松田佳重子さん/被災地で化粧品を手渡しして回った経験を生かした、防災キャリーバッグ
資生堂ジャパン ブランド営業本部美容サポート部マネージャー
赴任中の仙台で東日本大震災を経験した松田さん。女性の区長から一期一会の縁を頼りに「助けて!」と連絡をもらったことをきっかけに、避難所に3万セットのスキンケアを手渡すプロジェクトを担った。「資生堂という会社を頼りにしてくれたことが嬉しかったんです。すぐに汐留本社へスキンケア中心のサンプル提供をお願いして、避難所に持っていくことから始めました。最初はかける言葉が見つからず、恐る恐る、『もしよかったら受け取っていただけますか?』とお声がけしたら、『嬉しい! 』『(サンプルの)使う順番は? 』とか、『潤うの?』と言ってくださったんです。そこには30秒くらいだけれど日常が戻ってきた。もちろん、水と食料というライフラインの確保がまずは大切です。その次にいつも使っている化粧品や香り、チョコや飴のような糖質などが手元にあると、少しほっとできて嬉しくて、心が落ち着く。そういう日常の取り戻し方があってもいいかもしれないと思うんです」
そんな体験をもとにして、松田さん自身が用意した防災バッグについて聞いた。「難しく考えすぎず、2、3日くらいの出張をイメージして作るのもひとつの手ですよね。実際に、私は普段使っていない小さめのキャリーバッグを防災用にしました。靴下は必需品です。切り傷を防げるし、最悪の場合、靴がなくても逃げられます。冬の災害なら保温もできる。会社のロッカーにも入れておいたほうがいいと思いますね。防寒にもなり、場合によっては止血にも役立つストールや、前回、10日間も髪が洗えずにかなり不快だったことからドライシャンプーなども入れておきたい。いざとなったら顔と体、どこにでも使えるハンドクリームも便利です。あとはトイレ事情がかなり劣悪になるので、やはり女性は生理用品やデリケートゾーンのケアができるものもあったほうがいい。毎年、「3.11」に防災バッグの中身を見直します。今年は消毒液とマスクを加えました。家族や友達と、災害に合った際の連絡先や落ち合う場所を話し合うようにもしています」
【ポイント】
日持ちする食料、使い古したタオルやウェットティッシュ、デリケートゾーンケアアイテムに化粧品など、ご自身の被災経験を生かした中身。最愛のお孫さんからのお手紙も。
消毒液
コロナ後、松田さんが必需品として追加したアイテム。速乾性があり、さらっとした液体タイプ。
手指消毒用エタノール液(携帯用)50ml(指定医薬部外品)¥495/資生堂
https://www.shiseido.co.jp/handinhand/
松田佳重子
資生堂ジャパン ブランド営業本部美容サポート部マネージャー。仙台赴任中に、東日本大震災を体験。被災地でのスキンケアの配布、ハンドマッサージなどビューティコンサルタントたちの支援活動を統括。
ひとりっP/山登りやアウトドアで使うアイテムは、そのまま防災グッズとして役立つ
ひとりっぷの生みの親、SPUR元編集長
SPUR.JPの人気連載でおなじみ、ひとりっPは、ザ ノースフェイスの「W Terrus42」を使用している。400回超えのひとり旅から得た知恵や気づきを元にした、バッグの中身とは。「もともとは山登りをする際の、山小屋泊用に使用していたのですが、最近は出番がなく、それならいっそ防災リュックにしてしまうのもいいかなと思いました。42リットル収納タイプでかなり大きくて、最適かなと。中身は、防災専用グッズというよりは、山登りやアウトドア遊びで使用するものをこのリュックに収納しているという感覚です。モンベルのアイテムが多いですね。店舗も多く、気軽に買いに行けるのでおすすめです。コンパクトで軽い寝袋、150cmモデルの寝袋用マット、最新モデルのバーナーセット、非常食をモンベルで購入しました。ちなみに非常食は色々と食べてみましたが、カレー、ガパオ、ベーコントマトが美味しい! あとは、ヘッドランプも入れています。今は、これに加えて、ソーラー式充電池を探しているところです」
【ポイント】
防災リュックも、寝袋やバーナー、非常食などの中身もアウトドアブランドからチョイス。
テルス42 ~¥25,300/ゴールドウイン カスタマーサービスセンター(ザ・ノース・フェイス)
https://www.goldwin.co.jp/ap/item/i/m/NMW61809
奥森秀子さん/女性目線で作る、オーガニックコットンの非常時セットを企画
株式会社アバンティ 代表取締役社長、ブランドディレクター
暮らしに寄り添うオーガニックコットンブランド、プリスティンのディレクター、奥森さんは2020年に同ブランドによる「エマージェンシーパック」の企画販売をスタート。まずはさっそく、そのパックの紹介から。
「東日本大震災の後も、異常現象、豪雨や地震が日常化し、災害大国の日本においては、いつ自分が被災者になるか分からない状態が続いています。そんな中で、女性目線で作る防災パックの必要性を感じました。きっかけは災害時に下着を替えられず、不快だという声が各地から届いたこと。中身はおりものシートやナプキンとしても使える不織布のマルチクロスのほか、非常用の下着、腹巻チューブトップ、タオルや厚手ソックス、さらし木綿、丸ゴムなど。非常時も日常と同じものに身を包まれる安心感を提供したく、すべてオーガニックコットンにこだわりました」
このパックのほかに、ご自身の防災リュックに入れる必需品は、高エネルギーのナッツやドライフルーツ、アロマ、新聞紙、お箸。置き場所は玄関前だ。
「すべての点検と見直しは年1回、9月、食料だけは半年毎と決めています。最近は、マンホールや側溝への転落を防ぐグッズとして、長く伸びる棒をプラス。リアルで正確な情報源として、NHKのニュース・防災のアプリはダウンロード済みです。日頃から気をつけていることは、まず健康でいることでしょうか。自分の足腰を鍛えて体力をつけておき、自分の身を自分で守れるようにしたい。その先に、困っている人も助けたいと思って、トレーニングをしています」
【ポイント】
本文で紹介した必需品のほかに、自然派スキンケアブランド「華密恋」のスキンバームもおすすめ。「顔、体、髪と全身に使うことができる万能性は、プリスティンのエマージェンシーパックのコンセプトに通ずるものがあります」
エマージェンシーパック
優しい肌触りのもの、安心感のあるもの、ひとつでたくさんの機能を持つものをセットにした。オーガニックコットンのエマージェンシーパック¥22,000/アバンティ(プリスティン)
https://www.pristine.jp/shop/g/g485378/
奥森秀子
株式会社アバンティ 代表取締役社長、「プリスティン」ブランドディレクター 20年以上にわたり、ブランドの商品開発を手がけ、オーガニックコットンを取り入れた心地よいライフスタイルを提案し続けている。
中村寛子さん/残数を気にせず使える月経カップと吸水ショーツで、生理に備える
fermata株式会社 共同創業者、CCO
中村さんは女性のウェルネス課題の解決、支援事業を行い、世界初フェムテックオンラインストアも展開しているフェルマータの共同創業者。ルルレモンの拡張ポケットつきリュックサック「City Adventurer Backpack Ⅱ」の中にはもちろん、女性特有の必需品もしっかりと入っている。
「いつどこで生理が来るかは分かりませんから、使い捨てナプキン、タンポン、吸水ショーツ、月経カップなど、自分が普段使っている生理用品を入れておくと安心です。私は月経カップと吸水ショーツを入れています。繰り返し使えるので、残数を気にすることなく使えるのが便利。一緒にデリケートゾーン用のワイプも入れておくと、水の環境下にかかわらずに月経カップを拭き洗いできますよ。私は生理痛がひどいので、すぐに対処できるよう鎮痛薬も入れてあります。その他の必需品は、防寒対策できて風呂敷のようにも使えるストール、コンセントがなくとも野外でチャージできるソーラー充電器モバイルバッテリーですね。最近追加したのは、やはりマスクと除菌ジェル。基本的には年1回、中身を見直していますが、地震などの自然災害が続いて起きると、ふと思い立って整理したりもします」
【ポイント】
フル装備派とコンパクト派のちょうど中間という荷物の量。歯磨きや除菌シート、最低限の薬と消毒液、小型のヘッドライトなども。スマートで堅実な中身。