世界的なアーティストKAWSの大型展覧会「KAWS TOKYO FIRST」が森アーツセンターギャラリーで開催。緊急事態宣言下で先はよくわかりませんが、今回は無事にオープンし、ご本人も来日という、奇跡のタイミング。KAWSのポップなアート作品は、今の日本を元気づけるという使命を帯びているのかもしれません。 
  
  
 
                                            
                    
                        夏を感じさせない着こなしのKAWS。季節を先取りされているのでしようか。 ニューヨークのブルックリンを拠点に、絵画からストリートアート、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン、彫刻、ブランドとのコラボなど多岐に渡るアウトプットで、世界中の人を熱狂させているKAWS。今最も作品が高値で売れるとも囁かれています。
             
                
                        「SEEING」2018 BFFが展示会場を見守ってくれているかのようです。 まず、ストリートカルチャーについての思いを聞かれると……
             
                
                        「UNTITLED (KURF)」はなつかしさを感じるスマーフがモチーフの作品。 そして、すばらしいインスピレーションはどこから? という質問には軌跡について学んでいます。 今回のコレクションでは私のスタジオを美術館に持ち込むことで、ふだん私がどういうものを見ているのか、何に興味があるのか見ていただけるようになっています。私の個人的なスペースを皆さんと共有する場所を持ちたいということです」と、アートへの尽きぬ興味を窺わせるKAWS氏。
             
                
                        街にあふれている広告に手を加える手法「Subvertising(サブバータイジング)」。ケイト・モスの写真がなつかしいです。 「スタジオの持ち込みなんて、最初はそんなことできるのかとびっくりしましたが、再現してみると、会場にいながら自分の家にいるような気持ちになれました。展示した他のアーティストについて知っていただき、気に入っていただいたら調べてみてください。アートはオープンな会話をすること。作品をアートの中に入れることで循環のシステムができます 」
             
                
                        KAWSのスタジオを再現したコーナー。ここに展示されているアーティストも要チェックです。 そんなKAWSの展示でまず目を引くのは、ご自身のスタジオのセット。ディオールやユニクロとのコラボなど、KAWS本人のプロダクトや彫刻も多いですが、他にはMark Gonzales、Jim Nutt、George Condo、Mike Kelleyなどの作品が並んでいます。KAWSの展覧会の中にさらにKAWSキュレーションによる展覧会があるような見応えある二重構造に。KAWSが好きなアート作品はラフなタッチのものが多いですが、本人の作品は厳密で、筆の跡を感じさせないものが多く、完成度の高さに驚かされます。
             
                
                        ミシュランのキャラクターをモチーフにした「HK CHUM, 2002」。初期作品ですが絶妙なカラーリングです。 例えば「HK CHUM, 2002」はミシュランのマスコットキャラクターであるビバンダムをモチーフにした作品。黒いラインが全く揺るぎなく、色もマットなのでてっきりPCで作画して出力したのかと思ったら「Acrylic on canvas over panel」と表記されていて驚きました。ストリート系というと遊び人っぽいイメージを勝手に抱いていましたが、KAWSは職人気質だとわかり、失礼しました。フリーランスのアニメーターとして働いていた時代に培ったスキルを感じさせます。
             
                
                
                        「UNTITLED (KIMPSONS), PACKAGE PAINTING SERIES」はシンプソンズがモチーフ。パッケージに入っていて凝っています。 KAWSのモチーフ選びの基準はどこにあるのでしょう。ミシュランマン(ビバンダム)、スマーフ、セサミストリート、シンプソンズなどのキャラを再構築し、目がバツ印のスカルと合体させています。コモデティ化されたメジャーなキャラクターに無常感や滑稽さが漂います。有名なキャラ似の「COMPANION」と、如実にスヌーピーを感じさせる犬のキャラなど、アーティストとしてのぼりつめたKAWSにモチーフにしてもらって、もはや光栄です、みたいな感覚で許容されているのでしょうか(「KAWS:proceedings」で検索したところ、とくに訴訟とかはなさそうです……)。「COMPANION」に至っては「KAWS HOLIDAY」シリーズで宇宙旅行にまで行っています。KAWSのモチーフになることでキャラクターの新たな一面が見出され、若者人気も出そうです。
             
                
                        真っ赤なCHUMと、どう見てもスヌーピーの「FIVE SUSPECTS, 2016」。ギリギリを攻めています  
                
                        「COMPANION (RESTING PLACE)」2013年。内臓が半分露出していてもポップな存在感です。 グラフィティはコミュニケーションツールだと言っていたKAWSは、アートによるコミュニケーションで世界中を味方につけ、愛される技法を身に付けたようです。展覧会ではそんなKAWSの世界レベルのコミュ力をアート作品から吸収することができます。
             
                
                        横たわるCOMPANIONたち。COMPANIONはKAWSにとって、もはや家族のような存在だとか。  
                
                        来場者のイラストとKAWSのキャラクターBFFのコラボ写真が撮れる「Make a Friend for BFF」。  
     
                                            
    「KAWS TOKYO FIRST」 https://www.kaws-tokyo-first.jp/