五感で通じ合う乗馬 By 白澤貴子(エディター)

しらさわ たかこ●長年雑誌の制作に携わってきたフリーランスエディター。パリ留学時に培った感性を活かし、近年はクリエイティブディレクターとしても活躍している。中学生の息子を持つ、一児の母でもある。

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1 毎回同じ馬に乗るわけではない。さまざまな性格の馬と触れ合う

 

仕事が趣味だった私の世界を、乗馬が一変させた

「以前は仕事が趣味でした」。そう話す白澤貴子さんが乗馬を始めたきっかけは、「ママの将来の夢は何?」という息子の何げない一言だった。
「きちんと答えられなかったんです。実は、幼い頃に乗馬を断念したことがありました。新しい挑戦をしたいという気持ちと、苦手を克服する気持ちで再びトライしたんです」。すると、すぐにその奥深さに夢中に。「以前は毎日刺激を追い求めていて、癒やしは必要ないと思っていました。でも、乗馬にはその二つの要素が共存していたんです。まず、自然や動物が相手なので正解がない面白さがある。たとえば、上達したと感じても次の日は思うようにいかなかったり。加えて、"ホースセラピー"という言葉が存在するように、馬の持つ癒やしパワーが本当にすごくて。共通言語は存在しないのに、心で通じ合っている感覚があるんです。私が疲れているときにはやさしく寄り添ってくれます」

馬との交流は、価値観も大きく変化させた。「都会育ちの私は、それまで田舎にいっさい興味がなかった。でも、馬上で四季や流れる空気を感じる豊かな経験を通して、現在はいろいろな場所に赴くようになりました。旅先で現地の馬に乗るのが楽しいんです。改めて『エルメス』というブランドを知ることができたのも、乗馬のおかげ。鞍の購入をきっかけに、本当の意味でメゾンの歴史やホスピタリティに触れました。見える景色を広げてくれた乗馬に、今度は私が恩返しをしたい。もっとたくさんの人に、魅力を伝えていきたいですね」

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2 「乗馬中は、力みすぎても力を抜きすぎても駄目。その場の状況や馬のコンディションに合わせて柔軟に適応する能力は、何事にも通ずると思う」

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3 カスタムしているブーツは、Parlantiの一品。7年間愛用していたものを最近買い替えた
4 乗馬後は、鞍の手入れを絶対に欠かさない。「サドル用のソープで汚れを落とし、その後バームでしっかりと保湿します。すると、傷がまるでなかったかのように消えるんです。以前は美容に無関心でしたが、この経験を通して興味を持つようになりました」
5 エルメスの鞍はフランスでオーダーした。「品質の素晴らしさはもちろんですが、店舗スタッフの人柄も購入の決め手の一つでした」

photography: Wataru Kakuta

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