PROFILE
南 俊郎さん
ヌーベルシノワの名店「シェフス」出身。“食べてみないとわからない”古典的料理に遊び心を加えたプライベート感あふれる老上海料理店。
「持ち帰り専門の飲茶スタンド『MIMOSA GINZA』も経営しているので、営業できなくはなかったのですが……。ニューヨークの状況を見ていたし、同世代の知人が新型コロナウイルスに感染したこともあり、お客さまやスタッフの身の安全を守るためにも、緊急事態宣言前から休業しました」。その間、南さんは監修しているレストランのメニューの開発や見直し、今後の食やレストランのあり方を追求し、行動に移していた。
「もともと開きたいと思っていた料理教室ですが、自粛のタイミングで生徒さんを15人ほど募ってオンラインで開催。初めてのことで不安はありましたが、一人ひとりの具材の切り方や鍋の様子まで細かく確認できる一方で、オンラインならではの魅力も発見。対面式だとグループごとに調理する際は役割が決まりがちですが、ここでは参加者自身がスタートからゴールまで頑張らないと、みんなと『いただきます』ができない(苦笑)。また、普段は一からは作らない中華を、自宅にいながらひとりで作れたという達成感はあったようです」
Zoomを使って開催されたオンライン料理教室の様子。月1回ペースで行われる予定。
料理教室では、店で人気のメニューやアレンジ料理も伝授してもらえる。
一方、レストランでは、5月からアラカルトメニューをなくし、おまかせコースに一本化。「もともとおまかせやコースの注文がほとんどで。コースに絞ることで満足度が高まるし、僕自身もこれまで手が回りきらなかったお客さまへの料理の説明や会話も楽しめるのではないか、と。仕入れる食材にお金をかけられるうえに、フードロスも抑えられる利点もありますし」。「作るのが好き、食べてもらうのが幸せ。ただそれだけです」と語る南さんは、どこか一方通行だった「おいしい」を、料理教室で、コース料理で、今まで以上にお客さま一人ひとりと対峙し、つながりを築くあり方を選んだ。