2024.11.12

俳優・二階堂ふみが愛する、タイムレスな定番ファッションアイテム【あの人のお気に入りvol.10】

SPUR.JPの連載「あの人のお気に入り」第10弾に登場するのは、俳優の二階堂ふみさん。演技者として表現の幅を広げる彼女に、エッセンシャルなファッションについて聞いた。

SPUR.JPの連載「あの人のお気に入り」第10弾に登場するのは、俳優の二階堂ふみさん。演技者として表現の幅を広げる彼女に、エッセンシャルなファッションについて聞いた。

循環するファッションが、心地よさと装う喜びをくれる

「この数年の間で、いろいろなものを着る楽しさから、自分のなかで納得のゆく心地よさを厳選するようになりました」。そう言って、二階堂さんが紹介してくれたファッションアイテムは、それぞれに奥深いストーリーを秘めている。「もの作りの生産背景や、作り手のインディペンデントな姿勢に惹かれて買うアイテムは、なんだかいつ着ても気持ちがよく、自分に無理がない。そういうものがワードローブに増えていきました」。



動物福祉や環境への配慮にも関心を持つ彼女は「日々自分のなかで考えをアップデートしていきたい」と語る。「アニマルライツやアニマルウェルフェア、環境負荷についての許容も、私自身は0か100かと決断することが正義だとは思っていなくて。その時の最善を選択することが大切だと思っています」。例えば、リアルレザーのアイテムひとつとっても、素材の調達から受け手に届くまでの過程に、矛盾や齟齬が生じないようなもの作りを行うブランドを知ること。その上で、背景にある考えや姿勢に共感を持って購入しているそう。また、二階堂さんは、自身のワードローブについても、過去から未来へと循環させていくことを常に考え続けている。

「動物性素材の使用や大量生産への罪悪感が大きくなりすぎて、服を着ることを楽しめなくなってしまった時期もあります。けれど、ファッションがくれる美しい経験やアクティブな感情も私は忘れたくない。デートにこれを着て行こうとか、この服をまとっておばあちゃんのお墓参りに行きたいな、と思えるファッションが私にはまだまだあるんです」。

幼い頃からずっと好きなものや、思い出が詰まったアイテムを自分らしく、楽しんで着こなす二階堂さん。心が喜ぶファッションは、時を超えて彼女とともに生き続ける。

【MA déshabilléのウールシャツ】作り手の思いが伝わる美しいシャツ

MA déshabilléのウールシャツ
シャツ・パンツ・時計/本人私物

今、一番好きな服かもしれません。ミニマムなデザインで着心地も素晴らしく、ずっと着ていられます。デザイナーの村田明子さんにお会いする機会があったのですが、とても素敵な方でした。ヨーロッパで服作りをしながら、日本文化への造詣が深い。そして作るものが本当に美しい。まさにインディペンデントな存在です。このウールのシャツは、ネイビーの柔らかな生地が軽くて肌触りがよく、ユニフォームのような金ボタンも華やか。もともとワードローブは黒が中心で、ネイビーやベージュなどの色を全く着てこなかったんです。しっくりくるようになったのは、心境の変化もありつつ、この服の持つ心地よさゆえかな、とも思います。

【シャネルのプルミエールとココ クラッシュ】いつも手もとにある時計とお守りリング

シャネルのプルミエールとココ クラッシュ
腕時計・各リング/本人私物

過去も現在も、時代を創るアイコニックなデザイナーには惹かれます。ガブリエル・シャネルも、もちろんその一人。ジュエリーの生産や労働の環境についてエシカルな取り組みを行う現在のブランドの姿勢も素敵です。このプルミエールは私のファースト・リストウォッチ。それまで時計に興味はなかったのですが、形がきれいで、さりげないサイズがいい。身長の高くない私にとって、小さなフェイスはとてもつけやすいんです。自分の体にフィットするものに出合えた時は、買った方がいい! と思いますね。艶やかなラバーベルトや、ヴァンドーム広場を連想させるフェイスの八角形のシェイプも気に入っていて、結果的に毎日のようにつけています。ココ クラッシュは、どこに行くにも必ず身につけるお守り。初めて一緒に暮らした動物のコロちゃんが亡くなった時にイエローゴールドのリングを、数年後クリちゃんが亡くなった時に細身のリングを買い求めました。つけていると、いつも一緒にいた2匹を思い出します。

【ヴィヴィアン・ウエストウッドの全身コーディネート】デザイナーの生き方も深くリスペクト

ヴィヴィアン・ウエストウッドの全身コーディネート
セットアップ・ビスチェ・シューズ・ネックレス・各リング/本人私物

ツイードのセットアップと下に着たビスチェは、それぞれ別の機会に購入。靴もアクセサリーも同様に集めたもので、最初は18歳の時に買いました。10代の頃はロッキンホースシューズを履いてヨーロッパの石畳を頑張って歩いたり、全身ヴィヴィアン・ウエストウッドのコーディネートで友達と遊んだりしていました。最近はこんな風に着る機会がなかったので、服が喜んでいる気がします。デザイナーのヴィヴィアンは「究極のフェミニスト」。実際にお会いすることはできなかったけれど、作品も、生き方も、やっぱりパイオニア。多様性という言葉が存在しないような時代から、さまざまな美しさを表現し、多角的な審美眼を持っていたことに驚きます。作るものひとつひとつにちょっとしたアンチテーゼがあり、インテリジェンスに満ちていて、そういったところも素敵。常に新しくあり続けていた姿勢はお手本にしたいですね。

【祖母のヴィンテージスカーフとコム デ ギャルソンのドレス】思い出ごと身にまとう

祖母のヴィンテージスカーフとコム デ ギャルソンのドレス
スカーフ・ドレス・ピアス/本人私物

人生のファッションアイコンは、私の祖母です。子供の頃から一緒に買い物をして、“いいもの”を選ぶ姿に学ばせてもらったし、大人になって自分の選んだ“いいもの”を着て会いに行くと「これ、私のものだったんじゃない?」と聞いてくる(笑)。とてもおしゃれな人でした。スカーフは、そんな祖母が昔の写真で頭に巻いていたのを見て素敵だな、と思っていたもの。亡くなった後にお下がりとしてもらいました。ワンピースは、17歳の時に古着店で買ったコム デ ギャルソン。ユーズドでも当時の私にとっては高価なもので、頑張って背伸びをして着ていました。歳を重ねて、無理なく着られるようになって、より似合うようになったと思います。

【ヴィンテージのフープピアス】体にしっくりと馴染むタイムレスな存在

ヴィンテージのフープピアス
ピアス・スカーフ・ドレス/本人私物

ピアスはフープタイプばかり。プレーンでタイムレスなものが好き。他のデザインも持っていたことがあるけれど、いつの間にかフープピアスしかつけなくなっていました。最近のお気に入りは、ジュエリーブランド「LORO」の菅原美裕さんが手がける「LORO VINTAGE」で見つけた逸品。軽くつけ心地が抜群で、ワンピースやスカートに合わせると、一気に品がよくなります。

【LIVYのトライアングル ベンガル】自分の体を好きになれるランジェリー

LIVYのトライアングル ベンガル
ランジェリー・トップス・デニム・ピアス/本人私物

もともと自分のためのランジェリーが大好き。誰かに見せるためではなく、自分のことを好きになれるランジェリーがもっとあればいいのに、と思って常に探しています。背中にレースで描いた虎が浮かび上がるトライアングルブラと、その姿がきれいに見えるニットはパリのLIVYで購入しました。試着をしたらすごく褒められて、気持ちのいい買い物でした。デコラティブで過剰な凹凸のあるレースの下着は苦手だし、仕事では服の邪魔をしないベージュのシンプルなものをつけることが多いので、プライベートではもっとさらりと、自分を愛でるようなランジェリーを身につけたい。そんな思いが叶う理想的なデザイン。黒いトップスとデニムは私の定番で、好きなスタイルのままひと味違うスタイリングになるのもうれしいんです。

【TACHINO CHIEのヒールローファー】これからずっと一緒に歩き続けたい一足

TACHINO CHIEのヒールローファー
シューズ・デニム/本人私物

オーダー制を取ることで過剰生産を避け、一足一足職人の手で時間をかけて作る立野千重さんの姿勢に共感します。リアルレザーのアイテムを買う時は、背景や手に入れるまでの過程、未来も含めて一貫性を持つものを選びたい。慎重に考えて購入を決めたのが、このプレーンで、トゥの形が美しいローファーでした。届いた時の包装紙に至るまでとても素敵で、大事に作られているものは一生使えるということに深く納得します。いつも穿いているデニムにも合うし、ワンピースにも似合う。もっと大人になっても履き続けられて、足にどんどん馴染んでいくはず。これから先、いろんな場所に一緒に行けたらいいな、と思っています。

【ヴィンテージのチャイニーズジャケット】これぞ、私のデートスタイル!

ヴィンテージのチャイニーズジャケット
ジャケット・ドレス・バッグ・ピアス・グローブ/本人私物

チャイナカラーの服に目がありません。小さい頃、クリスマスパーティでチャイナ服のセットアップを着てご満悦の写真が残っています。集め続けて、ワードローブにはチャイナカラーのアイテムがたくさんあります。古着屋さんで一目惚れしたジャケット風の一着は、絶妙なAラインの形もテキスタイルもすごくいい。黒のドレスと合わせたこのコーディネートは、まさに私のデート服です(笑)。

【ライフスタイリストのバニティバッグ】持つことで、心の背筋がピンと伸びる

ライフスタイリストのバニティバッグ
バッグ・ジャケット・グローブ/本人私物

環境に配慮したベジタブルタンニンレザーを使用したバニティバッグ。ライフスタイリストというブランドについて知ると、通常は使わずに捨ててしまう部分も余すことなく使うなど、レザーというものを命の恩恵としてアパレルに昇華していることが伝わってきます。ディレクターである大田由香梨さんは、衣食住の面で地球の循環ということを意識した活動をされている方。彼女のもの作りのファンで、他のタイプのバッグやポーチ、ドレスも愛用しているのですが、ひとつひとつのアイテムに背筋が伸びる気持ちがします。こうしたプロダクトを、生産背景を含めた上で選ぶ人がどんどん増えてほしいですね。

【ノワール ケイ ニノミヤのオールインワン】赤いタータンチェックは、やっぱりずっと好き!

ノワール ケイ ニノミヤのオールインワン
オールインワン・ニット・スニーカー/本人私物

赤いタータンチェックが大好きでいっぱい持っています。でも、実は今の私の中で少し距離を感じていたアイテムでもあります。年を重ねると、自分に新しいベーシックができて、ティーンの頃から好んで着ていたタータンチェックと真っ赤なニットのスタイルから徐々に離れていったように思います。それでも離れられない、と実感したのがこのオールインワン。ひたすら可愛くて、どこにも締め付けるところがない絶妙なシルエット。ノワール ケイ ニノミヤのフェミニンかつパンキッシュなマインドが詰まっています。ヒールを合わせてちょっとドレッシーに着てもいいし、下にタートルネックトップスを合わせてもいい。あの頃好きだったものと、今の自分が心地よく感じるものが、ちょうどいいバランスで共存している一枚です。

二階堂ふみプロフィール画像
二階堂ふみ

1994年9月21日生まれ、沖縄県出身。映画『ガマの油』(2009年)でスクリーンデビュー。その後も、映画『ヒミズ』(2012年)、『リバーズ・エッジ』(2018年)、『翔んで埼玉』(2019年)、『月』(2023年)、ドラマ「エール」(2020)、「Eye Love You」(2023)などに出演。写真家としても活動。2024年2月27日より配信されているハリウッド制作ドラマ『SHOGUN 将軍』にメインキャストの一人として出演している。

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