上げ、現在はNY州北部とメキシコにも拠点を持つ。まさにアーバンノマドのような彼の人生哲学は、「旅の途中で出会う人にはみんなHELLO!と手を振ろう。いつ自分のタイヤがパンクするかわからないから」

写真3、4
店内には彼がデザインした10種類のハットや手彫りによる型染めのスカーフなどが販売されている。現在は南メキシコで染色、手織りされたファブリックによるアイテムを開発中

Data
ファッションやアートなどクリエーションの交差点的なスペース。テキサスにゆかりのあるプロダクツやジョンがメキシコで見つけたアルチザナルなクラフトなども紹介。
●122 N. Highland Ave., Marfa, Texas
☎︎432−729−2055 営:11時〜18時(火〜土) 
:日・月・祝日 
http://communitie.net

photography:Emma Rogers(COMMUNITIE) text:Akiko Ichikawa

FEATURE