気鋭のギャラリー4スポット

東京には無数のアートギャラリーが存在する。小道をスルスルと歩いた先にひっそりと佇んでいたり、駐車場のような空間の先に圧倒的な展示が。ユニークな形態をもつ、ディープな4スポットを紹介

CALM & PUNK GALLERY

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(右奥)七尾旅人などミュージシャンのアルバムジャケットやブランドのキャンペーンビジュアルでグラフィックデザインを行う河野未彩だが、立体物も手がける。写真は、2018年に開催した初個展『not colored yet』より。光の三原色の原理を応用したペンダントライトを用いた作品《RGB_Light》
(右)グラフィックとプロダクトの関係性について形にした右奥と同じ展示より。9月に行われた展示でも視覚に驚きを与える作品を多数発表

クリエイティブコンサルティングを行う企業が手がける、ギャラリー

西麻布の小道にひっそりと佇むビルのエントランスをくぐると、5メートル以上に及ぶ天高の気持ちいい空間が出現。作品集『GASBOOK』を展開し、アパレルの制作から、コンサルティング業まで行う、ガスアズインターフェイスが運営しているギャラリーだ。昨年11月に行われた、AUTO MOAIの個展『Buoy』が話題に。近年は、Russell MauriceやAntwan Horfee、水野健一郎など、コミック・アブストラクション(漫画における抽象表現主義)を牽引する作家の展覧会を多く発表。2019年には、ラフォーレミュージアム原宿にて、デジタル・RGB領域で表現する国内外9組の作家とともに『PHENOMENON: RGB』展の企画制作を手がける。コンテンポラリーアートからサブカルチャーまで幅広い領域を横断しながら発信する。提携プロジェクト「C.C.P.」では、過去にOIL by 美術手帖や原宿のストリート系コンセプトショップDOMICILE TOKYOにて展示を行なった。9月25日(土)から10月10日(日)には、視覚ディレクター・河野未彩の個展を開催。

気鋭のギャラリー4スポットの画像_2

DATA
東京都港区西麻布1の15の15 浅井ビル1F
休廊日など詳細は、公式Instagram(@calmandpunkgallery)にて随時更新しているので要確認。

月極

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(上)MOTOKO MARUIが、第二子妊娠中に制作した《TASOGARE》より
(左)魅惑的な女性の美脚を大胆にモチーフ化した作品も上と同シリーズで発表。ドラマティックなグラデーション使いや、一度見たら忘れられないポップなカラーパレットのアートワークが期待される

東京から、山梨、高知まで、作家による"循環"の場

2018年に、池尻大橋の雑居ビルの地下・元駐車場のスペースに看板を掲げ、’21年より学芸大学に。移転後も同じく、ギャラリーはビルの地下駐車場に、4階にはインテリアショップ「YOU ARE WELCOME」が。今後は同ビル4階にて撮影スタジオ「第二東邦スタジオ」がオープン予定で、複合的に展開。常に多種多様な作家とコミュニティが循環する場所を目指しており、過去には、KOSUKE KAWAMURA、GUCCIMAZE、YOSHIROTTENによる『CHAOS LAYER』を開催。移転前の『さよならギャラリー月極展​』では、総勢21組のクリエイターによる盛大な展覧会が行われるなど、作家同士のアイデアが新たな化学反応を起こしている。また、提携拠点には、アーティストが滞在しながら作品を制作する山梨・西湖の「SAIKONEON」、高知のショップ兼ギャラリー「OKYAKU」が。9月下旬からは、カルチャーからファッションの分野において、グラフィックを手がけるMOTOKO MARUIによる初個展を開催。

気鋭のギャラリー4スポットの画像_4

DATA
東京都目黒区中央町 1の3の2 B1
休廊日など詳細な情報は、公式Instagram(@gallery_tsukigime)にて随時更新しているので要チェック。

PARCEL

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(上)2021年3月に、アーティスト・BIENによる個展『DUSKDAWNDUST』が、PARCELとHARUKAITO by islandの2カ所で同時開催された。彼自身も参加する、10月からのグループ展には、平面作品を制作する若手作家たちが大型ペインティング作品を発表予定だ
(左)立体駐車場だったスペースの特性から大規模な作品でも余裕をもって鑑賞可能

ギャラリーとオルタナティブスペースの融合

2019年、馬喰町のDDD HOTELの一角に開廊。もともと立体駐車場だった場所を活かした、二重構造の空間だ。現代美術を軸にしながら、サブカルチャーやミレニアル世代の自由な価値観をつなぐプログラムを企画。7月から8月にかけて行なった展示『4面鏡 / Quad Mirror (By myself, For myself, to myself & ourselves)』では、ミュージシャンのコムアイやNTsKiが参加。アート作品を販売するコマーシャルギャラリーだけでなく、オルタナティブスペースの要素を併せ持つのも特徴だ。ディレクションには、ギャラリストとして長年のキャリアを持つ佐藤拓のみならず、プログラムディレクターにアートコレクティヴ「SIDE CORE」のメンバー高須咲恵が参入している。過去には、角田純、BIENなどの個展を開催するほか、アートフェア『EASTEAST』も展開。10月16日(土)から11月21日(日)には、AUTO MOAI、BIEN、倉田裕也、山口幸士、小畑多丘、箕浦建太郎といった気鋭の作家によるグループ展を予定している。

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DATA
東京都中央区日本橋馬喰町2の2の1 DDD hotel内 1F
休廊日など詳細は、公式Instagram(@parceltokyo)にて随時更新している。

gallery 10(TOH)

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(右)荒渡巌が、2017年に発表した映像作品《映像物件》。この頃の作品から今に至るまで、社会インフラのような大きな構造と、そこからこぼれ落ちる私的な日常を組み合わせた作品を発表し続けている。gallery 10(TOH)での個展では、インスタレーション作品を発表予定
(左)2019年に関内文庫で開催したアーティスト・Houxo Queと荒渡の二人展『ディスプレイの光』より。そこで披露されたモニターを吊るした荒渡の《月の下で眠りたい》

ミレニアル世代が生み出す新しいプラットフォーム

今年、代々木駅東口から徒歩1分のビルにオープンしたばかり。ビルの階段を上がってすぐに現れる自動販売機が、なんとギャラリーへ続く扉になっている。20〜30代のキュレーションメンバーを主体とし、同世代の作家やコミュニティを活発化させる試みをする。代々木駅に隣接しているため、窓を開ければ電車の通過音が。反対に密閉すると都会にいることを忘れるほど静かな空間に早変わりし、内容ごとに音の雰囲気を変えディレクションしている。過去には、山内祥太、アーティストユニット・MES、ファッションブランド・A-MACHINE、京都拠点の古着屋・OASISIIと音楽家・小松千倫によるポップアップイベントを行なった。また、佐藤友理と酒井直之、上村なおか、宮﨑すみれによるパフォーマンス展示を行うなど、展覧会という枠にとどまらない、自由な発表の場として盛り上がりを見せている。10月2日(土)から10月24日(日)には、現代美術作家・荒渡巌の個展が開催予定。

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DATA
東京都渋谷区千駄ヶ谷5の20の11 1B
休廊日など詳細は、公式Instagram(@gallery10.toh)にて随時更新している。

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