K-POP 界を牽引するグループ「SEVENTEEN」の統括リーダー、S.COUPSが初登場。春を告げる爽やかなスタイルを、凛とした佇まいで着こなす。インタビューでは、語られることの少ない素顔について、そしてグループへの愛とこれからを語った。
※この記事は2024年4月発売のSPUR 6月号に掲載したものです。
2015年、世界で活躍する13人組グループSEVENTEENのメンバーとしてデビュー。統括兼HIPHOP TEAMのリーダー。ステージの上でのカリスマあふれるパフォーマンスはもちろんのこと、作詞作曲の才能も光り、クリエイターとしての一面にも注目が集まる。4月30日(日本お届け日/一般店舗着日)にSEVENTEEN BEST ALBUM「17 IS RIGHT HERE」をリリース。5月には日本初のスタジアム公演『SEVENTEEN TOUR 'FOLLOW' AGAIN TO JAPAN』を控える。
自らの役目を全うし、グループに全エネルギーを注ぐ
長い冬の終わりを告げるかのように、春の風が舞い込んだ3月中旬のソウル。待ちに待った季節の訪れとともに、SEVENTEENのS.COUPSさんがカメラの前に戻ってきた。
日本で単独表紙を飾るのは本誌が初。さらに負傷による休養から復帰後初となる日本の雑誌の撮影は彼にとっても特別な時間になったようだ。
「今までは一人で撮影をするのが少し重荷で、自ら進んでグラビアの仕事をすることはなかったんです。だけどCARAT(SEVENTEENのファンの総称)たちを待たせてしまう前にSPURでしか見せられないS.COUPSを伝えたくて決心しました。ライブやSNSコンテンツとはまた違った魅力を、楽しんでいただけたらと思います」
そんな意気込みで臨んだ今回の撮影で、まずお気に入りの一枚を選んでもらった。
「素敵な衣装をたくさん用意していただきありがとうございます。全部気に入ったのですが、強いて言うならカーキのコートのコーディネート。個人的に好きな〝オールドマネールック〟で、若干ラフな感じもあり、プライベートでも真似したいなと」
S.COUPSは今のK-POPを牽引するグループの統括リーダーとして知られている。しかし、彼の内面を知る機会はそう多くない。改めて「S.COUPSさんはどういう人ですか?」と問うと、沈黙の後意外な答えが返ってきた。
「強く見られたい人……かな。弱く見られたくないんです。リーダーってグループのフロントマンじゃないですか。そのせいでチームが持っているエネルギーやイメージが弱く見えるのは嫌なんです。でも本当の自分は慎重で臆病な人間。だからこそよりいっそう強い姿を見せたいんだと思います。とは言いつつ最近は、キャリアも長くなってきたので、素の部分も見せるように。逆にマンネ(最年少)のようなイメージがついてきたかも(笑)」
年齢とキャリアを重ね、訪れた心境の変化はグループの在り方にも影響を与えたようだ。
「メンバーにとってS.COUPSは兄でありリーダーなので、デビュー当初はメンバーにも厳しく接していたと思います。でもピリついた雰囲気の中でステージに立っても、幸せなのかとずっと悩み、その状況にいつも違和感を感じていた。だから時間をかけて、メンバー全員が喜びを感じられるステージを目指し、変わっていきました」
本人もいちアーティストでありながら、常々「グループのためなら個人活動を控えるのも厭わない」と公言している。自我を抑えてチームに尽くす心の内についても尋ねた。
「尽くすというよりは、できる役割の一つだと思ってます。それはメンバーも同じ。方法は違うけど、お互いのために動いています。僕の場合はたまたまリーダーという役割を与えられただけ。個人的な活動よりも、グループ活動に時間とエネルギーをより集中させることで、チームを守っているんです」
以前JEONGHANさんに取材した際(2022年10月号)も、「グループの役に立ちたいから、できることは何でもやる」と話してくれた。偶然とは思えない一致に、二人の間には暗黙のルールがあるのかと勘ぐってしまう。
「同い年であり、年長組のJEONGHANとはよく話をするので、チームに対する姿勢が自然と似てくるのかもしれませんね。僕たちが気をつけているのは、年上だという理由だけで欲を出して行動しないこと。その姿を見て他メンバーたちもチームについて考えてくれたら、と思っています」
そんな裏方気質の彼だからこそ、昨年末にSNSを通じて発表したソロ曲「Me」が印象的だった。心の内を吐露するかのような歌詞、その言葉の裏に隠されたメッセージは?
「〝大丈夫だから、心配しないで〟、と伝えたかったんです。CARATはいつもつらくて悩んでいることを察してくれる。だから〝大丈夫だよ〟って伝えないと、ずっとヤキモキするんじゃないかと思って。CARATの前では、正直でありたいんですよ。〝チェ・スンチョル(本名)〟、〝S.COUPS〟はいろいろあったけど乗り越えたんだな、という気持ちで聴いてくれたらうれしいです」
振り返ることはせず上だけを見て走り続ける
デビューして約9年。近年ではアルバムセールス歴代1位など記録を更新し続け、名実ともにK-POPの頂点に立ったSEVENTEEN。実績もさることながら、カムバックのたびに圧倒的な熱量とクオリティを見せつけるその原動力は、大切な存在があってこそだ。
「頑張れる理由はもちろんCARATですが、同様に、メンバーたちが絶対的な力になっています。息切れして倒れそうになったとき、疲れて休みたいとき、また走れるようにと、いつも手を引っ張ってくれたのは仲間たちでした。どんなときもエネルギッシュな姿を見ながら、多くを学び、心を奮い立たせることができました。反対に違う誰かが倒れたら僕が手を差し出す。そうやってお互いを支えにしながら、上だけを目指してきました」
予測不能な勢いで進化するK-POPだが、その激流にのみ込まれないようどう立ち向かっていくのだろうか。
「こだわりすぎず今のまま、僕らが得意なことを続けていきたいです。確かにK-POPのマーケットは大きく変わりました。でもその流れに乗ろうと無理に個性や、やりたいことを変えていたとしたら、現在のSEVENTEENは存在しなかったと思います。僕らは自分たちを信じて続けていくことが、最大の長所であり武器なんです。メンバーのWOOZIが作る曲は、決して時代や流行に左右されません。いつだってそのときに伝えたい言葉を、彼のメロディにのせてCARATに届けてきました。これからも変わらず、自分たちだけの道を切り開いていきたいです。そして僕らの集大成ともいえるベストアルバムが4月末に発売されます。僕なりにコンセプトを一言で表現するなら、〝WOOZI〟。彼の歩んできた道が反映されているように感じます」
今年は初の弟グループ「TWS」がデビューし、K-POP第5世代が幕開けとなった。続々とデビューする後輩たちに向けて、アドバイスをお願いすると、「新人のとき、先輩たちから『君たちはきっと成功するよ!』と言われたことが大きな力になったんです。ですから、アドバイスというよりも、たくさん褒めたいし、心から応援していきたい。今後大変なこともあるし、予想外のトラブルも起こると思います。心がつらかったり、怪我をすることもあるでしょう。でも仲間がいれば、乗り越えられる。もし一人ぼっちだと感じたら、周りのメンバーや友達を頼ってください。そして自分自身も多くの人に頼られるようになってください」
来たる5月には日本初のスタジアムツアーが始まる。成功したアーティストだけが立てる舞台だけに、いっそう注目と期待が集まる。
「まずはステージに上がれるだけでも、幸せだと思ってます。スタジアムツアーは、正直まだ実感が湧かない。デビュー当初からの夢だった昨年のドームツアーのときは、(怪我で)出演できなかったものの、同じ空間にはいました。ドームに満ちる瞬間のエネルギーや、あのスケール感でしか得られない喜びはすごく感動的だった。スタジアムがそれよりももっと大きいなんて、想像もつかないですよ。とにかく楽しみです。そしてサポートしてきてくれたCARATのおかげで、スタジアムでコンサートができるアーティストになれたことがとても誇らしいです。今回は舞台に立たせてもらうことになったのですが、皆さんの顔が見られるだけでも大満足。どうか心配しないでください」
ツアー後も、ドイツで開催される「ロラパルーザ・ベルリン」の出演を控えるなど、活躍の場は無限大に広がっていく。火山のマグマのように絶え間なく湧き上がるエネルギーは一体、どこから生まれてくるのだろうか?
「それは僕も知りたいです(笑)。ただ一つ言えるのは、13人が集まると、自然とパワーが湧いてくる。不思議な縁で結ばれているのでしょうね」
縁といえばSEVENTEENはCARATとの絆も、強いことで知られている。彼らが9年間もグループを続けられたのは、双方の努力のたまものにほかならない。
「アイドルは愛を与える側にならないといけません。CARATたちに愛してもらうことだけで満足するのではなくて、僕らがいかに多くの愛を伝えることができるのか。常に模索し、実行してきたことでいい関係を維持できたのかなと思います。気持ちが一方通行だったらきっと疲れてしまうはず。応援してくれる気持ちに精一杯こたえられるよう、所属レーベルも一丸となり常に発信し続けている。ありがたいことにスタッフの方たちも、CARATが何を求めているのか徹底的に研究して教えてくれるんです。そしてやりたいことは自由にやらせてくれる。幸せな環境ですよね」
メンバーやCARAT、そしてスタッフまで。SEVENTEENに関わるすべての人を束ねる彼にとって、リーダーという役割がもたらす意味を聞いてみた。
「リーダーって結局グループの一人にすぎず、特別でもなんでもないんです。それよりもメンバーの頼りになるような、グループの柱になりたいです。僕という人間がそういう存在でありたいです」
S.COUPSが紡ぐ絆の糸は、これからどんな未来を織り上げていくのだろうか。いつか完成するその布はきっと、包容力にあふれ、温かさに満ちているはずだ。