料理家の「おいしい時間」

自分の“好き”に囲まれた空間こそが最高の調味料

フードクリエイター
いわさあやかさん

「鶏肉ときのこのクリーム煮は、撮影時のまかないや友人とのごはん会でよく作る一皿。食べた人からレシピを知りたいという声が多いんです。見た目も華やかで作るのも簡単。余ったソースは冷蔵庫で3日ほど保存できるので、リゾットやパスタにも活用できます」と語るいわさあやかさん。何事も楽しむ姿勢を大切にしている。「料理のコツはお気に入りの器に盛って気分の上がる空間で食べること。家は、いわば自分の“好き”の集大成の場所なので、慣れない人でも、実は料理が暮らしを豊かにする選択肢のひとつだと気づくはず」

いわさ あやか●料理のプライベートレッスンや撮影のコーディネート、レシピ制作を行う。パリコレクション時にショーのバックステージでフードケータリングを行なっている。Instagram: @ayaka iwasa

MY RECIPE

鶏肉ときのこのクリーム煮

【材料(2人分)】(☆のついた材料はなくてもOK)

鶏もも肉
1枚(約250~300g)
舞茸
1パック
マッシュルーム
6~8個
しいたけ
4~6個
玉ねぎ
1個
にんにく
大1かけ
ローズマリー
1~2本☆
ローリエ
1枚
バター
15g
小さじ1/2
白ワイン
150㎖
生クリーム
150㎖
コリアンダーパウダー
小さじ1/2☆
こしょう
適量
ピンクペッパー
適量☆

【作り方】

❶ 鶏肉は半分に切り、両面に塩(分量外、約小さじ1/2)をまんべんなくふる。できれば30分ほど置いてなじませる。

❷ きのこは軸を落として食べやすい大きさに切る。舞茸は手でほどよい大きさに分け、マッシュルームは2等分、しいたけは4等分を目安に。玉ねぎは薄切りにする。にんにくは皮をむき、軸を落として包丁の背でつぶし芯を取る。ローズマリーは葉の部分をみじん切りにする。

❸ 深めの鍋にバターを溶かし、玉ねぎ、にんにく、塩を入れて強めの中火でざっと炒りつける。きのこも加えてさらに混ぜ合わせ、蓋をして弱火に落とし、10~15分ほど蒸し炒めにする。底が焦げつかないように時々ヘラでかき混ぜる。

❹ その間に、別の鍋に軽くオリーブ油またはバター(分量外)を熱し、強めの中火で鶏肉を皮目から焼く。ほどよい焼き色がついたら裏返し、白ワインを注いで火を強め一度煮立たせる。

❺ ③の玉ねぎが透き通り、きのこからも水分が出てくたっとした感じになってきたところで、④の鶏肉をワインごと加える。ローリエ、ローズマリーも加えてここでも一度火を強めて煮立ったら蓋をし、弱火に落として15~20分煮る。

❻ 肉に柔らかく火が入り、全体の汁気が1/3~1/2ほど減ってとろみのある質感が出てきたら、生クリームを加える。軽く煮立たせ、コリアンダーパウダーとこしょう、味をみて足りないようなら塩(分量外)を加えて調整する。

❼ 皿に盛り、ピンクペッパーを散らす。

 パリの蚤の市で集めた皿は棚の上に重ね、あえて見せる収納に
 リスのくるみ割りを置いたり、花を生けたり、目に入るだけで気分の上がるアイテムをキッチンに

心を癒やす、家族との日々のティータイム

THUMB AND CAKES
吉田菜々子さん

アトリエ「THUMB AND CAKES」で菓子制作を行う吉田菜々子さん。普段から自宅を兼ねたこの場所で、長時間過ごすことが多いと言う。
「なるべく風通しをよくし、日が差し込む空間になるよう意識しています。家族との食事や、お茶の時間をゆったりと楽しむのが好きです」
吉田さんが紹介するクラシックショートブレッドは、毎日のちょっとしたお茶の時間にぴったりだ。
「私自身もよく作るのですが、ショートブレッドはとても簡単。自宅で過ごされる方が多いと思うので、ぜひ一緒にアフタヌーンティーを楽しんでもらえたらうれしいです!」

よしだ ななこ●菓子職人。シュガーケーキやクッキーなど、雑誌やイベントなどの菓子制作に携わる。代々木上原のアトリエでシュガーアートの制作を行う。著書『SUGAR BOOK』(宝島社)も発売中。

MY RECIPE

クラシックショートブレッド

【材料】(作りやすい分量)

薄力粉
180g
バター
110g
グラニュー糖
60g
ひとつまみ

【作り方】

❶ バターを室温に戻しておく。指がすっと入るくらいを目安に。薄力粉は塩と合わせてふるいにかけておく。

❷ バターをボウルに入れ、ハンドミキサーで軽く混ぜる。その中にグラニュー糖を加え、全体が白っぽくふんわりするまで混ぜる(ハンドミキサーがない場合はホイッパーで同様になるまで混ぜる)。

❸ ②のボウルの中へふるった薄力粉を一度に入れ、ゴムベラで切るように、たまに底からすくいながら混ぜ合わせる。

❹ 粉気がなくなったら、ポリ袋の中へ移し、ひとつにまとめる。広げたラップの上に半量をのせて包み、直径3㎝の円柱状になるよう転がしながらのばす。残りも同じように形を整え、さらにポリ袋に入れて冷蔵庫で1時間以上休ませる。

❺ オーブンを170℃に温める(実際は150℃で使用)。

❻ 休ませた生地を厚さ1㎝にカットして、オーブンシートを敷いた天板に並べる。生地にはフォークなどで穴を開ける。

❼ 150℃に温度を落としたオーブンに入れ、25~30分ほど焼いて完成。冷めたら瓶に入れて2週間ほど保存可能。

 毎朝1リットルのお茶を淹れる生粋のお茶ラバーである吉田さん。愛用している道具を収納している
 余ったショートブレッドは瓶に保存するのがおすすめ。目にも楽しい

自然に寄り添い、健やかな生活を実践

SHUNNO KITCHEN 主宰
二部桜子さん

野菜くずを使ったベジブロス・スープを紹介した、「SHUNNO KITCHEN」主宰の二部桜子さん。なるべく無駄を出さない「ゼロウェイスト・クッキング」を目指している。
「料理の際に出た無農薬野菜の皮や芯を使っています。捨てる部分にもうま味や栄養素がたっぷりです」
外出自粛により、自宅で料理をする時間が増えた人々の姿を見て、環境や自身にプラスになる、このレシピを提案することを決めたという。
「自分の時間の使い方も多様化しつつあるので、料理をする際には自然の声に耳を傾け、地球のエネルギーの恩恵を受けていることを、今一度感謝したいですね」

にべ さくらこ●料理家。ケータリングの提供や、ワークショップを開催する「SHUNNO KITCHEN」を主宰。デリバリーサービス「週イチケータリング」や「オンライン料理教室」もスタート。

MY RECIPE

ベジブロス・スープ

【材料】(作りやすい分量)

野菜くず
両手にいっぱい(約300g)
1000㎖
日本酒
小さじ1
シーソルト
適量

【作り方】

❶ 大きめの鍋にすべての材料を入れ、沸騰したら弱火にし20~30分ほど煮る。野菜のあくにも栄養素が含まれているので、取らない。

❷ 一度火を止め、粗熱を取ってから、強火で再度10分ほど煮出すと野菜の風味がさらに濃厚になる。

❸ 味見をして苦みがある場合はさらに日本酒(分量外)を加えるとまろやかに。それでも苦みが気になるときは、一晩置くとマイルドに。

❹ 皿にスープを盛り、ケールの花や茎(分量外)をのせて完成。余ったスープは冷凍保存し、ポタージュやミネストローネなど、他のメニューにアレンジできる。

 温かな春の日が差し込むキッチンには常に季節の植物を。「農家さんに野菜と一緒にその花も送ってもらって、花瓶に生けます。庭に生えた草花を一緒に飾ることも!」
 琥珀色に透き通ったベジブロス・スープは野菜くずを鍋に投入した瞬間から美しい。「日頃、料理をする際に出る野菜の皮や芯を冷凍庫で保管して、ある程度たまったら使うといいですよ」

小さな特別を日常に。旬の食材からヒントを

夕顔 主宰
藤間夕香さん

「日々の暮らしの中に『少しの特別』を作ることを心がけています。自分にフォーカスする時間が増えた今だからこそ、自分が心地よいと思える食事をする空間や、味つけを考えています」と語るのは藤間夕香さん。板橋にあるアトリエ「夕顔」で四季の移ろいを楽しめる食事会を開催している。そんな藤間さんが今回提案したのが、初夏の野菜と果物を使った一皿。
「草木の緑が色濃く育つ初夏。土の香り、太陽の明るさも身近に感じる季節です。この料理は、『新鮮な土の香り』を思わせるスパイスであるクミンの香りが主役。初夏野菜の鮮やかな味わいと、甘夏の太陽のような爽やかさを感じられると思います」

ふじま ゆか●料理家。東京・板橋に「夕顔」という屋号でアトリエを構え、定期的に食事会や茶会を開催する。食にまつわる展示会の企画等も行う。季節野菜を使った滋味深い料理に定評がある。

MY RECIPE

初夏野菜と果実のクミンオイル和え

【材料(2人分)】

新じゃがいも(なければじゃがいもでも可)
大1個
赤ピーマン(なければピーマンでも可)
2個
甘夏
1/2個
クミン(ホール)
7g
アーモンド
10g
グレープシードオイル
50㎖
1.5g
しょうゆ
小さじ1

【作り方】

❶ クミンはすり鉢等ですりつぶす。アーモンドを砕く。ポリ袋に入れてめん棒で叩くか、フードプロセッサーを用いてもよい。

❷ 新じゃがいもは水洗いし、芽を落とし皮のまま食べやすい大きさに切る(新じゃがいも以外を使用する場合は皮をむく)。

❸ 新じゃがいもを蒸す。蒸し器に湯1リットル(分量外)を沸かし、つぶしたクミン3gを入れ、クミンの香りをじゃがいもに移しながら、竹串がすっと刺さるまで10分ほどを目安に蒸す。火を止め、そのまま蓋をして10分置く。この過程で、よりクミンの香りがじゃがいもに移る。

❹ 赤ピーマンは水洗いし、丸ごとトースターまたはオーブンで、柔らかくなるまで火を通す。

❺ 野菜に火を通している間にクミンオイルを作る。ボールにすりつぶしたクミン4g、グレープシードオイル、塩、しょうゆを合わせてよく混ぜる。そこに砕いたアーモンド(盛りつけ時に料理に散らす用に少し残しておく)を加えてなじませる。

❻ 甘夏は4等分のくし形切りにし、皮と種を切り落とし、食べやすい大きさに切る。

❼ 別のボールに蒸し上がった新じゃがいもを入れ、塩ひとつまみ(分量外)で下味をつける。じゃがいもは2~3カット分のみをスプーン等でつぶす。このひと手間で、後ほど合わせるクミンオイルとなじみやすくなる。火を入れた赤ピーマンを手で縦半分に裂き、ヘタを除いて加える。甘夏も加え、クミンオイルでさっくり和える。

❽ 器に盛り、仕上げに砕いたアーモンドを散らす。

藤間さん主催の食事会で使用するダイニング。「季節の移ろいに意識を傾け、心安らげる空間になるよう意識しています」

photography: Takamasa Nakamura (Ayaka Iwasa), Satoshi Nagura (Yuka Fujima)

FEATURE
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