"何か表現をしたい"という気持ちが現実に
ケイト・スペード ニューヨークのPRとして10年以上のキャリアを持つ穐山茉由さん。今年、本格的に映画監督としての道を歩みだす。6月8日に公開された映画『月極オトコトモダチ』の監督・脚本を務めたのだ。
「高校時代は服作りがしたくて、ファッション系の企業に就職。最終的にPR業につきましたが、その一方で何かを表現したいという気持ちもあり、写真を学んだことやバンドに参加したことも。本業で、ひとりのデザイナーのクリエーションを扱っていたことから、自分も好きなものを作れたらいいなと刺激を受けていたんだと思います」
映画監督を目指して4年前に映画美学校に通うことを決意。授業は主に平日夜や土日祝日に受講でき、社会人でも学びやすい環境だったという。
「監督業を意識したのは、井口奈己監督の映画『人のセックスを笑うな』を観て、日本人の女性監督が面白い作品を作っていることを知って。私もこんな映画を撮ってみたいと思ったのがきっかけです。また、私生活で結婚や将来に対して自分の考えを改める出来事もありました。結婚や出産というのは、今の自分がやりたくて人生の TO DOリストに入れているわけではないと思い直したんです。それに気づいてから、100%の気持ちで映画を作ってみようと決意。授業には積極的に参加し、飲み会にもよく顔を出しましたね。映画で表現したいモチーフのひとつは、“性別”。実体験に基づく疑問や思いを作品に込められたら」
本業とのバランスも自身の行動力で切り開いていったという穐山さん。
「昨年、作品が東京国際映画祭に出品されたこともあり、社内で認めてもらえる雰囲気ができてきました。監督業は趣味の範囲内ではなく仕事としてやりたいこと。会社に交渉をして、週休3日の契約に。3日間を監督業に費やしています。社内でも初の試みだったそうで、同僚からその姿勢に勇気をもらったと言ってもらえることもあって驚きました。兼業には周囲のサポートも必要です。もう少しこのスタイルを追求していきたいんですよね」
穐山茉由/あきやま まゆ
1982年、東京都出身。「ケイト・スペードニューヨーク」のPRとして勤務。初となる長編映画『月極オトコトモダチ』(写真上)では、"レンタル人間"というビジネスに着目。男女の友情は成立するのかという永遠の問いを投げかける。全国にて順次公開中。