日本でも何度も開催されているゴッホの展覧会。ゴッホの才能が世界に広まるきっかけを作ったのは、ひとりの女性の存在が大きいようです。東京都美術館で開催中の「ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」は、ゴッホの世界最大の個人収集家ヘレーネ・クレラ=ミュラーをフィーチャー。
今回は彼女のコレクションから72点(うちゴッホ作品は52点)が来日しました。ヘレーネは、1908年からおよそ20年で90点を超える油彩画と約180点の素描・版画を収集したそうです。ゴッホ以外にも11000点以上の美術作品を購入し、後年、オランダにクレラー=ミュラー美術館を設立。その財力はどこから……というと、そもそもヘレーネ自身が社長令嬢な上、夫のアントン・クレラーも鉄鉱業と海運業で成功したそうです。その後、夫の会社が傾いても、後世の人のために美術館を建てるべく尽力しました。
展示会場に入ってすぐのところには、彼女が買い付けた作品と金額が展示。例えば1902年には32点、約2億8800万円分、1920年には38点で約7470万円分、1928年には132点で約9250万円分購入、と豪快な爆買いぶりです。ギャラリーで「ここからここまで」といった感じで買っていたのでしょうか。購入した作品タイトルのリストを見ると「ジャガイモの皮をむく女」「糸巻をする男」「糸巻をする女」「篩をふるう人」「しわ伸ばし機と3人の人物」「ひと休みする掘る人」「バターを作る女」など、マニアックでシュールなタイトルが並んでいて想像をかき立てられます。
会場にはアンリ・ファンタン=ラトゥールの「静物(プリムローズ、洋梨、ザクロ)や、ピエール=オーギュスト・ルノワールの「カフェにて」、オディロン・ルドン「キュクロプス」、ジョルジュ・ブラック「菱形の中の静物」といった名作も並んでいます。
「ゴッホ展――響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」
期間:~12月12日(日)
時間:9:30~17:30 ※毎週金曜日20:00まで開室(いずれも入室は閉室の30分前まで)
休:月曜 ※ただし11月8日(月)、11月22日(月)、11月29日(月)は開室
※開催日時などにつきましては、新型コロナウイルス感染症の状況により変更の可能性もあるので、公式HPなどでチェックしてください。
会場:東京都美術館 企画展示室
東京都台東区上野公園8-36
https://gogh-2021.jp/
漫画家、コラムニスト。埼玉県出身、武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデ ザイン専攻卒業。アートやアイドル観察からスピリチュアルまで幅広く取材し、執筆。主な著作は『江戸時代のオタクファイル』(淡交社)『女子校礼讃 』(中央公論新社)『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社)など多数。Twitterは@godblessnamekoです。









