幸せな生活を待つ保護犬猫たちが、生涯の家族を見つけるサポートをする。それぞれの活動のかたちとは?
保護犬猫診療と保護活動を行う病院
服部真澄さん(なないろ動物病院 院長)
以前勤務していた病院が保護犬猫の診療をしていたことから、自ら開院後もやはり保護された動物たちの診療と、里親探しのサポートをしている服部さん。「獣医だからできることもあるんです。保護団体では預かるのが難しい病気の子も、ここでなら預かれる。譲渡会は興味がある人しか行かないけれど、病院にはいろんな人が訪れるので、思わぬ縁が生まれることもあります」。犬を家族に迎えたい人は、まずは気軽に相談してみてほしい、と言う。「好きな犬種でも、その気質を知らないと『こんなはずでは』という結果になることも。行動診療科では、不安や恐怖心が問題行動に表れてしまう犬のケアもしています。しつけ教室では人間も犬も快適に暮らすためのルールを教えていたりも。特に子犬を迎えた方には、ぜひ一緒に正しいしつけを学んでほしいですね」
保護団体も増えている昨今。でも資金面をはじめ、その苦労は並大抵ではない。「保護されたのに不幸になるのは避けたいこと。地域の方たちとともに楽しく『犬猫にも好かれる病院』を目指しながら、無理なくできることに少しずつ取り組みたい。保護犬猫の新たな幸せを見つけられたら、と思っています」
オンラインで保護活動をサポート
佐々木優依さん(株式会社ペットキャンプ 代表)
ウェブ関連の仕事をしていた6年前、激務で心身のバランスを崩してしまった佐々木さん。「そんなときに保護した2匹の子猫とともに、自分の療養のため実家に戻ったんです。のびのびと生きている彼らの姿は、生産性と効率ばかり追っていた私の価値観とは真逆。そこに本当に癒やされ、救われたんです。だから社会復帰するにあたり、何か恩返ししたいと思ったのがきっかけです」
そしてITの力で保護活動をサポートするべく、「株式会社ペットキャンプ」を設立。「保護活動に関わる方の現状には、人間の生活が金銭的に圧迫されるほどの厳しい面が。持続可能な新しい仕組みづくりが必要だと思ったんです。当初はライブ配信型里親募集プラットフォームを立ち上げる予定で動いていましたが、新型コロナの件があり、まずは急遽オンライン譲渡会というかたちでスタートしました。私たちが最終的に目指すのは、動物も人もともに健やかに暮らせる社会。今後は収益性も考え、保護活動以外も視野に入れながら、新しい取り組みができたらと。動物とは暮らせないという人も、サポーターになってもらえたらうれしいですね」
生体販売をしないペットショップ
猪本博子さん(BETTER HALF オーナー)
東京を離れて熊本に移り住むにあたり何をするか。そう考えたときに「どこにいても、何らかのかたちで携わりたかった、犬の保護活動に関わる仕事しか思いつかなかったんです」という猪本さん。「子どもの頃の夢は『捨て犬を拾う人』だったので(笑)」。
そして、ペット先進国の店頭では、買われるのを待つ子犬はいないのに、日本だけなぜ?という長年の疑問から、グローバルスタンダードである「命を売らない」ペットショップをオープン。保護団体のサポートや近隣店とコラボしたチャリティグッズの販売も行い、今後は企業と連携した社会貢献活動も計画中。また6歳で引き取った愛犬の介護経験から、シニアやハンディキャップ犬用の介護グッズも取り揃えている。
「売れ残った子はどこに流れるのかと考えれば、目を背けたい結論にたどり着くはず。保護犬の認知は広まっても、生体販売を引き締めなければ現状は変わらない。でも悲壮感は押し出さず前向きに軽やかに、“生体販売しない日本”を目指したいんです」