マイペースで進む山登り By 小嶋智子(スタイリスト)

こじま ともこ●福島県生まれ。2011年より青木千加子氏に師事し、’15年に独立。女性誌やカタログ、俳優のスタイリングなどで活躍。ヴィンテージをミックスした自身の装いやロマンティックな世界観にファンが多い。

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1 尾根から海を見て、この笑顔。バックパックとパンツはアンドワンダー

 

一歩一歩、前へ。気づきと学びをくれる山登り

15年以上、登山を趣味にしている小嶋智子さん。日帰りから、南アルプスなど標高2000mを超える山を小屋に泊まりながら歩く高所登山まで、季節や登山仲間により目的地はさまざまだ。登山の魅力に開眼したのは中学校時代の林間学校。20代前半には高尾山に登り、富士山、日本アルプスと経験を積んできた。この日は"房総のマッターホルン"の異名を持つ千葉県の伊予ヶ岳へ。標高336mと低山だけれど、スリリングな岩登りや山頂からの絶景が楽しめる。歩き始めて1時間ほどで山頂に着くと、鎖やロープを頼りに岩をよじ登ってきたせいか「手が痛い……(笑)」と言いつつも、海まで見える絶景を前に、思いきり山の空気を吸い込んでいた。

「当たり前ですけど山って、自分の足で一歩一歩、登っていかないといけない。途中、『なんでこんなところに来ちゃったんだろう』と思うこともたまにありますけど、山頂からの景色を見たら疲れも吹き飛んで、仲間とその達成感を分かち合える。それって、少し仕事と通ずるものがあると思うんです」

登山から得られるインスピレーションも大切なものだ。
「山で見る自然の色彩にすごく刺激を受けていて、仕事でもそういった繊細なカラーパレットを意識しています。登山ではルート、天候、時間など、常に気にかけながら行動しなければなりません。シビアさがありつつ、臨機応変に気持ちを転換する。そんな難しいバランス感覚も山から学んでいます。圧倒的な自然を前にすると、改めて自分がちっぽけな存在だなぁと感じられて、客観的に見つめ直せるんです」

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2 爽やかなペールトーンのアウターはアークテリクス。雨や風を防ぎつつも蒸れを放出。「登山服は原色より中間色が好み。アークテリクスは機能と美しさを両立しているところが素晴らしい」
3 ワントーンが大人っぽいトレッキングシューズはアンドワンダーとサロモンのコラボレーション。靴紐をアッパーに内蔵できる構造で、岩などに紐が引っかかる心配がない
4 登山口の平群天神社で安全祈願

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5 難所の岩登り。垂直に見える断崖を前に一瞬たじろぎつつも、設置されたロープや鎖をつかんで登っていく。「コツがわかると楽しくなってきた!」と、先頭に立って進む

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6 「頂上より登っているときのほうがいろんなことを考えています。木々の緑の美しさに目が洗われたり、感覚的なことを大事にしています」
7 山ごはん用の炊事道具、食材、救急セットなど、用途や使うタイミングに合わせて小分けパッキングするのが小嶋さん流。
A 食材は大きめのスタッフバッグにまとめて
B コンパスやホイッスル、絆創膏など、万が一のためのエマージェンシーキット。必要最低限のものをコンパクトに収納
C 登山中に食べるエナジーバーやお菓子はバックパックの取り出しやすいところに入れておく
D ストーブの着火装置が動かないときのために、ライターは必須
E パタパタと折りたたんで収納できる小型バーナー
F アウトドア用のガス缶
G コーヒー用のお湯を沸かすための小型コッヘルはPRIMUSのもの
H SEA TO SUMMITの蛇腹式のカップ。軽くて小さくなるのが便利
I 調理用の中型コッヘル。スクエア型はバックパックへの収まりがいい。インスタントラーメンもシンデレラフィット

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雄大な景色を眺めながら、和気藹々とごはんを食べることも醍醐味です

8 山でのランチタイム。食材や道具は仲間と分担して運び、景色のいいところで調理。小嶋さんお手製の短時間で作れる「山のトマトリゾット」は、ベーコンときのこ類を炒め、そこに自宅で炊いてきた玄米を投入。水と市販のトマトピューレとトマトソースを加えて少し煮込めば完成。仕上げにパルメザンチーズとパセリをトッピングすると本格的な味に。時短で作るポイントは、家で玄米を炊いてくることと、ベーコンやきのこなどの具材をあらかじめカットしてくること。ベーコンの香ばしさとトマトの酸味が食欲をそそり、疲れているときでも食べやすい

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下山後の寄り道も楽しみ

山を下りたら温泉に入ったり、地産のものを食べたり、買ったりするのも楽しい時間。房総半島は野菜やフルーツ、魚介もおいしいので、道の駅(9)と干物店(10)をハシゴ。「露天風呂から山が望める温泉に行くこともあります」

9 「道の駅 富楽里とみやま」は新鮮な切り花も手頃なプライスで手に入るとあって、大賑わい(’23年春まで仮設店舗で営業中)

千葉県南房総市二部2211 
0470-57-2601
営業時間:9時〜17時、8時30分〜17時(土・日・祝日) 不定休

10 「提灯屋ひもの店」は小嶋さんも「サバの干物がすごくふっくらしていておすすめです!」と太鼓判を押す。日によって開店状況に変動あり、来店前に電話をするとスムース
千葉県安房郡鋸南町保田240
0470-55-1178
営業時間:9時〜17時
定休日:月曜

photography: Sodai Yokoyama interview & text: Yuriko Kobayashi

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