インドネシアを拠点に活躍するアーティスト、今津景による大規模個展「タナ・アイル」、東京オペラシティ アートギャラリーにて開催中

東京・初台の東京オペラシティアートギャラリーでは、インドネシア・バンドンを拠点に活動するアーティスト、今津景の大規模個展「タナ・アイル」を、2025年3月23日(日)まで開催中だ。インドネシアの歴史や神話、環境問題など、多様なテーマに取り組んだ絵画やインスタレーションが観る者を圧倒する。

東京オペラシティアートギャラリーでは現在、インドネシア・バンドンを拠点に活動する注目のアーティスト、今津景にとって初の大規模個展となる「タナ・アイル」を開催中だ。

東京・初台の東京オペラシティアートギャラリーでは、インドネシア・バンドンを拠点に活動するアーティスト、今津景の大規模個展「タナ・アイル」を、2025年3月23日(日)まで開催中だ。インドネシアの歴史や神話、環境問題など、多様なテーマに取り組んだ絵画やインスタレーションが観る者を圧倒する。

東京オペラシティアートギャラリーでは現在、インドネシア・バンドンを拠点に活動する注目のアーティスト、今津景にとって初の大規模個展となる「タナ・アイル」を開催中だ。

インドネシアを拠点に活躍するアーティストの画像_1
《Hainuwele》2023 油彩、ジュート 350×800cm トゥムルン美術館(インドネシア) courtesy of The Artist and ROH

本展では、2017年にジャワ島西部の都市バンドンに生活と制作の拠点を移した今津の、2020年以降の作品を中心に展示。タイトルの「タナ・アイル(Tanah Air)」とは、インドネシア語で「故郷」の意味。実はこの言葉、土を意味する「タナ(Tanah)」と水を意味する「アイル(Air)」という2つの言葉を合わせたものでもある。

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「Bandoengsche Kinine Fabriek」の展示空間の一部。手前のインスタレーション作品は《Bandoengsche Kininefabriek》(2024)。

最初の展示室では彼女が2017年に初めてインドネシアに滞在した際に訪れた、旧日本軍の要塞で受けた衝撃と罪悪感、苦悩を背景にした「Anda Disini/You Are Here」と、近年地球温暖化に伴い感染が拡大しているというマラリアと、19世紀にマラリアの特効薬として高い需要のあったキニーネを取り上げた「Bandoengsche Kinine Fabriek」の2つのトピックをもとに展示が展開されている。

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《When Facing the Mud (Response of Shrimp Farmers in Sidoarjo)》2022 油彩、アクリル、泥、UVプリント、キャンバス 194×388cm 個人蔵 courtesy of The Artist and ROH

「When Facing the Mud」は、ガス会社の掘削により泥土が噴出、世界最大規模の被害をもたらした泥火山、シドアルジョをテーマにした展示。シドアルジョ一帯で海老養殖を手がける親子へのインタビューを収めた映像作品や、今津の夫であるアーティストのバグース・パンデガが、泥土噴出事故で被災した住民たちに失った家について聞き取り、その形を3Dプリンタによって泥で再現しようとしたインスタレーション作品が。残念ながら会期中3Dプリンタは稼働していないが、事前に成形された泥の家が生々しい印象を放つ。

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「When Facing the Mud」の展示の一部。手前は《Yesteryears(by Bagus Pandega)》(2023)。
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「Lost Fish」と題された作品群(2021)。かつてチタルム川に生息していた魚たちが、再利用した木材に油彩で描かれている。

資本主義経済の皺寄せをテーマにしているのは、本展の最後で見られる、繊維工場の有機廃棄物や生活排水、プラスチックごみの投棄によるチタルム川の汚染をテーマにした「Lost Fish」シリーズも同じ。「世界で最も汚染された川」とも呼ばれるこの川では、既に約6割の魚が死滅したそうで、ここではかつてこの川に生息していた魚たちの姿を、記録をもとに1種類ずつ丁寧に描いている。

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「Hainuwele」と題された展示空間。大型の油彩画に加え、立体作品も数多く展示されている。

圧倒的なのは、ピンクのカーペットが敷き詰められた大空間での展示「Hainuwele」。ハイヌウェレとは、セラム島のウェマーレ族の神話に登場する女性の名前。ココナッツから生まれた彼女の排泄物は、金や陶磁器などの財宝になるが、その力を不気味に思った村人たちは、祭りの最中に彼女を生き埋めにして殺してしまう。その後、ハイヌウェレの遺体を切断し土地に埋めると、そこからヤムイモやタロイモ、里芋などの根茎類が育ち、島の人々を支えたといわれる。今津はこの神話に興味を持ち、この話をフェミニズムや植民地としての歴史など、さまざまな角度から読み解き、さらに、外国人としてインドネシアで出産した自分の経験なども取り込んで、普遍性のあるダイナミックな作品群を作り上げている。会場で配布されるリーフレットには、展示作品リストとともにそれぞれの展示に関する作家本人によるテキストも掲載されているので、これを読みながら作品に向き合うことをおすすめしたい。

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絵画作品と立体作品が組み合わされた展示風景。右手奥に《Last Universal Common Ancestor》(2022)が見える。

日本とインドネシアの歴史や、開発と環境汚染、神話と女性など、さまざまな問題に言及した作品群は、非常にパワフルで見応えたっぷり。体調と気力を万全にして訪れて!

今津 景「タナ・アイル」
会期:〜2025年3月23日(日)
会場:東京オペラシティ アートギャラリー(東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー3F)
開館時間:11:00〜19:00(入場は18:30まで)
休館日:月曜(祝休日の場合は翌火曜)、2月9日(日、東京オペラシティ休館日)
入場料:一般  ¥1,400、大・高校生 ¥800、中学生以下無料 ※障害者手帳等持参の方および付添1名は無料/無料同時開催「紙の上の芸術|収蔵品展 082 寺田コレクションより」、「project N 97 福本健一郎」の入場料を含む
https://www.operacity.jp/ag/exh282/