31歳のおひとりさま・みつ子は、自らが脳内に生み出した相談役「A」と日々会話をしながら、平和に暮らしている。しかし、年下の営業マン・多田くんに恋をしたことをきっかけに、自分の感情を押し殺し、「A」にばかり心を開いていたみつ子の中で変化が起きる──。「わかりみ深すぎ 崖っぷちロマンス!」と銘打たれ、みつ子の気楽で切ない「おひとりさまライフ」に共感すること間違いなしの映画作品が、『私をくいとめて』だ。主役のみつ子を演じるのはのん。そして、イタリアに嫁いだみつ子の親友・皐月を演じるのは橋本愛。ふたりの共演は、2013年に放送され、社会現象となったNHK連続テレビ小説以来となる。
みつ子は苦手な飛行機に乗ってやっとの思いでイタリアに辿り着き、皐月と再会する。長い距離と年月を経て、ふたりが同じ画面に映った時の他には代えがたい瑞々しい華やかさに、やっぱりのん×橋本愛というカップリングは特別なんだと再確認。7年ぶりの共演記念! 相思相愛再会対談をお届けします。
お久しぶりののクランクイン……まさかの事態に!
――社会現象になったNHK 連続テレビ小説以来、7 年ぶりの共演です。久々の再会の第一印象は?
橋本さん(以下敬称略) お互い、めちゃくちゃ照れました(笑)。最初の撮影シーンがふたりで花火を見るシーンだったんですが、セリフがなくて、アドリブ的な演技が必要だったんですね。でも、段取りの時に照れちゃって何も出てこなくて、ただ「……久しぶり!」みたいな感じになって(笑)。それで役とかけ離れたかけ合いになっちゃったので、「これはまずい!」って思って、私からのんちゃんに本読みをお願いしたんです。そうしたら、すぐに空白が埋まったというか。みつ子と皐月のふたりが学生時代に一緒に過ごした思い出とか、周りの交友関係とか、脚本では描かれていない想像の部分までもがストンと腑に落ちた。それで本番では、ちゃんとふたりの関係性が描けたので良かったなって思っています。
のん(以下敬称略) 最初私もすごく恥ずかしくて、目も合わせられなくて……でもすごく心が躍りました(笑)。愛ちゃんの方から本読みに誘ってくれたのが、すごく嬉しかったです。
―─お互い、何か以前との変化は感じましたか?
のん 私の愛ちゃんのイメージは、本能で生きてて、理性がきいてないっていうイメージなん
です(笑)。
橋本 あははは。
のん でも、今回はそのオートモードだった本能がマニュアルになって、理性がきいてるなっ
て思いました(笑)。
橋本 調整できるようになったのかな(笑)。昔の私は、すごくいろんな方に迷惑をかけて生きていたんです。のんちゃんもそのご迷惑をかけたひとりで……。
のん いや、おもしろかったよ(笑)。前の作品ですごく記憶に残ってるのは、私と愛ちゃんともうひとりの方との3人のシーンで、ナレーションが流れるんですね。そこで私は、ナレーションに合わせた演技をアドリブ的にやったんですよ。そうしたら、ふたりがかりで私をいじってきて(笑)。
橋本 あ、思い出してきた!(笑)。
のん 「またその顔したよね!?」って突っ込まれて。しかも、そのいじりが何回戦かあって
(笑)。それがすごく記憶に残ってる。
橋本 あははは。ごめん(笑)。
のん ううん、すごいおもしろかった(笑)。
橋本 じゃあ良かった(笑)。今回共演して、のんちゃんは、もちろん進化してるんですけど、根底に流れている"らしさ"みたいなものが全然変わってなくて。それが嬉しかったですね。
のん 初顔合わせの時はドキドキはしたけれど、私も愛ちゃんと演技をするってことに全然抵抗がなくて、すごく自然なことのように馴染めました。
―─のんさんと橋本さんが一緒のスクリーンに映ってるのを見て幸せな気持ちになる人はとても多いと思います。それについてはどう思いますか?
橋本 素直に嬉しいですね。『私をくいとめて』が、私はそんなに出演シーンが多いわけじゃないんですけど、こうやってふたりで取材を受けられることで、前の作品の力の大きさを改めて実感してます。それに、作品自体もすごく好きな作品なので、そのプロモーションに参加できるっていうことも嬉しいです。
―─『私をくいとめて』は「わかりみ深すぎ 崖っぷちロマンス!」と銘打たれていますが、一番共感したところは?
のん みつ子は「A」と話してる時やひとりでいる時は、浮かれたり、落ち込んだりするところがすごく感情豊かに出る。でも、他人と接してる時は、その感情を見せないようにしてるところに共感しましたね。人と接することに対して、そうやってどこか怖い気持ちを持っている人はたくさんいると思んですよね。あと、片思いしている多田くんに対するみつ子の浮かれ具合、「わー!」って心臓が暴れてるみたいな感情にもすごく共感しました。『私をくいとめて』で愛ちゃんと初めて撮影する時の私が、まさにその状態でした(笑)。みつ子みたいに心臓がバクバクしてました。
橋本 いや、私もですから。(笑)。なんで最初あんなに照れたんだろう。私、人と会って照れることってないんですけど……周りの目もあるのかも。「あのふたりが揃う!」みたいな雰囲気が周りから出てたので、それで緊張してしまって(笑)。こっちはそんなに意識してるわけじゃないのに、どう振舞えばいいんだろうみたいな感じでドキドキしてました。
のん (笑)。
作品の中で、それぞれのわかりみ深すぎた部分とは?
―─橋本さんが作品に共感したところは?
橋本 みつ子の「親しみやすさをゲットしたい」っていうセリフがあって、それに対して「A」が「ハートマークを付ければいいんですよ」ってアドバイスをするんですけど、そのみつ子の悩みはよくわかります。私は無意識に近寄りがたいオーラが出てるみたいで、そこを何とかしたいなって思ってるので(笑)。
―─クールなイメージがありますからね。
橋本 そうなんです(笑)!実際は全然そんなことないんですけど……。でも人見知りなのも相まって、黙ってるとそう見えてしまうみたいで。だから、親しみやすさをゲットしたいです(笑)。
―─のんさんは、本作の公開にあたり「おひとりさまって生き方として普通になってきてる気がする。世の中の幸せは多様化している」というコメントを出されていましたが、まさにそのとおりだと思いました。橋本さんはそれについてどう思いますか?
橋本 私は基本いつもひとりで行動するので、「おひとりさま」っていうひとつのスタイルを作って、自分を上げるみたいな気持ちが一切ないんですよね。“自分がひとりでいたいからいる”っていう感じで。だからみつ子の生活ぶりを見ても、寂しいとかも全く思わないんです。「おひとりさま」の生き方自体、私にとってスタンダードで。ただ、人は本能的に誰かと関わらないとストレスを感じる生き物だから、ひとりでいることがすごく楽で幸せだったとしても、結局誰かと関わることを選んでしまうってところもあると思うんです。その本能から生まれる寂しさとか、乗り越えなきゃいけない壁はある。それで、みつ子にとっての多田くんみたいに、誰か関わりたい人が現れた時にどうしたいか、どうすべきかっていうのは、人それぞれ違ってて。みつ子の場合は、力を振り絞って一歩を踏み出した。その姿には勇気をもらいましたね。
のん うん。「おひとりさま」を楽しんでるってことが、時代にも合ってきてると思いましたね。それでいて素敵なスタイルだなって思ったので、そういう部分も見どころだと思いますね。
―─みつ子は「おひとりさまライフ」を満喫しながら、皐月に会いにイタリアにひとり旅をしました。SPUR.JPには「ひとりっぷ」というひとり旅の人気コンテンツもあるんですが、おふたりにとっての「おひとりさまの楽しみ」とは?
橋本 私はまだ海外はひとりでは行ったことはないんですけど、基本旅行も、映画館もお買い
物も散歩も神社も(笑)、なんでもひとりで行くんです。だからみつ子の日常と大体一緒ですね。でも、みつ子は勇気を出して、冒険っぽい感じでひとりで焼肉に行ったりするけど、私は勇気も出さずに普通に行ってます(笑)。その時「行きたい!」って思ったところにすぐ行けるのがとにかく楽しいんですよね。そうじゃないと逆にストレスになっちゃって。ほんと気まぐれなので、人との約束があまりできないんです。のんちゃんは?
のん 私は洋服を買いに行ったりするのは、誰かと一緒のことが多いかな。絵を描いたり、洋
服作ったり、ギター弾いたりする時はひとりで没頭しますね。外に出る時はあまりおひとりさまじゃないかも。
橋本 へー! そうなんだ。
のん うん。
特別なふたりの関係。お互いどう思ってる?
―─のんさんは創作あーちすととして、絵を描いたり、音楽活動をされています。橋本さんも、SPUR.JPの連載「武装MODE」で豊かな感性をファッション写真という表現に落とし込まれていますが、お互いのそういった役者以外の活動についてはどう思っていますか?
橋本 私はのんちゃんに憧れてるので(笑)。
のん (目を丸くして)えっ!(笑)
橋本 (顔が赤くなる)あははは、初めて言いますけど。
のん 同じこと言おうと思ってた!
橋本 えっ! そうなの?
のん うん。
橋本 嬉しい。(のんちゃんは)私にとって本当に憧れの存在なので。私は絵を描く欲求がないんですね。どちらかというと歌とか踊りへの欲が強くて。だからのんちゃんが、絵を描いて、個展を開いたりしてるのは、すごく憧れますし。あと、CDをリリースしたり、ライブをしたり、自分が企画してイベントをやったりとか。それこそレーベルの代表もやってるし(笑)。
のん あははは。
橋本 うん、挙げたらきりがない。生命力に溢れていて、創作のために生まれてきた人って感
じがする。憧れです(笑)。
のん 嬉しい。私にとって愛ちゃんは、自分が手を伸ばしても掴めない魅力を持ってる方なん
ですよね。そこにすごく憧れます。自分とは真逆というか。月の光が似合う存在感。影さえもかっこいい。
橋本 (笑)。
のん うん、言葉もすごく素敵だし。圧倒的な存在で、ずっとかっこいいと思っています。
橋本 ありがとうございます!
――7年ぶりだからこそ、また大きな刺激があった再共演ですかね。
橋本 久しぶりに共演する方っていっぱいいると思うんですよ。でも、それについて大きく取
り上げてもらえることは、なかなかないことで。周りからそう言われて、「7年ぶりなんだ! そんなに経ったんだ」って気付く感じではあるんですけど。ただ、久しぶりに会う人の中で一番緊張する。いろんな感情がありますね。当時の自分は周りが全然見えてなかった
ので、そこに対する罪悪感とか自責の念もあるし憧れもあるし。でも一番大きいのは、のんちゃんが 7年の間にやってきたこともずっと見てきたので、尊敬心がどんどん誇大化しているっていう感じですかね。
のん 私も、愛ちゃんからエキスをもらったとしても自分が絶対なれない存在だと思っている
んですね。彫刻を見てうっとりしてしまう感じ。こんなに真逆なふたりなのに、思い入れを持ってくれている方がいっぱいいて。私も、「このふたり好きだな」って改めて思いました。ふたりが同じ画面に映ってるとおもしろいなって(笑)。だから、また共演できてすごく嬉しかったです。(橋本に向かって)ほんとありがとうございました(笑)。
橋本 私も嬉しかったです(笑)。
12月18日(金)より、全国ロードショー公開!
https://kuitomete.jp/
原作:綿矢りさ 脚本・撮影:大九明子
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photography:Koomi kim styling:Naomi Shimizu interview&text:Kaori Komatsu