現行品にはないディテール、仕上げ、経年の味わいが魅力のヴィンテージ家具。そのデザインが生まれた時代の背景にも想いを馳せたい。
01 Jean Prouvé の『Standard Chair』
現在、ヴィンテージ家具市場で特に人気が高まっているのがフランスのミッドセンチュリー。その火つけ役であるデザイナーのジャン・プルーヴェは、革新的な椅子の構造を次々に試みた。代表作「スタンダードチェア」は、インダストリアルな力強さと趣向を凝らしたディテールが、独特の調和を見せている。
02 Marco Zanuso の『Lady Armchair』
イタリアは第2次大戦後に奇跡的な復興を成し遂げ、家具づくりも職人の手仕事から工場生産へと移り変わっていった。1951年発表のアルフレックス社製の「レディ」はその変遷を象徴する優雅な一脚。クラシックな椅子のように見えるが、クッションに発泡素材を採用して造形を洗練させた。後の巨匠、マルコ・ザヌーゾの出世作でもある。
03 Hans J. Wegner の『GE290 Low Back』
ハンス・J・ウェグナーはデンマーク出身の木工家具の名手であり、20世紀を象徴する椅子デザイナーのひとり。プレーンな印象を与えるこの椅子も、ウェグナーのクラフツマンシップがあらゆるディテールに生かされている。ゲタマ社の現行品の材質はオークかビーチだが、このヴィンテージ品は現在は貴重なチーク材を使用。
04 Charlotte Perriand の『Berger Stool』
シャルロット・ペリアンは、ル・コルビュジエの設計事務所で数々のインテリアデザインに携わった経歴の持ち主。独立後に手がけた3本脚のスツールは、羊飼いが使う民芸的な椅子を参照したもので、1955年に東京で発表された。今年2月までパリで開催された回顧展により、ペリアンの名声はますます高まっている。
05 Alvar Aalto の『Chair No.69』
20世紀初めからフィンランドで活躍した建築家のアルヴァ・アアルトは、合理的なモダニズムと自国の地域性を融合した作風が今なお高く評価される。また数多くの家具をデザインし、家具ブランドのアルテックで製品化した。「No.69」は、彼が木工工場とともに開発した曲げ木の技術をフレームに使用した、軽くて使いやすい椅子。
06 Charles & Ray Eames の『Eames Arm Shell / Cat's Cradle』
1940年代から時代に先んじた素材に取り組み、モダンな椅子を世に送り出したチャールズ&レイ・イームズ。彼らが40年代末に挑んだのがプラスチックの椅子で、その性質を生かした有機的なフォルムと従来にない発色は画期的だった。大量生産されたシェルチェアも、このロビンズエッグブルーと呼ばれる淡い色合いは珍しい。
07 Pierre Jeanneret の『Office Cane Chair』
ピエール・ジャンヌレは、巨匠ル・コルビュジエの親類であり、彼の右腕として活躍した建築家。インドのチャンディーガルの都市計画に後半生を捧げ、その一環としてデザインした家具が数年前から盛んに再評価されている。逆V字型の脚部をもつ椅子は典型的なもので、復刻版も存在するがヴィンテージの価値は落ちない。
08 Pierre Guariche の『Tulip Chair』
フランス出身のピエール・ガーリッシュは、最近、注目度が増してきたミッドセンチュリーのデザイナー。大衆的なデザインを志向して第一線で活躍した。珍しい鋳造アルミニウム製の座面をもつ「チューリップチェア」は特に人気が高く、量産された金属製の椅子としては異例と言えるほど、素材の個性が際立っている。