Vol.3となる今回はアーティストのYOSHIROTTENさんをお迎えし、アートとデジタルの最前線についてさらに深掘り! 国内外で数々のデジタルプロジェクトを手掛け、今年3月には複合メディアアートプロジェクト「SUN」を成功させたYOSHIROTTENさん。鈴木えみさんとは旧知の間柄ということもあり、自身の作品に込めた思いや今後の展望、アーティストの側面から眺めるデジタルマーケットへの声について、じっくり語っていただきました。ナビゲーターの「HARTi」代表・吉田勇也さんとともにスペシャル鼎談スタート!
移り変わる色相を眺めて毎日メディテーション。NFTならではの新たな価値を体感できる「SUN」
鈴木えみ(以下・E): 3月の「SUN」、行きたかったんだけど、どうしても都合がつかず……残念だった。
YOSHIROTTEN(以下・YRT): 東京にいなかったんだっけ?
E:そう、ちょうどいなくて。
吉田(以下・吉田):「SUN」は私たちの界隈でも、とても話題になっていましたね。
E: 具体的にどんな展示だったの?
YRT: インスタレーションもあるし、立体物から平面作品、アクリル、本、レコードなどいろいろって感じですね。「SUN」は今回の展示に限らず、複合的なアートプロジェクトなんです。365個のビジュアルイメージをいろんなカタチに落とし込んでいて、NFTに関しては、ユーザーが手に入れた瞬間から一年かけて色相が変わって一周する仕様になっていて。それを眺めることで、画面越しにメディテーションとしても楽しめる作品になっています。
吉田: 確かに聞いたことないですね。
E: 9月13日、私の誕生日は残ってるかな?
YRT: 誕生日は……売り切れてるね。どちらにしてももう販売は現在ストップしていて。またゲリラ的にオープンする予定です。
E: あ、そうだった(笑)。
YRT: 当初、僕がNFTで引っかかっていたのは、“作品の価格が広く知られる”という点だったんです。ギャラリーで作品を販売する際にはもちろん値段がつくんですけど、それはそこに足を運んだ人たちだけが知る情報じゃないですか。でもNFTになると、ネット上に価格が公表される。それが一番のニュースになって、アートの話とはかけ離れていた。最初はそこに抵抗がありました。でも「SUN」に関しては、みんなにこれを持ってもらうことが非常に意味のあることだったんで、踏み切ったって感じですね。
E: これを買ってウォレットに入れたら、毎回それを開かないと見られないもの?
YRT: 基本的にはそうだね。スマートフォンのロック画面にする場合は、別のアプリに落とし込んでって感じかな。
吉田: ウィジェットとか、推し活系アプリとかで対応できるかもしれないですね。自分が持っているデジタルトレカを表示するアプリがあるんですよ。そこはNFTの領域というより、OSの問題かもしれませんね。
E: もし購入したら、毎朝起きた時に見られるようにしたいなって思う! “NFTでアートを買う”ってことが、今は投資目的で買う人が多い気がして……。それはそれで全然いいと思うんけど、そういうある種の自慢のためじゃなく、メディテーションっていう目的だったり、自分のための実用性もあると、すごく身近に感じられるし、本当に欲しいって思えるよね。
ステイして、感じて、「SUN」の世界に浸る。 NFTを所有することで広がる、次なる体
YRT: NFTの要素で、これはユーティリティって呼ばれるものなんだけど、それを持っているとその次に何ができるかっていう、そこも大事じゃないですか。僕は今後、宿泊型施設を作って行くんですけど、「SUN」のNFTはその会員券みたいなもので、そこに優先的に泊まることができるみたいな。
E: そうなんだ! さらに最高だね。欲しかった……!
YRT: 自分が持っているNFTが、その宿泊施設で新たな映像作品になったり、太陽がない時には僕の作品を体験して、実際に日が昇ったら、自然と作品とが融合するようなインスタレーションが観られたり、そういう施設を作りたいって思っていて。
E: いいな〜!
デジタル作品をピュアに届けられる。 NFTが教えてくれる、アートの持つパワー
E:今回の「SUN」には最終的にどれくらいの人が来場したの?
YRT: 2日間の開催で、集客は約5,000人くらいかな。子供たちも多くて、すごく楽しんでたよ。
吉田: 家族で楽しめるというのもいいですね。NFTの購入者へのコミュニケーションはスムーズでしたか?
YRT: イベントではインスタレーションフロアとギャラリースペースを設けていたんですけど、その中にNFTブースを作ったんです。そこで、NFタグっていうカードを購入すると、タッチするだけでウォレットを作る機能が入るシステムを導入してたんですよ。
E: 手取り足取りNFTについて説明してもらえる機会って、すごく親切だね。
YRT: その後「Zora」っていうマーケットプレイスで、オープンエディション、限定版じゃないものを1週間で300個くらい配布したんです。そうやってNFTは”NFTの遊び方”を知ってもらう方法を別軸で進めています。
吉田: YOSHIROTTENさんの作品だと、NFTが分からなくても、「アートとして欲しい」って想いが先行して、何とかして理解しようってなる。それが本当にいいですよね。
YRT:「初めてのNFTだった」とSNSに投稿してくれる人もたくさんいましたね。
E: NFTに関しては、どれくらいから具体的に考えていたの? 「SUN」に取り組む前からイメージできてた?
YRT: コロナ禍の緊急事態宣言中に一日一作品の制作をスタートさせて、本当に最初はただコツコツ作ってただけだったんだよね。でも、100日分くらいの作品ができたときに、そこからなんとなく今の「SUN」の形やNFTについて考え始めたって感じだね。
吉田: 先ほど作品の価格の公表の話もありましたけど、アーティストとしては、ご自身の作品とNFTをどのように考えていたんですか?
YRT: 僕はもともとデジタルで作品を作っているので、それがちゃんとしたアートとしてみんなに捉えられているのか、っていう疑問がずっとあったんですよ。結局プリントしたり、立体にしたり、アウトプットしない限り伝えられなかった。でもNFTの登場によって、自分の作品の一番ピュアなデジタルの状態に価値がついたことに感動したんです。でも、最初のマーケットはやっぱり投資目的の側面が強くて、ちょっとな〜と。
E: 過激だったし、偏りもすごかったもんね。
YRT: どこかスニーカービジネスに似てるっていうか。誰かが持って、それを転売してっていう。確かに過去にない革命的な事例だったけど、それは作品にピュアに向かうものではないかなって思ってました。
吉田: 確かに、トレーディングカードに近いですよね。だからキャラクターがメインになっていて。作品性はあまりないかもですね。
YRT: 僕の作品には、そことは全然違う価値があると思っていたんで、1個1個やっていこうって思ってました。流行りとか熱が少し落ち着いてからかなと。
E: ピュアなものはどんどん増えていきますかね? どうですか?