【井上真央】やわらかな瞳でのぞむ未来 。うさぎのようにしなやかに

うさぎのイラストとともに6月号通常版のカバーを飾るのは、卯年生まれの俳優、井上真央さん。 昨年はデビュー30周年、今年は年女と人生の節目を迎えた彼女に聞いた、これまでとこれからへの思い。

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ドレス¥2,343,000/エルメスジャポン(エルメス)

着用したのはメゾンならではのクラフツマンシップを感じるレザーのドレス。「革小物を愛用していて、お世話になった方々に贈ることも多いエルメス。洋服を着たのは初めてですがひと目見て上質とわかる素材、洗練されたデザイン、品格ある佇まいに見惚れました」(井上さん)

悶々と悩んでしまう自分も、嫌いじゃないと思えるようになった

あの経験、あの後悔があるから今の自分がいると感謝したい

SPUR2023年6月号の表紙は、卯年生まれの井上真央さんと、パリを拠点に活躍するアーティスト、河原シンスケさんのイラストとのコラボレーション。「ねえねえ、真央ちゃん、遊んでよ〜!!」。そんなうさぎたちのはしゃぐ声が聞こえてきそうな楽しい作品となった。

「これまで年女だと意識したことはなかったんですけれど、今回この企画のオファーをいただいて、卯年生まれでよかったと初めて思いました(笑)」

聞けば、子どもの頃から動物が大好きで、学校ではいつも「生き物係」に立候補をしていたのだそう。

「でも、係を決めるジャンケンに負けてばかりで全然なれなくて。それでも放課後、係の子たちと一緒にうさぎ小屋や鳥小屋に行って、掃除したり、ご飯をあげたりしていたんです。『係じゃないのに、なんでいるの!』と同級生に言われながら(笑)」

そんな彼女のもとに、昨年、1羽の文鳥がやってきた。「長年、一緒に暮らしていた愛犬が亡くなった頃でした。心配した兄が、ある日、1羽の文鳥と一緒に私の家にやってきたんです」

今ではその文鳥が心の癒やしに。

「鳥を飼うのは初めてで、コミュニケーションをとるのは難しいと思っていたら、『あ、喜んでいるな』『寂しがっているな』と鳴き方でわかるんです。鳥ってこんなに表情が豊かなんだって驚きました。今では、カラスさえも愛おしい(笑)。うちの子はかごから出すと、私の肩や頭にずっと乗っているんです。『母をたずねて三千里』のマルコ(いつも頭に小さな猿を乗せている)みたいだねって言われています(笑)」

日常の風景をなんのてらいも気取りもなく、ユーモラスに語る姿を見ていると、彼女のキャリアを忘れてしまいそうになる。子役からスタートし、昨年でデビュー30年。大ヒットドラマ「花より男子」をはじめ、朝ドラや大河ドラマの主役など輝かしい実績を積んできた。しかし、当の本人は、そんな華やかな道のりを冷静に見つめている。

「10代、20代の頃はとにかく目の前のことを必死でやるという日々でした。できる、できないじゃなくて、やらなくちゃいけないと思っていて。幸い、人との出会いや素晴らしい仕事に恵まれて、その勢いに乗っかっていくという感じでした。30代を迎える頃、私が本当に好きなものって何だろう、美しいと思うものは何だろう、嫌だなと思うことは何だろう……と改めて考えるようになったんです」

そして行きついた答えは、そんなふうに悩む自分もひっくるめて「受け入れる」ということだった。

「それまでやってきたことに対して、『もっとこうしておけばよかったんじゃないか』と後悔したり、反省したりしたときに、『いや、でも、それがあったから今の自分があるんだ』って感謝したり、受け入れたりすることが、30代になって何となくできるようになったんですね。それで自分の中で切り替えができたような気がします。私は悶々と考えすぎちゃうところがあるんですが、そういう自分も嫌いじゃなくなってきたし、自分のダメなところも認められるようになってきました」

一喜一憂せずに、つねに平常心で。そんな達観したスタンスが、揺らぐことのない強さへとつながっている。撮影現場でも、最近は、「『いいシーンを撮りたい』という欲をなるべく抑えるようにしている」と言う。

「『このシーンは頑張らないと』と思うと、私は余計な意識や力が入ってしまうので、できるだけ力を抜いて深呼吸して。『練習は本番のように、本番は練習のように』というのを心がけています。俯瞰して見られるようになったことで、自分の対処法もわかってきました。それで楽になったところもあるし、もっと自分を知らないとダメだなという反省もあります。これからも自分自身と向き合っていかなければいけないなと改めて感じています」

そんな彼女にとっての憧れの人を聞いてみると、俳優でエッセイストの檀ふみさんの名前が挙がった。

「子どもの頃に共演して以来、節目節目でお会いしていて、ずっとつながっている方なんです。最近は共通の知人の方と3人でクラシックのコンサートに行ってきました。檀さんはクラシックにも精通しているし、読書家で文章も書かれるし、建築も詳しくて、お料理も上手で。楽しみながら、毎日を丁寧に暮らしている感じがとても素敵だな、と。そして動物をたくさん飼っていらしたところもうらやましい!私も大自然の中で、鳥たちと一緒にコーヒーを飲みながら本を読んでいる――今はそんな老後を想像して楽しんでいます(笑)」

これから先も「何か夢中になれるものに出合いたい」と明るく前を向く。

「もう少し年齢を重ねていく中で、俳優という仕事と同じぐらい気持ちが動くものと出合えたらいいですね。それがまだ何かはわからないですが、時間を忘れて没頭できるものが見つけられたら、もっとすごく楽しいだろうなと思っています」

井上真央の未来は豊かに広がる。

井上真央プロフィール画像
井上真央

1987年、神奈川県生まれ。1999年、ドラマ「キッズ・ウォー」 で注目され、2005年にはドラマ「花より男子」がヒット。映画『八日目の蟬』、大河ドラマ「花燃ゆ」、ドラマ「100万回言えばよかった」など代表作多数。昨年の秋公開の映画『わたしのお母さん』 のDVDが4月28日に発売&U-NEXT独占配信スタート。

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