一枚のアルバムとの出合いから始まる、"私的"な音楽の旅。多彩な音が育む、新しいカルチャーの萌芽を目撃せよ! 『choke enough』 Oklou 『choke enough』 Oklou 配信中/True Panther 時代の流れに沿ってさまざまな形に変化をし続けているポップミュージック。そのときのトレンドによって多様なジャンルのサウンドを取り込む柔軟な響きこそ、時代の最先端を走る音楽=「ポップミュージック」だと言えるのではないだろうか。2025年、その先頭集団に位置する作品の一つが、フランス出身のミュージシャン、オーケールーの最新作『choke enough』だ。 幼い頃、両親の影響でクラシック音楽の英才教育を受けていたという彼女は、コンピューターの世界にのめり込むようになっていった。インターネット上で出合った、トランスなどのクラブミュージックからヴェイパーウェイヴ、アンビエントまで、当時の彼女にとって未知の世界だった音楽。 それらにインスパイアされて制作された本アルバムは、Y2Kの空気を感じさせる懐かしさと、近未来的な新しさが混在した新感覚のトーンだ。とてもクリアでひんやりとした質感の響きをしている。ピンクパンサレスやエリカ・ド・カシエールなど、近年のポップ・ダンスミュージックは派手さや感情を抑えたクールな音と歌い方が主流。その流れともリンクする、いい意味でサラッと聴き流せる軽やかさが今作の大きな魅力だ。 チャーリー・XCXやキャロライン・ポラチェックなどの作品と共通した制作陣が参加しているが、音づくりの方向性や仕上がりはまるで違ったものになっているのも興味深いポイント。神秘的な美しさとカジュアルな聴き心地を併せ持ち、ポップスに新たなスタイルを提示した傑作だ。 HASHIMOTOSAN(ハシモトサン) ジャンルを問わずさまざまなミュージシャンを愛する音楽マニア。Itなアーティストを紹介する自身のX(@hashimotosan122)にファン多し。最近は、新調したアナログプレイヤーでレコードを聴きながら過ごす時間がお気に入り。 2025年4月のおすすめ音楽 『Between The Stars』 Hana Hope ¥3,000/Sony Music Associated Records 日本と米国にルーツを持つ19歳のシンガー・ソングライター。ceroのメンバーやjo0jiが参加する本作でメジャーデビューを果たす。たおやかな美声と表現力を駆使し、早くも無二のアイデンティティを確立。 『Like A Ribbon』 John Glacier ¥2,420/Beat Records 新たなアイコンとしてモード界にも愛されている英国人ラッパーのデビュー作。本名を明かさないミステリアスな彼女は、陰影の深いサウンドに乗せて少しずつ実像を明かしていく。その物憂げな語りに魅入られる。 『The Long Way Round』 Maya Delilah ¥3,080〈3月28日発売〉/Universal Music ロンドン生まれのマヤは、スモーキーな歌声と鮮やかなギタープレイを披露するファーストを、名門ブルーノートから発表。ジャジーでソウルフルな彼女の歌はじわじわと心に浸透し、長く愛される定番になりそう。 【HASHIMOTOSANの"雑食"音楽紀行】をもっと読む 【オーケールー】フランス発、ポップミュージックの最新地点【hashimotosanのおすすめ音楽】 【バッド・バニー】祖国の伝統文化や社会問題を、音楽を通じ世界へ発信【hashimotosanのおすすめ音楽】 【ファビアナ・パラディーノ】偉大な父から音楽的センスを受け継いだ、R&B界の注目株【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】 【タイラー・ザ・クリエイター】過去と向き合い自身と対話し、これから先を見つめ直す【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】 【ジョーディー・グリープ】気鋭の若手が挑む、UKロックとブラジル音楽の未知なる融合【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】 【フローティング・ポインツ】自宅とダンスフロア双方を揺らす、電子音楽の最先端【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】