ハンドメイドの金工品は、生活で使ってこそ"作品"に
シム・ヒョンソクさんは、長年にわたり制作を続け、美術館で個展なども行う金属工芸家。作業場を構えているのは、ソウルから車で約1時間、京畿道・加平郡だ。庭の畑にはヒョンソクさんが作ったじょうろやスコップ、松の木には吊り下げタイプの鳥の餌台が揺れている。
「畑仕事と自身の制作をする、こんな生活スタイルに憧れます。今は仕事が忙しいけれど、いつか自分も挑戦してみたい」。そう赤楚さんが話すと、ヒョンソクさんがはにかんだ笑顔で答えた。
「自分が暮らす中で必要な道具を作っているんです。生活に根ざしたものを作りたいですね。使いながら気分が明るくなるような」
よく見ればドアの取っ手も、あちこちに掛けられたフックもすべて手作りだ。"DIY"に対するこだわりは高校時代からあった。栓抜きを自作したことが契機となり、金属工芸家を目指すことを決意。カナダへの留学時代にライカのボディを手に入れたのをきっかけに、実用性も備えたピンホールレンズのカメラを、パーツの一つひとつに至るまで自作したというから驚きだ。全部で25台制作したその精緻なカメラで、本格的に注目を集めるように。試しに撮った写真が作業場の壁を飾り、そして14年間を一緒に過ごした愛犬・ノルの絵とともに優しく空間を満たす。
10代から培ってきた技術を生かして金属の鋭いエッジや洗練された美しさを強調し、時には手に取ったときの安定感に焦点を当てる。シルバーやステンレスなど素材の特性をよく理解し、組み合わせによって、アクセサリーからカトラリー、ブラシなどの日常的な道具まで仕上げていく。「やってみますか?」という提案で、赤楚さんも金属板をカットする工程にトライ。ヒョンソクさんのサポートを受けながら「実際に手を動かすことで、作業の繊細さがわかりますね。特に鋸を下ろすときの力加減が難しいです」と新たな経験に。