パワーアップする古典芸能を体感せよ!

#StageINSPO

 古典芸能である歌舞伎で、インドの古代叙事詩『マハーバーラタ戦記』や人気漫画『ONE PIECE』を題材にした新作が上演され、大きな話題を呼んだ2017年。これらの演目は華やかで面白く、歌舞伎を身近に感じられたという人も多いだろう。’18年3月からは、市川海老蔵による『源氏物語』の公演も全国23都市で予定され、さらなる熱視線を集めそうだ。

 古典芸能に魅了され、より奥深くを知りたい欲がふつふつと高まったなら、世阿弥から数えて650年もの歴史を持つ、能の鑑賞などはいかが。神事をルーツのひとつとする能には、エンターテインメントの要素だけでなく、観る者の精神を落ち着かせる心のエクササイズの効果もある。とはいえ、能楽堂にいきなり、はハードルが高い。タイクツしないかも心配だ。

 そこでおすすめなのが、日経ホールで上演される『能楽の水鏡』。古典的演目「羽衣」を、20代続く宝生流の若き宗家が舞う。伝統的なスタイルはそのままに、PerfumeのMVも手がけるトリプル・オーの映像とのコラボレーションにより、これまで実現したことのない演出がなされるという。現代語訳にいとうせいこう、英訳に村上春樹の翻訳でも有名なジェイ・ルービンを迎え、「羽衣」の文学性にも光が当たる。いとうさん曰く、「能はあらすじを勉強しても面白くはない。韻も含めた言葉のよさがわかるように、現代語訳ではリズムの重視を心がけました。上演中、まさに羽衣のような薄い紗幕に映像と日本語と英語が浮かび上がります。夢を見ているかのごとくイメージがふくらんでいく能楽を楽しんでもらえるはずです」

 

『能楽の水鏡-映像に映すイマジネーション-演目:羽衣』総合演出・主演/宝生和英 現代語訳/いとうせいこう 英訳/ジェイ・ルービン
春の三保の松原を舞台に、漁師の白竜に羽衣を奪われた天女が、舞を披露するという天女伝説「羽衣」。この古典的な能の演目に現代的な演出を融合させる、新しい試みの公演。二部制で、第一部には宗家といとうさんのトークショーも予定。2018年2月12日(月・祝)14時開演、日経ホールにて。プレイガイド:チケットぴあ(1等席¥3,000 2等席¥2,500)

Profile

宝生和英

1986年東京都生まれ。宝生流二十世宗家を父の英照より弱冠22歳で継承。伝統的な公演に重きを置く一方、異流共演なども行う。ミラノ万博に参加するなど、海外における文化交流事業を通じ、能の魅力を伝える。

SOURCE:SPUR 2018年2月号「2018年の#INSPOを探せ」
text:Amiko Enami

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