interview & text :天野志穂(エディター)
モード界からも注目を集める多才な若きアーティスト
photography:Aya Sekine
独特の個性と美意識がユーモアあふれる世界観を紡ぐ
「新しい刺激があるからコラボレートの仕事はいつも楽しみ。特に英国を代表するブランドで自分も大好きなバーバリーのワールドキャンペーンは、僕にとって素晴らしい機会だった。集中力のいる作業だったけれど、一流のスタッフと一緒に作り上げていくプロセスはいい経験になったし、完成したビジュアルもとても気に入っているよ」
バーバリーのキャンペーンに独特なタッチのイラストが抜擢され、一躍脚光を浴びたルーク・エドワード=ホールは、クシャっとした無造作ヘアにメガネが印象的な男の子だ。そのチャーミングなルックスも画家のデイヴィッド・ホックニーがスタイルアイコンと聞けばうなずける。27歳にしてアーティストでありインテリアデザイナー、自身のホームグッズラインも展開するマルチな才能の持ち主に、モードからインテリアまで、デザイン業界からの熱いラブコールはひっきりなしだ。2016年はバーバリーのほか、英国ブランド「ドレイクス」のポケットチーフのデザインや百貨店リバティでのイラスト限定販売、ロンドン郊外のカントリーハウスのインテリアデザインなど、多忙な日々だったと振り返る。
子どもの頃から絵を描くのが好きで、アートやデザインの分野に憧れていたというルーク。セントラル・セント・マーチンズではメンズウェアデザインの専攻だったが、英国を代表するインテリアデザイナーのひとり、ベン・ペントリース氏と2年ほど一緒に働いたのをきっかけにインテリアの世界へ。絵を描くのもテキスタイルのデザインも好きな彼にとって、インテリアデザインは自分の好きなことを欲張りにできるうえ、いろいろな作業を同時に進めるほうが飽きずに楽しめるという性格にもぴったりマッチしたようだ。クラシカルな英国スタイルにミッドセンチュリーをミックスした折衷主義や、ビビッドな色とパターン使いは彼ならではで、インテリアデザイン界の若き天才と称されたほど。グリーンで塗られた自宅の壁にはジャン・コクトーやマティスのフレームが飾られ、ソファには柄&カラフルなクッションと、まさに彼のスタイルそのまま。
「服でもカラフルな色やパターンが好きだから、それをインテリアに反映させるのはごく自然だったんだ。色と柄、それに時代も国もテイストも違う家具や小物をミックスするのが僕のスタイル。ウェス・アンダーソン監督の映画の中のインテリアや衣装が醸し出す、カラフルでロマンティックな世界観にはいつもインスパイアされるよ」
気分転換は、料理と旅。インスピレーションを探して
気分転換は、料理と旅。インスピレーションを探して
(左)ユニークな形や鮮やかな色に惹かれて集めているという陶器。旅先で購入することが多いとか(中央)自身のホームグッズラインのクッション。オンラインで発売中(右)アート本もインテリアの一部。憧れのインテリアデザイナーのデイヴィッド・ヒックスや、写真家のセシル・ビートンなどが並ぶ
彼のクリエーションにとって旅も欠かせないそうで、時間ができたら気分転換を兼ねて海外へ。いちばんたくさん訪れている大好きな国は、街が美しく食べ物もおいしいイタリア。なかでも冬のベネチアは霞がかった景色が本当に神秘的とうれしそうに語る。
「今年はノンストップだったから、来年はもう少しスケジュールを調整できるといいな。新しいスタジオもやっと完成するし、時間があれば自分のホームグッズラインも充実させたい。あとはインドにも行きたいんだ。エキゾチックな色彩感覚を実際に見てみたくて」。お気に入りの映画『ダージリン急行』( ’07/ウェス・アンダーソン監督)の舞台だから、というのもルークらしい。やりたいことは次々とあふれだし、さらに海外での新しいインテリアデザインのプロジェクトのオファーもあるとか。本人の思惑とは裏腹に、2017年も世界中のマルチなステージで、彼のクリエーションを目にすることができそうで楽しみだ。
ルークとバーバリーがコラボレーションした2016 February collectionのビジュアル ©Copyright Burberry/Testino/Luke Edward Hall
PROFILE
Luke Edward Hall/ルーク・エドワード=ホール
イギリス出身。アーティスト、インテリアデザイナー。2012年にセントラル・セント・マーチンズ卒業。ベン・ペントリース氏に師事し、インテリアデザインの道へ。2015年秋、独立して自分のスタジオを設立。
http://www.lukeedwardhall.com
2017年を切り拓く、輝く才能とつながりたい今年はモード界にとってどんな年になるのだろうか? そんな未来を描くのにふさわしい7人のアーティストたちに会いたくて、世界中でインタビューを敢行。 今、彼らが考えていることと、今、私たちが考えるべきこと。 煌めく才能に現在と未来を聞いた。
SOURCE:SPUR 2017年2月号「新年を切り拓く、輝く才能とつながりたい THE FACES of 2017」
着たい服はどこにある?
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