一枚のアルバムとの出合いから始まる、"私的"な音楽の旅。多彩な音が育む、新しいカルチャーの萌芽を目撃せよ! 『Luminescent Creatures』 青葉市子 『Luminescent Creatures』 青葉市子 ¥3,300/hermine 現代社会を生きる私たち人間のほとんどは、自分が思っているよりずっと疲れている、というニュースを目にした。仕事に関するプレッシャーや人間関係、SNSによるストレスなどメンタル面での疲労を抱えている人が多く、肉体的なものとは違い、気がつかないうちに疲弊しているそうだ。音楽には疲れを癒やしてくれる力がある。そう信じている自分が最近、安らぎを求めてよく聴いている作品は、京都府出身のシンガー・ソングライター、青葉市子の最新アルバム『Luminescent Creatures』だ。 現在海外で最も高く評価されている日本人ミュージシャンと言える彼女が奏でるのは、ゆったりとしたフォークサウンド。日常に溶け込む親しみやすさと、非日常的な神秘性が同居する、何とも不思議な魅力を持った響きをしている。指弾きのギターやピアノの繊細な音色と、息の成分を多く含んだそよ風のような歌声が作り出す幻想的な世界は、聴く者の雑念を払うように、心の中をスッキリと清らかにしてくれる。 前作『アダンの風』と同じく、作曲家の梅林太郎と共同で制作した今作。彼女が頻繁に訪れている沖縄や奄美諸島などの離島、海や森などの自然、さまざまな生物からインスピレーションを受けていて、中でもダイビングをした際に海中で耳にしたクジラの歌に強く心を打たれたという。言語や種族を超えて心を動かす力を持つクジラの歌のように、彼女の音楽も国境を超えて愛されているのだ。目を閉じて今作を聴いていると、スーっと浄化され心も体も軽くなっていた。 HASHIMOTOSAN(ハシモトサン) ジャンルを問わずさまざまなミュージシャンを愛する音楽マニア。Itなアーティストを紹介する自身のX(@hashimotosan122)にファン多し。最近は、新調したアナログプレイヤーでレコードを聴きながら過ごす時間がお気に入り。 2025年5月のおすすめ音楽 『For You』 Yukimi 配信中/BEATINK 日系スウェーデン人のYukimiことユキミ・ナガノと言えば、稀代の美声を持つリトル・ドラゴンのシンガー。インティメートなソロ作品では二児を育てる母の視点で、自身の人生体験から得た教訓を共有する。 『ANIMARU』 Mei Semones ¥2,750〈5月2日発売予定〉/Big Nothing ジャズとクラシック、ブラジル音楽とインディロックの間を自由に行き来する、日系米国人アーティストのファースト。言語の壁を身軽に飛び越える彼女が、日本語と英語を織り交ぜ家族や音楽への愛を歌う。 『Send A Prayer My Way』 Julien Baker & TORRES ¥2,860/Beat Records ふたりの米国南部出身のシンガー・ソングライターが、念願のカントリー・アルバムでコラボレーション。温かなサウンドに縁取られた彼女たちの歌は、生きにくさを感じるあらゆる人への、深い共感に満ちている。 【HASHIMOTOSANの"雑食"音楽紀行】をもっと読む 【青葉市子】日本の自然の美しさを音楽に乗せ、世界に癒やしを届ける【hashimotosanのおすすめ音楽】 【オーケールー】フランス発、ポップミュージックの最新地点【hashimotosanのおすすめ音楽】 【バッド・バニー】祖国の伝統文化や社会問題を、音楽を通じ世界へ発信【hashimotosanのおすすめ音楽】 【ファビアナ・パラディーノ】偉大な父から音楽的センスを受け継いだ、R&B界の注目株【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】 【タイラー・ザ・クリエイター】過去と向き合い自身と対話し、これから先を見つめ直す【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】 【ジョーディー・グリープ】気鋭の若手が挑む、UKロックとブラジル音楽の未知なる融合【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】