チェ・ヒジュ(최희주) さん/ストーリーを感じる繊細な針仕事【クラフト作家を訪ねて】

チェ・ヒジュ(최희주) さん/ストーリーの画像_1
[赤楚さん着用]ニット¥330,000・パンツ¥340,000・靴¥165,000/クリスチャン ディオール(ディオール)

優しい光が射す韓屋の軒先に腰掛けたチェ・ヒジュさん(右)と赤楚さん。天然素材のなめらかな手ざわりを楽しみながら、作品の説明に耳を傾ける。深いブルーと麻の持つ本来の色みを生かした愛らしい蓋つきのケースは「小さなものでも制作には丸一日かかるんです」とヒジュさん。

チェ・ヒジュ(최희주) さん/ストーリーの画像_2

1 頭を東向きに飾ると悪運を払う干し鱈を、苧と綿糸で表現したモビールモシミョンテ。日本ではチェッコリのウェブサイトなどから購入可能。¥14,000〜¥24,000
2 石を毎日積み重ねると幸運を呼ぶという韓国の風習を反映した。石のモビール₩320,000
3 不均一な光の透け感も美しい、韓山苧のケース₩350,000〜
₩1,200,000・紺色のステッチ入り麻ケース₩450,000

チェ・ヒジュ(최희주) さん/ストーリーの画像_3

4 ヒジュさん自邸のリビングにて。「オブジェの距離感や並べ方にもヒジュさんのこだわりとセンスを感じます」(赤楚さん)

チェ・ヒジュ(최희주) さん/ストーリーの画像_4

5 ヒジュさんの美意識が行き届いた、コンパクトながらも洗練された制作空間。「韓屋にある"余白の美"は私の仕事とも通じます」

ひと針ずつ心を込めて縫った、日用品やモビール

オーガニックファブリックのアイテムを手がけるアーティスト、チェ・ヒジュさん。韓国の伝統的な麻や苧といった素材を使い、ひと針ひと針丁寧に縫う。作品はポジャギ(韓国のパッチワークされた布)から日用品、オブジェなど幅広く、日本でも魚のモビール(1)が好評を博している。

景福宮からほど近い西村エリア。大通りから路地を一本入ると、ソウル中心部とは思えないほど静謐な雰囲気が漂う。約100年前に建てられた韓屋を訪れるのを楽しみにしていたという赤楚さん。ヒジュさんが時間をかけて改装したキッチンやダイニングスペースにある作品の一つひとつに興味津々。

「本当に繊細な仕上がりで、優しい印象を持つ作品ばかりですね。針仕事は気の遠くなるような作業だと思います」と語りながら、テーブルの上に並んだオブジェをそっと持ち上げたり、手のひらにのせてみたり。

服の仕立て職人だった父と趣味でポジャギを作る母を持ち、幼少期から手縫いの世界に親しんできたヒジュさん。その魅力を再認識したのは、かつて日本で暮らしていたときのこと。

「同じマンションに住む友達と出かけた帰り、車の中で誕生日プレゼントだよ、と手作りのコースターをくれたんです。それは亡くなったお父さんの浴衣で作ったものでした」

自分を大切に思う友人からの手縫いのギフトに感動し、涙が止まらなかったと語る。その後、友人や家族から本格的に裁縫の技法を学び、韓国でも作家として活動を始めた。

ヒジュさんの作品のモチーフは、自然など身近にあるもの。天然繊維そのものの風合いを生かして、ミニマルなデザインで仕上げている。そこにステッチを施し、リズミカルな表情に。韓国の伝統や感覚を愛らしく、温かみのある形で昇華するアーティストの一人だ。そこにはかつて大事な人からの贈り物に心震わせた原点が感じられる。

 

PROFILE
縫製作家。大学では韓国文学を専攻。卒業後編集者として活躍し、結婚を機に日本へ。自然からインスピレーションを受けて作る石や月などのオブジェや、ファブリック小物が人気。作品は漢南洞のLEEUM STORE、カロスキルのchapter1 editなどの店舗のほか、ウェブサイトからも購入可能。
https://www.choiheeju.kr/
instagram: @heewone21

韓国に関する記事はこちら