振付家/ダンサー、鈴木竜らによる展示会場でのパフォーマンスも! 「大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ」展、国立新美術館で開催中
東京・六本木の国立新美術館 企画展示室2Eでは、 2023年12月25日(月)までの期間、大巻伸嗣の大規模個展「大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ」を開催中。強烈な光と影で観るものを圧倒する《Gravity and Grace》、15m×37mの巨大な薄布がゆらぐ《Liminal Air Time―Space 真空のゆらぎ》など、同美術館でも最大の空間を生かした展示に圧倒される。
東京・六本木の国立新美術館 企画展示室2Eでは現在、現代美術家、大巻伸嗣の大規模個展「大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ」を開催中だ。
本展は、まず2016年に始まったシリーズ《Gravity and Grace》の最新バージョンの展示から幕を開ける。展示室に足を踏み入れると、まずはさまざまな動植物の文様が施された大きな壺から放たれる、最大84万ルーメンにも達する強烈な光と、それが生み出す影に驚く。東日本大震災に付随して起きた福島の原発事故に衝撃を受けた大巻が、この光で表現しているのは、核分裂反応の爆発的なエネルギー。彼は原子力という諸刃の剣を抱える私たちの社会の危うさをここで表現している。タイトルはフランスの哲学者シモーヌ・ヴェイユの箴言集『重力と恩寵』に由来するものだそうだ。
今回の《Gravity and Grace》では、詩人の関口涼子とのコラボレーションも実現。もともとは図録用に詩を寄せるだけのはずだったが、自分で言葉を使って表現しようと思うと説明的になるところを、関口が見事に言語化してくれたと大巻が感激、その言葉をバラバラにした上で床に展示した。会場の光の変化に合わせて、姿を現したり、よく見えなくなったりする言葉たちを拾い集めれば、深みのある鑑賞体験ができそうだ。
また、この作品に付随して、フォトグラム作品《Gravity and Grace̶moment 2023》の展示も。《Gravity and Grace》の展示室自体を大きなカメラに見立て、その強烈な光を使って印画紙に作品の柄と人の姿を焼き付けた7点の作品を並べたものだが、この作品は原爆の熱線によって建物にできた人の影からインスピレーションを得て制作したという。
もうひとつの巨大インスタレーションは、大巻の代表作のひとつとして知られる〈Liminal Air〉シリーズの最新作《Liminal Air Time―Space》。40m×30mという真っ暗な巨大空間の中で15m×37mの薄い布がほのかな光と風を受けてそよぐ作品と向かい合っていると、まるで演劇の舞台に身を置いているような体験ができる。