クレア・フォイ、この名を忘れてはいけない

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©2017 Responaut Productions Ltd.

 2018年、たっぷりと耳にすることになるのが、この人の名前。Netflixのドラマ「ザ・クラウン」でゴールデン・グローブ賞を受賞、エミー賞にもノミネートされたクレア・フォイは、今、ハリウッドで引っ張りだこ状態だ。2017年秋アメリカ公開された『Breathe』でも大絶賛を受けた彼女は、現在『ラ・ラ・ランド』(’16)のデイミアン・チャゼル監督の最新作『First Man』を撮影中。その次には、『ドラゴン・タトゥーの女』シリーズ最新作で、主人公リスベットを演じることが決まっているのだ。

 だが本人はいたって普通。この日のインタビューにも、タートルネックの薄手のセーターにジーンズ、髪を後ろで束ね、ごくシンプルなメイクという姿で現れた。しかも、取材場所まで歩いて来たのだという。
「私はもう33歳。この仕事も、10年やってきているのよ。変わったのは、自分に対する他人の意見。(受賞やノミネートで)突然にして私は価値のある人になったわけ。1年半前だって、演技力は同じだったのにね」
 キャリアでの成功は、私生活の大きな変化と同時期に訪れた。「ザ・クラウン」の撮影が始まる4カ月前に、初めての赤ちゃんが生まれたのだ。「あのときはパニックになってばかりだったわ。みんな、私をひどいやつだと思っていただろうな」と振り返って笑う彼女が『Breathe』で演じるのは、よき母で、夫に最大の愛を捧げる妻ダイアナ。結婚してまもなく、夫がポリオにかかり、首から下が不随になったとき、何もかもを犠牲にして、夫とわが子のために奉仕するという、感動の実話だ。
「脚本を読んだときに、彼女のモチベーションはすぐ理解できた。母親なら、きっとみんなそうだと思うわ。もし自分に子どもがいなかったら、『自分が母だったらどうするかな』と考えたでしょうけどね」
 プロデューサーはダイアナの息子、つまり映画に出てくる少年ジョナサンだ。大人になった彼は、自分の両親の映画を作ったのである。トロント映画祭でのプレミア上映で、母子はクレアのすぐそばに座っていた。「感情のコントロールが得意なダイアナは泣いていなかったけれど、私は映画の最初からばかみたいに泣いていたわ。彼女の人生をもう一度生きることになって、涙が止まらなかったの。あの少年が、立派な大人になったんだと思うと、さらにね。今もまだ感動から抜け出せないでいるわ」。そんな素直さもまた、この人の魅力だ。

「ザ・クラウン」

エリザベス2世の治世を描く伝記ドラマ。クレアは若き女王の恋心や苦悩を繊細に演じ、作品と主演女優部門でゴールデン・グローブ賞を受賞。原作は『クィーン』(’06)の脚本を担当したピーター・モーガン。シーズン2までNetflixで配信中。

『Breathe(原題)』

首から下がまひ状態になり、妻と友人に支えられて生きるロビン(アンドリュー・ガーフィールド)。やがて彼は、身体障害者の生き方を向上させる活動のパイオニアになっていく。アンディ・サーキスの監督デビュー作。(2018年秋公開予定)

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Profile

1984年イギリス生まれ。『デビルクエスト』(’11)で映画デビュー。いくつかのテレビ出演を経て、Netflixのドラマ「ザ・クラウン」(’16)の女王エリザベス2世役を獲得。最近ストリーミングを開始した第2シーズンにも出演する。

SOURCE:SPUR 2018年2月号「2018年の#INSPOを探せ」
text:Yuki Saruwatari

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