interview & text:Wayne Sterling(ライター)
着実にキャリアを積み上げた7年越しのライジングスター
coordination:Tomoko Kawakami
アムステルダムのショッピングセンターからランウェイへ
時々、努力の結晶が一晩で手に入れた成功のように見えることがある。モデルになって7年。自身の仕事について学んできた彼女は、デザイナーたちに見いだされたとき、正しいタイミングで正しい場所にいた。
今年21歳のビルギット・コスは、2017年春夏のミュウミュウのショーのトップバッターにエクスクルーシブで登場。2017年のリゾートコレクションのキャンペーンにも大抜擢され、フォトグラファーは、アラスデア・マクレラン、そしてスタイリストはケイティ・グランドというベテラン勢が手がけた。一緒に並んだのは、90年代のスター、セシリア・チャンセラーやSPURでも大人気だった、ドリー・ヘミングウェイといったそうそうたるメンバー。そのなかでしっかり自信あふれる大人の女性としての存在感を放っていた。
彼女が、アムステルダムのショッピングセンターでスカウトされたのは14歳のとき。意外なのは、最初に彼女をスカウトしたエージェンシーはモデル事務所じゃなかったということだ。そもそも彼女の夢はモデルになることでもなかった。「私、若かったし、その辺りはわかってなかったの。13歳のときの私はショートカットでメガネをかけててね。周りに、モデルになったら、っていう人もいたけど、変なの?って」
実際、彼女はもっとアクティブな女の子だった。ハイキングやスノーボードが好きで、外にいるほうが好きな。今でもモデルになって、ランウェイを歩く自分にびっくりしているという。
14歳でデビューした頃は、彼女の地元のエージェンシーは彼女のヒップサイズが大きすぎると言ったそうだ。若いながら、強い意志を持つ彼女は、モデルの仕事なんて、やめようと思ったと話す。その1年後、パリのエリートモデルが彼女に可能性を見いだし、この5年間、大切に育ててきた。そして2015年にはモード誌のページを飾るほどに成長。2016年、トップモデルとして一躍、注目を集めることに。
アルマーニとミウッチャとの出会いが、運命を変えた
アルマーニとミウッチャとの出会いが、運命を変えた
(左)ミュウミュウ2017年クルーズコレクションのキャンペーンより。鮮やかなドレスを着て、ローマの美しい宵闇の中で撮影された Courtesy of Miu Miu
(右)ADDICTIONの2017年春のキャンペーンの顔にも抜擢。スウェーデンの女流画家ヒルマ・アフ・クリントの抽象絵画にインスピレーションを得たメイクアップが彼女の持つ透明感と意志の強さにマッチした ©ADDICTION
クラシックで正統派な美しさを誇るビルギットは、2017年、誰もが一緒に仕事をしたいと思うライジングスターモデルだ。彼女は自分がタイミングに恵まれている、という事実も理解している。彼女の最初の大きな仕事の一つはジョルジオ アルマーニだった。「モデルを始めたばかりの頃は、ファッションについてあまり知らなかったけど、アルマーニの名前は知っていた。だから、仕事で彼に会ったとき、すごくエキサイトしたの。彼は完璧主義者でとても素晴らしい人よ。そして、ミュウミュウでミウッチャが彼女の世界観を表現するために、私を選んでくれたことはとても光栄だと思っているわ」
実際にファッション業界に飛び込んでみた感想は、「旅行業に就きたかったから、旅がたくさんできるのはうれしいわ。それにファッションの業界で働くのは、毎日、違ったクリエイティブな人たちと違った内容のものを作り上げていくことができてとても楽しい」と語る。とはいえ、これからどんなキャリアを積みたいか問うと、「ほら、私はオランダ人だからあまり計画は立てないの」と笑った。
「でも、ファッション以外では、自然や人助けに関わることがしたいかな。たとえば、ナミビアで動物保護のボランティアに参加するのが、私とボーイフレンドの夢。スタジオの中でずっと過ごすモデル業と青空の下で過ごすナミビアでの時間。とてもナイスなバランスだと思う。できるだけ多くのことを体験してみたい。でもそれは、2017年に限ったことじゃなく、ずっとね」
PROFILE
Birgit Kos/ビルギット・コス
オランダのオーファーアイセル州ダダムスヴァート出身。14歳でモデルにスカウトされ、エリートモデルに所属。ジョルジオ アルマーニ、エンポリオ アルマーニのキャンペーンや、ミュウミュウの2017年春夏コレクションのファーストルックを飾り、ブレイク。models.comの2017年春夏トップニューカマーズにも選ばれた。
2017年を切り拓く、輝く才能とつながりたい今年はモード界にとってどんな年になるのだろうか? そんな未来を描くのにふさわしい7人のアーティストたちに会いたくて、世界中でインタビューを敢行。 今、彼らが考えていることと、今、私たちが考えるべきこと。 煌めく才能に現在と未来を聞いた。
SOURCE:SPUR 2017年2月号「新年を切り拓く、輝く才能とつながりたい THE FACES of 2017」
着たい服はどこにある?
トレンドも買い物のチャンネルも無限にある今。ファッション好きの「着たい服はどこにある?」という疑問に、SPURが全力で答えます。うっとりする可愛さと力強さをあわせ持つスタイル「POWER ROMANCE」。大人の女性にこそ必要な「包容力のある服」。ファッションプロの口コミにより、知られざるヴィンテージ店やオンラインショップを網羅した「欲しい服は、ここにある」。大ボリュームでお届けする「“まんぷく”春靴ジャーナル」。さらにファッショナブルにお届けするのが「中島健人は甘くない」。一方、甘い誘惑を仕掛けるなら「口説けるチョコレート」は必読。はじまりから終わりまで、華やぐ気持ちで満たされるSPUR3月号です!