一枚のアルバムとの出合いから始まる、"私的"な音楽の旅。多彩な音が育む、新しいカルチャーの萌芽を目撃せよ! 『Fabiana Palladino』 Fabiana Palladino 『Fabiana Palladino』 Fabiana Palladino¥2,640/BEATINK 知らなかった音楽に出合えたときのワクワク感は、どれだけ年を重ねても変わらず刺激的なものだ。人からおすすめされた曲でも、SNSやYouTubeでふと耳にした曲でも、きっかけはなんだっていい。それが最新の音楽であろうが過去の音楽であろうが、初めて出合った音楽はその人にとっての新譜なのだと思う。自分にとって2024年最も心が高鳴った新譜の一つが、イギリス出身のシンガーソングライター、ファビアナ・パラディーノのデビューアルバムだ。 ジョン・メイヤーやアデルなど、錚々たるアーティストの作品に携わってきた伝説的ベースプレーヤー、ピノ・パラディーノを父に持つ彼女は、家族の多くがミュージシャンという音楽一家の家系で英才教育を受けながら育った。10年代以降の音楽シーンにおける重要人物、ジェイ・ポールとの出会いにより才能を開花させたファビアナは、数多くのミュージシャンのバックコーラスやサポートを経て、10年という長い年月をかけて今作を完成させた。80〜90年代のR&B、ディスコをモダンにアップデートしたような、懐かしさと新しさが入り混じったグルーヴ感。聴いていると思わずうっとりしてしまう大人っぽい洗練された響き。彼女の初となる来日公演が1月に開催されるが、その会場は格式高い名門ジャズクラブとして知られるブルーノート東京だ。ファビアナの艶のある歌声や偉大なる父親から譲り受けた音楽センスを、上質な空間と一流の演奏で堪能することができるまたとない贅沢な機会となるだろう。 HASHIMOTOSAN(ハシモトサン) ジャンルを問わずさまざまなミュージシャンを愛する音楽マニア。Itなアーティストを紹介する自身のX(@hashimotosan122)にファン多し。最近は、新調したアナログプレーヤーでレコードを聴きながら過ごす時間がお気に入り。 2025年2月のおすすめ音楽 『Vicious Creature』 Lauren Mayberry 配信中/EMI Records スコットランド出身のトリオ、チャーチズのシンガーとしておなじみのローレンが、初のソロ作品を完成。自身の音楽遍歴を映した変幻自在なサウンドを背景に、澄んだ声が長年内に秘めていた想いを解き放つ。 『You Are The Morning』 jasmine.4.t ¥2,640/Big Nothing ローファイなインディ・ロックアルバムでデビューする、トランスジェンダーの英国人シンガー。トランス女性として体験してきた孤独感と痛み、喜びと希望をささやくように歌い、聴き手の脳裏に焼きつける。 『Full Moon』 Moonchild Sanelly ¥2,750/Big Nothing 地元南アフリカではすでに大スター、ビジュアルでもサウンドでも強烈な個性を誇る女性が、本作でワールドワイドにデビュー。ボーダーレスな未知のグルーヴでいや応なく踊らせて、摩訶不思議な世界に引き込む。 【HASHIMOTOSANの"雑食"音楽紀行】をもっと読む 【ファビアナ・パラディーノ】偉大な父から音楽的センスを受け継いだ、R&B界の注目株【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】 【タイラー・ザ・クリエイター】過去と向き合い自身と対話し、これから先を見つめ直す【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】 【ジョーディー・グリープ】気鋭の若手が挑む、UKロックとブラジル音楽の未知なる融合【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】 【フローティング・ポインツ】自宅とダンスフロア双方を揺らす、電子音楽の最先端【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】 【テムズ】愛と希望、苦悩を世界に届ける、アフリカの歌姫【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】 【クレイロ】早咲きのベッドルームポップから、大人のソウル・ジャズへ【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】