2018年は、女たちの物語が熱い!

ハンドメイズ・テイル/侍女の物語

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カナダの作家、マーガレット・アトウッドの『侍女の物語』は、ドラマ化以前から「トランプ政権下を映す」とされた小説。普通に暮らしていた女性たちが働く権利や財産を奪われ、家族と引き離され、権力者の子どもを産むために仕える社会を描き出す。エリザベス・モス演じる侍女は毎日おびえながらも危機を切り抜け、仲間とともに希望を見いだそうとする――という部分が小説と違うところ。統制社会の描写も恐ろしいが、女性が迫害され日常が一気に変わるシーンも「将来こうなるかも」と思わせる怖さがある。もちろん、ドラマにフェミニズムは通底してあるが、政治に関心を持つことや他人への共感もテーマ。何よりストーリーとキャラクターの強さにぐいぐい引き込まれる! ※Huluで2018年2月下旬独占配信

ビッグ・リトル・ライズ

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確かに舞台は西海岸のリッチなエリアだし、母親たちが暮らすゴージャスな家はまるでインテリア雑誌のよう。ただそんな生活を送る自立した彼女たちでさえ、「憂鬱」というよりは秘密を抱えて苦しんでいる。レイプやDVといった暴力が日常でどう見過ごされるか――リース・ウィザースプーン、ニコール・キッドマン、シェイリーン・ウッドリーらトップ女優たちが本作に出演したのも、そのテーマに共感した部分があるから。監督は『わたしに会うまでの1600キロ』(’14)でリースと組んだジャン=マルク・ヴァレ。美しい映像は圧巻だ。ニコールの夫役のアレクサンダー・スカルスガルドのキレっぷり、セックスシーンの生々しさにも驚くはず。※Huluほかにて配信中

またの名をグレイス

カナダの俳優/監督のサラ・ポーリーは、10代の頃からこの小説に傾倒していたという。このドラマを見ると、政治意識が強く早熟な彼女が多層的なストーリーをどう読み込んでいたかがよくわかる。サラ・ガドン演じる美しいグレイスは仕えていた主人と女中頭を殺した罪で刑務所に入れられている。精神科医にグレイスが打ち明け始めたその人生は、幼い頃から苦労の連続。ただそこには、真実だけではない魅惑的な「語り」もあるのだ。サラ・ポーリーは今回脚本に徹し、監督はメアリー・ハロンが担当。神父役でデヴィッド・クローネンバーグが出演し、気鋭のカナダ映画人が集結! どこか神秘的な後味が残るのもサラ・ポーリーらしい。※Netflixで独占配信中

女性たちが作り、演じる物語で考えるフェミニズム

 2017年のエミー賞で主要部門を制したのが、女性ドラマ『ハンドメイズ・テイル(原題)』と『ビッグ・リトル・ライズ』。これはトランプ政権下で女性の声が無視され、権利が脅かされる動きへの反撃だ――という見方もできるし、ドラマ界で女性プロデューサーや監督がどんどん「作りたいものを作る」流れの展開でもあるだろう。Netflixでは『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』(’13 ~)がその流れを作ったが、Huluの『ハンドメイズ・テイル』では主演のエリザベス・モスがプロデューサーを務め、HBO『ビッグ・リトル・ライズ』ではリース・ウィザースプーンが製作総指揮に。この2作は内容も恐怖を感じる状況に置かれた女たちが、抵抗のために連帯する――という共通点がある。しかも、表現がかなりショッキング。それは「私たちは今、こう感じている!」ことを伝えようとする強い意志に思える。

 『ハンドメイズ・テイル』はマーガレット・アトウッドのディストピア小説が原作。女性が抑圧される世界観がリアルに映像化された。侍女が着る赤いローブと顔を隠す帽子は支配の象徴だが、アメリカでは女性の権利のためのプロテストで参加者が同じ格好をすることも。番組がムーヴメントにつながりつつあるのだ。同じアトウッド原作の『またの名をグレイス』は、カナダの女性制作陣がNetflixでドラマ化。19世紀の女性死刑囚の物語は、主人公が語る「人生の不条理」が、現代にも通じるテーマを発している。

 この3作品にはシビアなメッセージがあるけれど、『オレンジ・イズ~』や女性副大統領を描く『Veep/ヴィープ』(’12 ~)のようなコメディでも、笑いの中に社会風刺があり、女性ドラマにバラエティと主張があるのが最近の傾向。見れば、自分だけで考えていたこともちょっと変わりそうだ

SOURCE:SPUR 2018年3月号「白熱! 海外ドラまとめ」
text:Mari Hagihara

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