「ミケランジェロと理想の身体」展で男性裸体にまみれる #32 #ミケランジェロ展

理想の肉体美を間近で凝視できる「ミケランジェロと理想の身体」展。新日本プロレスの棚橋弘至さんが展覧会サポーターになっていて、さぞ美しい肉体だらけなのかと期待が高まります。

最初の部屋は、「子どもと青年の美」がテーマ。古代に作られた、少年や幼児の立体作品が並んでいます。これはこれでアリです。翼を持った幼児「プットーのレリーフ」はムチムチしていてかわいいです。プットーは天使のことのようです。時を経てルネサンス時代になると、幼児の体も体脂肪率が減り、マッチョになっていきます。「遊ぶ幼児たち」(スケッジャ)は腹筋も背筋も割れてムキムキです。

ちなみに幼児や少年の彫刻や絵画は全裸が基本。「祝福する幼児キリスト」(デジデリオ・ダ・セッティニャーノに基づく)は、片手を挙げて祝福する幼児のキリスト像。お釈迦様が誕生され「天上天下唯我独尊」とおっしゃった時のポーズとそっくりです。ただお釈迦様の幼少期の像は腰に布を巻いていますが、幼児のキリストは全裸で、うつむき加減で顔を赤らめているのがリアルです。イエス様、どうか邪な目で見てしまった罪をお許しください……。「6人の奏楽天使の群像」は、天使たちが楽器を奏でる姿ですが、腰にタスキを巻いていても下半身は丸出しです。きっと解放感あふれる陽気な音楽を奏でていたのでしょう。

「6人の奏楽天使の群像」(ニッコロ・ロッカタリアータの工房)ブロンズ製で17世紀初頭の作品です。天パ具合がかわいいです。

「ガニュメデスの誘拐」(1世紀末)は美少年を、最高神ゼウスが大鷲に変身し、さらおうとしている瞬間を描いたレリーフ。恐怖に怯える美少年はやはり下半身を露出。それにしても最高神だからといってやりたい放題です。ちなみに展示会場には「荘厳のユピテル」(紀元前1世紀~紀元後1世紀)という、ゼウスの裸体像もありました。雄々しい顔立ちと対照的な、股間のサイズ感の小ささのギャップが……。しかしながら好色で有名だったゼウス。そんな神に倣い、ギリシャの人々も美しい肉体が好きでした。ギリシャ人は身体表現の理想を追求し、美しい裸体の像を産み出しました。古代ギリシャを征服したローマは、ギリシャの彫刻作品に魅せられ、複製芸術を作りました。

(左)「子どもたちを解放するテセウス」(右)「ヘラクレスとテレフォス」ともに65-79年頃の南イタリアの作品。テセウスは全裸で戦って勝つなんて無敵すぎです。

ギリシャといえば古代オリンピック。それも美しい肉体美を観賞する祭典だったのでしょう。神に捧げる儀式でもありました。「アスリートと戦士」のコーナーには、青年の美しい裸像が展示されていました。「アメルングの運動選手」(紀元前1世紀)は、当時画期的な作品だったそうです。学芸員の方の解説によると「コントラポスト」という、美術史上では大発見である、片足重心のポーズを取っているそうです。片足重心で腰が傾き、しなやかな筋肉をアピール。体にはあまり良くないと言われてる片足重心ですが、彫刻家にとっては肉体美を表現するための理想のポージングでした。「子どもたちを解放するテセウス」(65-79年)は、火山の噴火でポンペイとともに埋没したエルコラーノで発見された絵画。どことなくユルいタッチが魅力的です。英雄テセウスが怪物ミノタウロスの魔の手から子どもたちを救い出す場面。子どもが喜びのあまりしがみついたり手を噛んだりしています。このテセウスのポーズも「コントラポスト」のアレンジで、片足重心で、子どもたちに手を引っ張られて上半身が少し傾いている表現だそうです。今まで絵画や彫刻の人物の重心など気にかけていなかったのですが、たしかに直立よりもニュアンスが生まれ、筋肉の隆起も観察できます。この展示は気をつけて見ると「コントラポスト」ポーズだらけです。運動選手もポセイドンもゼウスも円盤投げ競技者もみんな片足重心(&下半身露出)でした。だんだん男性の全裸を見慣れてきました。

「ダヴィデ=アポロ」(ミケランジェロ・ブオナローティ) 1530年頃。肩から下がった矢筒から矢を抜くところ、という説が。

展示の目玉は中世の天才芸術家ミケランジェロ・ブオナローティの大理石彫刻作品。ダヴィデなのかアポロなのか解釈がわかれる「ダヴィデ=アポロ」は日本初公開です。「コントラポスト」かつ、片手を背中に回すポーズで体にうねりが生まれています。55歳の円熟期の作品で、中断しているので未完です。未完なのに美しく、ノミのあとまで見ることができて貴重です。ミケランジェロは、大理石の中に、掘り出してほしがっている人体が見えたそうです。「ダヴィデ=アポロは戦い」の前にしてはリラックスした表情で、青年なのにお腹の辺りが出ているのが、50代のミケランジェロならではのリアルな表現。

「ラオコーン」(マルコ・ダ・ラヴェンナ)1520-25年頃の作品。海蛇と戦い絞め殺されそうなラオコーンと息子たちの必死な表情は思わず応援したくなります。

いっぽう20歳頃の作品「若き洗礼者ヨハネ」はどこか人工的に見える完璧な美しさ。なかなかこんな美少年の像はないというくらい、どの角度から眺めても目の保養になります。未完でふわっとした肉体と、スリムでツルツルな肉体、どちらが良いでしょうか。それぞれの魅力を堪能できます。

最後「伝説上のミケランジェロ」コーナーには、ミケランジェロの胸像や肖像が展示。ちょっと期待していましたが、さすがに全裸はなかったです。
 

「ミケランジェロと理想の身体
期間:~2018年9月24日(月・祝)
時間:9:30~17:30(毎週金・土曜日は、21:00まで。 入場は閉館30分前まで)
休館日:月曜日・7月17日(火)(7月16日(月・祝)、8月13日(月)、9月17日(月・祝)、9月24日(月・祝は開館)
場所:国立西洋美術館
東京都台東区上野公園7-7
http://michelangelo2018.jp/index.html

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「ミケランジェロと理想の身体」展で男性裸の画像_1
「6人の奏楽天使の群像」(ニッコロ・ロッカタリアータの工房) ブロンズ製で17世紀初頭の作品です。天パ具合がかわいいです。
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「ミケランジェロと理想の身体」展で男性裸の画像_2
「子どもたちを解放するテセウス」「ヘラクレスとテレフォス」ともに65-79年頃の南イタリアの作品。テセウスは全裸で戦って勝つなんて無敵すぎです。
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「ダヴィデ=アポロ」(ミケランジェロ・ブオナローティ) 1530年頃。肩から下がった矢筒から矢を抜くところ、という説が。
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「ラオコーン」(マルコ・ダ・ラヴェンナ)1520-25年頃の作品。海蛇と戦い絞め殺されそうなラオコーンと息子たちの必死な表情は思わず応援したくなります。
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