Livio De Marchi(リヴィオ・デ・マルキ)
1 木で彫ったレインコート。ジャケットや靴、バッグなど、服のモチーフも得意3 大運河を走る木製フェラーリにはベネチア中が度肝を抜かれた
木とガラスの職人アーティスト 壁にふんわりとかかったレインコート、洗濯紐に干したパンツやブラジャー。それらは布のように見えるが、実は固い木の彫刻! そんな驚きとユーモアあふれる作品で知られるリヴィオ・デ・マルキは、永遠の遊び心を持つ職人アーティストだ。サン・マルコ広場から徒歩10分ほどの工房は、わくわくする作品であふれている。一方、ベネチアならではのガラスと木を組み合わせた作品は、サンマルコ広場に面したギャラリーショップ「OROVETRO murano(オーロヴェトロ・ムラーノ)」に常設展示。ガラス製の絵の具が飛び出すチューブや巨大な筆を組み合わせた椅子など、カラフルで躍動感あふれる作品が揃う。リヴィオは、ベネチアの運河を舞台とした大規模なインスタレーションでも名を知られている。ベネチアの大運河を自作の木製フェラーリで疾走したり、巨大なバイオリンを運河に浮かべ、その上でコンサートを開催したり……ベネチア愛をたたえた奇想天外な大仕掛けを、地元民はとても楽しみにしている。ちなみに、木製フェラーリの制作費は、本物のフェラーリよりも高くついたそう。
2 ユニークなオブジェで埋め尽くされた工房。日本人の妻が常駐し、日本語対応も可4 帽子と髭がトレードマークのダンディなリヴィオ。1950年代から木工に携わる5 サン・マルコ広場のギャラリーに展示されるガラス作品もユーモアたっぷり
DATA San Marco 2742/A, Calle del Dose Da Ponte, Corte Da Ponte-S.Maurizio, 30124 Venezia 電話番号:+39(0)415 285694 https://www.liviodemarchi.com/ ※予約必須 ※ギャラリー「OROVETRO murano」https://orovetro.it/
MARIO BEVILACQUA(マリオ・べヴィラックア)
6 クッションカバー(€170~)やチャームにもなるタッセル(€12~)は、お土産にも
ファッションメゾンも愛する"布の宝石" 7世紀末から1000年以上にわたり、長く国家として存続したベネチア共和国は、東地中海貿易で栄えた。その代表的な輸出品のひとつ、多色使いの立体的なシルクビロードは"布の宝石"とも呼ばれて世界中で珍重された。しかし今はその栄華も影をひそめ、1499年から続く「テッシトゥーラ・ルイージ・ベヴィラックア」が、本島に現存する唯一の工房。そのビロードを取り扱うショップ「マリオ・ベヴィラックア」は、本島内に2店舗を構える。18世紀の織り機を用いて伝統的製法で手織りするビロードは、熟練の職人でも一日に20~40㎝ほどしか織れないという稀少な布。バチカンやホワイトハウス、世界の王室も御用達だ。ベネチア生まれのブランド「ロベルタ・ディ・カメリーノ」の有名なバゴンギバッグには、このビロードが用いられている。現代においても、ベヴィラックアのビロードに魅せられるファッションメゾンによる特注は多く、ドルチェ&ガッバーナ、グッチ、ヴァレンティノなどのランウェイにも登場している。職人の手が紡ぐ、永遠の美を愛でてみて。
7 テーブルセンターなどさまざまな布が揃う。独自の技術"ソプラリッツォ"を用いた立体的ビロードは必見8 歴史を感じさせるSanta Maria Del Giglioの店舗。サン・マルコ広場から徒歩8分
DATA San Marco 2520, Santa Maria Del Giglio, 30124 Venezia 電話番号:+39(0)41 2410662https://www.bevilacquatessuti.com/ ※サン・マルコ寺院裏手Fondamenta Canonicaにも店舗あり
Dalla Lidia Merletti d’Arte(ダッラ・リディア・メルレッティ・ダールテ)
9 ベッドリネンやテーブルクロスなど、大物も棚にぎっしり 10 ハンカチは€50~。手前中央は、50年前のアンティーク(€500)、右は89歳の職人が仕上げたという稀少ピース11 記念に買いたいレースのピアスは、€35~
ロマンティックなレースを訪ねてブラーノ島へ ベネチア本島から水上バスで約40分。ベネチアン・レースの生まれ故郷ブラーノ島に到着する。カラフルに塗り分けられた家が運河沿いに連なる街並みは、おとぎ話の舞台のようだ。霧が立ち込めたときに漁師が沖から自分の家を簡単に見分けられるよう、色鮮やかに塗られたのが起源だという。青く塗られた「ダッラ・リディア・メルレッティ・ダールテ」は、第二次世界大戦後すぐにブラーノ島初のショップをオープンした老舗のレース工房。店内奥には、ルイ14世が所有していた扇や、18世紀のウェディングドレスなど、創業者ファミリーがオークションで蒐集した16世紀以降のアンティークレースが展示されている。ブラーノ島内では、安価な中国製品なども出回っているが、ここのレースはすべて「メイド・イン・ブラーノ」の一級品。すべてが職人によるハンドメイドのため高価だが、一見の価値がある。せっかくレースの本場を訪れたのなら本物に触れてみてはどうだろう。店内では職人がレース作りを実演していることも。「後継者不足が悩み」だと話す彼女の繊細な手捌きに思わず見惚れてしまうはず。
12 子どもの頃からレース作りを習ったという、大御所職人のパオラが実演中。気の遠くなるような細かい作業13 店内奥には私設のレースミュージアムが。18世紀のウェディングドレスは、ため息の出る繊細さ14 レースのモチーフをあしらったビロードのバッグは特注品 15 青く塗られた外観が目を引く
DATA Via Galuppi,215, 30142 Burano (Venezia) +39(0)41730052https://www.dallalidia.com
marina e susanna sent(マリーナ・エ・スザンナ・セント)
16 代表作のひとつ「soap」。サイズにバリエーションがあり、それぞれ泡のボリュームが異なる。€120~17 ムラーノ島の工房に併設されたショールーム兼ブティック。その他、ベネチア本島内に2店舗を構える
ムラーノグラスを現代風に刷新 ベネチアン・グラスの産地、ムラーノ島で300年以上続く工房の跡継ぎとして生まれた姉妹が、「コンテンポラリーアート&デザインとしてムラーノグラスを表現していこう」と1993年に立ち上げたブランド「マリーナ&スザンナ セント」。建築デザイナーの姉スザンナと、ガラス製造技術に秀でた妹マリーナが作り上げるジュエリーやオブジェは、伝統的な装飾のベネチアン・グラスとは一線を画した、モダンな造形。ガラスという素材の永遠性と耐久性の間でバランスをとりながら、透明で儚いミニマリズムを探求した代表作の「soap(ソープ)」(2001年)は、吹きガラスの玉を連ねて、泡のように表現したネックレス。身につけると必ず「それは何?」と聞かれるキャッチーなジュエリーは、「ちょっと急いでシャワーしたから泡を流し忘れちゃって」と答えるのがお約束。ほかには、躍動感あふれるセンスのよい色を重ねたジュエリーもガラスならではの独特の質感が魅力。NYのMoMAデザインストアで取り扱われたり、世界各地の美術館に招聘されるなど、アート界でも実力が認められている。
18 アーティスティックなペーパーウエイトやブレスレット。独特なカラーリングに惹かれる19 本島内、ペギー・グッゲンハイム・コレクション近くにあるドルソドゥーロ店20 ベネチアン・グラスの産地ムラーノ島にある工房は、可愛い三角屋根が目印
DATA Fondamenta Serenella, 20, 30141 Murano (Venezia) +39(0)41 5274665 https://marinaesusannasent.com/ ※ベネチア本島内にも2店舗あり。
Dorsoduro店(Dorsoduro 669, 681,Campo San Vio 30123 Venezia) San Polo店(San Polo, 70, Sotoportego de Rialto 30125 Venezia)