モードの裏側に迫るドキュメンタリーが熱い!

#FashionINSPO

一時は流行のようにショーの舞台裏とインタビューをまとめたファッション・ドキュメンタリーが量産されたが、観客の眼も肥え、より質が高く明確なビジョンを持つ映画が出てきた。何より、新しい作品群はモード界の特質にきちんと踏み込んでいる。つまりクリエイティブとビジネスが同等にあり、その重圧がデザイナーにかかる点。『ディオールと私』(’14)にもその視点があったが、これから公開される『ドリス・ヴァン・ノッテン』では創造性の自由と独立企業であることが、『マノロ・ブラニク』ではデザイナーとブランドの個性と成長が表裏一体に描かれている。それぞれの作品自体、ジャーナリスティックでありながらアーティスティック。そこが刺激的だ。

『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』

大企業の傘下には入らず、広告は出さず、ライセンス契約もなし。ただ年に4回のコレクションに集中する――だがその独自性こそがデザイナーとしての彼、ブランドとしてのドリス ヴァン ノッテンの魅力を濃密にしているのがよくわかる。まずアトリエじゅうに美しい布が広げられるというユニークな創作プロセスにも惹かれるが、初公開されるドリスの邸宅と広大な庭の素晴らしさといったら! それが彼のアートと結びついていることが実感できる。

© 2016 Reiner Holzemer Film – RTBF – Aminata bvba – BR - ARTE

『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』
映画製作に慎重だったドリスに対し、仕事場やショーの裏側だけでなく自宅に入り、長年連れ添うパートナーへの思いまで引き出したのはライナー・ホルツェマー監督。彼のビジョンは確かだ。コリン・グリーンウッドの音楽にも耳を傾けて。(公開中)

『マノロ・ブラニク トカゲに靴を作った少年』

華麗でセクシーな靴で絶大な人気を誇る、セレブなデザイナー。だが45年以上前からマノロを知る監督が描くのは、その多面性だ。スペインでの少年時代、パリやスウィンギング・ロンドンで過ごした青年時代が、本人のおちゃめな口調で語られる。一方、私生活は謎めいていて、工房で手仕事に没頭する姿も。その複雑さが、ひとりの天才のポートレートとして浮かび上がる。

©HEELS ON FIRE LTD 2017

『マノロ・ブラニク トカゲに靴を作った少年』
マイケル・ロバーツ監督自身、モード界の交友関係が広い人。だからこそジョン・ガリアーノら豪華な出演者が、マノロと彼の靴の魅力をさまざまに証言。過去の逸話にも驚きがいっぱいだ。カメラはアトリエや自邸にも入るが、そこには深い孤独も。(公開中)

SOURCE:SPUR 2018年2月号「2018年の#INSPOを探せ」
text:Mari Hagihara

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