とにかく身軽で持ち歩く、「いつも防災」のコンパクト派【PART2】

実は企画のスタート時のタイトルは「あなたの防災リュック、見せてください」であった。取材を進めるうちに、防災用バッグといえばリュックサック(キャリー)一択という、カチコチの固定観念を取り払ってくれたのがコンパクト派の3人。日頃からバッグに入れて持ち歩けるポーチ、着ながら持ち出すベストはどちらも気軽にすぐ始められる、新しい防災のあり方だ。

阿部裕介さん/いつでも持ち運べるサイズでの装備にこだわり、手軽なクリアポーチをチョイス

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写真家

放浪の旅や本格的な山登りをしながらの撮影も多く経験してきた、フォトグラファーの阿部裕介さん。今回は、自身のインスタグラムにて、アウトドアの知識をもとに、理にかなった防災グッズを紹介しているのを目にし、取材をお願いした。

「最低限の防災アイテムを入れておくものとして、A4サイズのクリアポーチを使用しています。理由は誰もがすぐに購入できて、いつでも持ち運べるサイズでの装備をしたかったから。中身は自分にとって優先順位の高いものから、携帯トイレ、モバイルバッテリー、家族の電話番号を書いたメモ紙、眼鏡、薬、緊急用ブランケット、ガムテープを折りたたんだもの。家の玄関付近と車の中に常備してあります。日頃から、この人ならどんな防災グッズを持っているだろうと興味を持って尋ねることが多々あります。そこから気づきがあれば、その都度、いろいろと購入しては自分にとって必要か否かを試しています。やはり、避難所や支給品に頼ることができない薬や眼鏡は各自で準備しておいた方がいいですね」

確かにこのサイズとアイテム数ならば、複数を用意することは難しくない。いざという時、家の2か所に防災グッズを配置しておくことの安心感はきっと大きいはずだ。

 

【ポイント】
さっと手持ちできて、中身の確認も簡単なクリアファイルに、自分にとっての必需品を厳選して収納。

モバイルバッテリー

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約1.4cmの薄さ。スマートフォンに2回以上、タブレット端末に1回以上のフル充電が可能。Anker PowerCore Slim 10000¥2,999/アンカー・ジャパン カスタマーサポート(Anker)

https://www.ankerjapan.com/category/COMPACT/A1229.html


阿部裕介

写真家。大学在学中より、アジア、ヨーロッパを旅する。ネパール大地震による被災地支援や、女性強制労働問題、パキスタンの辺境に住む人々の普遍的な生活などをテーマにした写真などが話題。

田中美咲さん/日々持ち歩き、日々見直すため、A5サイズのポーチを常備

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社会起業家

東日本大震災をきっかけとして8年間、防災の非営利団体「防災ガール」の代表理事を務めてきた、いわば防災のプロ。日頃から、被災された地域で起きていることを他人事とせず、いつでも自分が被災する可能性があることを意識して、日々、思考停止しないように心がけることが大切だという。

「出張が多く、家にいる時間よりも職場や移動時間の方が長いんです。防災グッズを家に備えるよりも、いつも身につけていた方が効果的だと考えて、A5サイズ程度のポーチをいつもバッグに入れています。私的5大マストアイテムは、常備薬、へアゴム、救急セット、ポータブル携帯充電器、人工呼吸用のマウスピースです。日々見直さなくてはいけないと思っていて、そのつど、リップクリームや生理用品、化粧直し用のファンデーションなどを入れたりもしています。最近必要性を感じたのは、自分が安心できて、周りに迷惑がかからない程度に気持ちのいい香りのアイテムですね。避難所生活でシャワーが浴びられない日々を想定し、私は携帯に便利なスティックタイプのボディスプレーを追加しました」

 

【ポイント】
マチなしのA5サイズポーチに、今現在、必要と感じるアイテムをコンパクトに収納。日々、持ち歩き、見直しもするという考え方は実は気軽で簡単な防災につながる。

 

人工呼吸用携帯マスク

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田中さんが救命救急講習を受けた時にもらった人工呼吸用マスク。感染面でも、精神面でも口対口での人口呼吸の抵抗感を取り払ってくれる。人工呼吸用携帯マスク キューマスクf(10個組)¥4,950/株式会社ヤガミ

https://aed.yagami-inc.co.jp/items/mask/

ボディスプレー

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いつでもどこでも、お気に入りの香りをまとえる安心感が大切。田中さんはホワイトムスクの香りを愛用中。ボディスプレー(10ml)¥1,320/セントネーションズ(ショーレイヤード)

https://sholayered.jp/products/body-spray-10ml

田中美咲
社会起業家。2020年3月まで、「一般社団法人 防災ガール」の代表として活動。現在は大学院大学至善館に通いながら、人材育成と企画、PRの会社morning after cutting my hair, Inc.の代表を務める。

国崎信江さん/着て持ち運ぶ「防災ベスト」を考案。無理せずできる「ついで防災」も啓蒙

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危機管理教育研究所代表、危機管理アドバイザー

危機管理アドバイザーとして26年間、女性の視点で防災の危機管理について研究し続けてきた国崎さんが掲げるのは、「無理せず、楽しくできる防災」。

「今までのイメージのとらわれずに、普段の自分が無理せずに取り組めることが効果的である。様々な経験から、防災とはそんな風に気負いなく向き合わないと続かないという考えにたどり着きました。例えば、ハンカチは自分の好きなデザインでなるべく大判のものを選ぶ、マイボトルを持ち歩く、お財布の中にとりあえず10円玉3枚と100円玉3枚以上は残す。『ついで防災』と呼んでいるのですが、こんな風にほんの少し意識をすることが大切です」

そんな国崎さんが開発、販売しているのが、防災ベスト。リュックを背負う要領で、着てしまえばいいという考え方は斬新かつ、理にかなっている。

「収納ポケットが沢山あるフード付きのベストは場所をとらず、すぐに持ち出せます。着ることによって体を守る防護服にも、防寒服にもなる。着たまま寝ることもできるから防犯にもつながりますね。私はこのベストに止血パッド、携帯トイレ、モバイルバッテリー、ヘッドライト、ゼリー飲料などを入れています。小さなサイズでいいので笛や防犯ブザーもぜひ入れてほしいですね」

 

国崎さんが考案した防災グッズ11種つきの大人用防災ベスト。カラフルな子供用ベストも。¥19,800/危機管理教育研究所

https://www.kunizakinobue.com/shop/form.html

 

 

収縮式ヘルメット

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ワンタッチで簡単に組み立て可能。回転式ヘルメット Crubo ¥3,000~4,000程度(編集部調べ)/株式会社 谷沢製作所

https://www.tanizawa.co.jp/crubo

国崎信江
危機管理教育研究所代表、危機管理アドバイザー。阪神・淡路大震災をきっかけに、防災について研究を始める、著書や講演も多数。2020年4月より、YouTube『国崎信江のキキカンリTV』を配信中。