政治の世界に若者を!「ザボディショップが国連と取り組んだ本気のアクティビズムキャンペーン」をクラーク志織さんがルポ

政治の世界には若者が殆どいない。30歳未満の国会議員の割合はたった2.6%

この度、日本でもおなじみのビューティブランドザボディショップが国連とパートナーシップを組み、若者の政治参加を促すためのグローバルアクティビズムキャンペーン「Be Seen. Be Heard.」をThe Body Shopが事業を展開する世界75ヶ国でスタートさせました。

そこで、このキャンペーンの内容やこれまでのザボディショップの歩みについてレポートをしてみたいと思います!


世界26カ国に住む約27000人の人々(うち半数以上が30歳未満)を対象に行った調査によると、69%の人々が「若い人たちが政策について発言する機会を増やすことが政治システムをより良くする」と答えました。世界の人口の約半数は30歳未満の若者で、この世代の若者たちは環境問題や政治への関心が高い傾向にあると言われています。

にも関わらず、30歳未満の国会議員の割合はたった2.6%のみしかいない一方で(ちなみにそのうち女性は1%未満とか)、大統領や総理大臣などの大きな影響力を持つリーダーたちの現在の平均年齢は62歳と高齢です。

これは若者が特に政治に無関心というわけではなく、投票や選挙に立候補できる年齢に制限があったり出馬に多額の資金が必要だったりと、若者の政治参加に対して様々な社会的バリアが多くの国で存在していることが原因でもあるそうです。

例えば、調査でも8割の人が18歳またはそれ以下の年齢(16歳〜18歳)で投票が可能になるべきだと答えているのに、18歳で選挙権がもらえる国は27.8%しかないそうです。

日本国内の現状を見てみても、82%の人が「もっと若い世代が政治に関わるべき」と答えているにも関わらず、被選挙年齢は衆議院で25歳、参議院で30歳だし、立候補には数百万円の資金が必要だったり、若者や経済的に恵まれていない人が政治家になるためのハードルが高い現状があります。(ちなみに衆議院選挙の女性候補の割合は17.7%と、ジェンダーによる偏りも大きいです)

日本の若者は69%が「世の中をポジティブに変えたい」と答えていますが、同時に、今問題になっていることが事態が良くならぬまま悪化していくことを不安に思っているようです。特に関心を持っている問題はという質問には「気候変動」「メンタルヘルス」「プラスチック汚染」という順位での回答でした。

改めてこういったデータを目の当たりにすると、未来の世界を受け継いで生きていく張本人である若者たちに、その未来を形成するためへの発言権が殆ど与えられないなんてとてもおかしいなと気がつきます。

様々な立場の人の声を取り入れる必要のある政治の現場に、多様性が著しく欠如するような状態を作り出してしまっている今のシステムは、果たして公平と言えるのでしょうか?

物凄いスピードで進んでいる気候危機の皺寄せをより多く食らってしまうのも若者世代なのにな……。

日本での被選挙権年齢の引き下げを目指そう!

今回の「Be Seen. Be Heard.」グローバルキャンペーンでは、「選挙権年齢の引き下げ」「制度的な障壁を取り除く」「青少年代表の数を増やす」「政策立案における若者のリーダーシップの強化」などの目標を各国で掲げ、3年間にわたって若者の政治参画を後押しする働きかけをしていくそうです。

政治の世界に若者を!「ザボディショップがの画像_1

具体的にどのようなアクションを起こしていくのかは、各国の置かれている状況にも考慮をし、日本ではまずは「被選挙権年齢を引き下げる」ことに焦点を当てるそうです。オンライン署名運動も先日スタートさせました。この署名がまとまったら、その総数をキャンペーンのパートナーである一般社団法人「日本若者協議会」を通じて各政党に提出をし、法改成立の後押しを目指すとのことです。

ちなみにザボディショップ発祥の国&私が暮らすイギリスでは、The British Youth Councilと協力し、今後3年間の間に投票可能な年齢を16歳に引き下げることを大きな目標にして今回のキャンペーンを展開しているそうです。

ザボディショップの信じるアクティビズム

ザボディショップというと日本では「ナチュラルな商品を取り扱うコスメティックブランド」という印象が強いかもしれませんが、ブランドの歴史を知ると実はすごく社会派でアクティビストなメンタリティーが根底にあるということがわかります。環境・人権運動家であり「ビジネスは善の力になりえる」という信念を持っていた創立者アニータ・ロディック氏は、ブランドを通して様々な社会改革を促しました。

化粧品の動物実験の反対を訴えた最初のビューティブランドでもあるし、グリーンピースとタッグを組んだ「クジラを救おう」キャンペーンだったり、ブラジルの熱帯雨林の焼き払い反対を呼びかける「ストップ・ザ・バーニング」キャンペーや、「家庭内暴力根絶」キャンペーン、ナイジェリアのオブニ族の窮状を訴えるキャンペーンなどなど、数多くの骨太なムーブメントを起こしてきました。

ザボディショップはブランドWEBサイト上で「​​アクティビズムとは、そうだね問題だね、と言うだけだったり、当り障りのない発言や空虚なソーシャルメディアの引用をすることではありません。私たちにとっては、人々の力を結集して具体的な成果を上げることを意味します。私たちは言葉だけのPRだけにはとどまらず、実際に変化を起こすことが重要だという理念をもっています」と表明しています。

「おかしい」と思うだけでは何も変わらない

もちろん大企業って、世の中に対してパワーを持ちすぎてしまうという弊害があったりもすると思います。けれどザボディショップの取り組みのようにあえてその大きな影響力を「公平な社会への変革」のために使っていくやり方は私は応援したいなと思います。

「Be Seen. Be Heard.」キャンペーンが世界75ヶ国で展開されると知ったときも、「そんな多くの国で展開されるのか!」と驚いたと同時に「それだけ多くの国に店舗があるブランドだからこそできるんだよね」と妙に関心したことも覚えています。

悲しいニュースや怖いニュースや怒りが湧くようなニュースを沢山目にすると「ああ、世界はどうせ変わらない」と心細く投げやりな気持ちになってしまう時もあります。でもなんとか良い方に変化させていこうとしている人々が実は世界各国に沢山いるんだ、とリアルに知れることは前を向くパワーの源になる気がします。

今までなかったことにされたり、虐げられてきた人々の声がようやく可視化されはじめ、世の中の不平等がどんどんあぶり出されてきたこの数年。

そろそろ次のステップとして、実際に変化を起こす行動をしていく時なのかなとも思うのです。

私も最近「自分は問題を知ることだけに止まらず、何かアクションもしたかな?」と自分自身に問いかけることが増えてきました。署名に賛同するでもよい、政治家に手紙やメールを送ったり、気になるポイントを企業に問い合わせたりとか、今までよりももう少し積極的に社会に関わっていきたいと思うのです。だってそうしないと「おかしい」と思うばかりで何も変わらないから。

アクティビズムというものをもっと身近に感じていきたいのです。「意識が高い人がやること」でもなんでもなくて、「普通の人が普通に行っていくこと」くらいの感覚で向き合っていきたい。

投票に行くことや政治について語る事、政治活動に参加することだって同じだと思います。この社会に生きる1人の人間として興味を持って意見を交わし意思表示をすることって、何一つ特別なことではないと思います。だって政治って、日々の食卓のメニューを考える延長線上にあるくらい生活に密着していることだと思うから。

世の中は「どうせ何も変わらない場所」ではない。

100年ほど前は女性に投票権すらなかった。たくさんの人々の未来を信じるアクションの積み重ねで、女性にも投票権がある世界を我々は今生きられているのです。
世の中は実は変化の連続だ。

だから、その変化の方向を皆のパワーでより公正で自由な方に向けていこう!

PROFILE

Shiori Clark/クラーク志織●イラストレーター
雑誌やWEBメディア、広告でイラストレータとして活動すると同時に、フェミニズムやSDGsについて考える連載を執筆。ロンドン在住。instagram(@shioriclark)

参考文献
The Body Shop UK Instgram 

 

 

FEATURE