
三笘薫選手がSPURに初めて登場したのは2021年4月号。サッカー選手として川崎フロンターレでプロデビューし、ぶっちぎりのブレイクを果たしたあとだ。それから2年後、イングランドのプレミアリーグでこれほど鮮やかなデビューシーズンを飾るなんて、想像できていたのは三笘選手本人だけかも。いや、SPURも当時からスターが誕生したと信じていたからこそ、取材したのだ。
どんな分野でもスターが生まれる時にはストーリーが欠かせない。スポーツ選手は特に一瞬の動き、ひとつのプレーが大勢に共有され、たちまちずっと語り継がれるストーリーになる。2022年FIFAワールドカップで日本代表の逆転ゴールのアシストとなった三笘選手のプレーは、「ボールがラインを割ったかどうか」が判定される間、世界中が固唾を飲んだおかげで大会屈指の記憶に残る瞬間となった。
それはプレミア/ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンでの数々のプレー、FAカップ/リバプール戦での驚異的な決勝ゴールなどとあいまって、ファンやメディアの注目を集めることに。「ミトマって一体誰なんだ?」という好奇心が、“大卒のプロ選手”という彼のプロフィールを前面に押しだしたのだ。
特に卒論でドリブルを取り上げたという話題は、イギリスの記事やポッドキャスト、試合の中継の際にさえ何度も聞いたものだ。イギリス人にとっては大学生がプロ(しかも1部リーグ)の選手になることが想像しづらく、三笘選手にはとにかくプレーにもストーリーにも驚かされる、というのが共通認識なのだろう。



