【パラアスリートが見つめる未来 vol.03】ゴールボール/高橋利恵子さん

チームの強みは、「組織力」 悲願の金メダル獲得を目指す!

SPUR6月号 高橋利恵子

ゴールボールは、視覚障がいのある選手がアイシェードで目隠しをして行う。攻撃は鈴の入ったボールを相手ゴールに投球、守備は全身でボールをセービングする3対3の対戦競技。現在、世界ランキング2位の日本女子代表チームをキャプテンとして牽引する、高橋利恵子選手。彼女は先天性の網膜の病気のため、生まれたときから目に障がいがある。

「中学は地元の特別支援学校に通い、高校から親元を離れて上京することを決めました。地元の盲学校に進学すると、鍼灸科に進むことが一般的でどうしても進路が限られてしまいますが、将来の選択肢を狭めたくなかったんです。当時から大学進学にも興味があり、いつか特別支援学校の教師になるのが夢でした」

この決断がゴールボールとの出合いを生む。高橋選手自身にとっても、これがひとつのターニングポイントだった。

「ゴールボールに出合ったのは、高校2年生のとき。体育教諭から人数合わせのため、試合に出場してほしいと誘われたのがきっかけでした。先生は『何もしなくていい。ただ寝ていればいいよ』って(笑)。今振り返ると、あのときは手ごたえもあまりなくて、日本代表に選ばれるなんて想像もしていなかったです」

受験勉強で競技から離れた時期もあったが、筑波大学へ進学後に再び競技を始めることに。気づけばゴールボールにのめり込み、すぐに頭角を現していった。そして、日本代表に初選抜されてから5年ほどでキャプテンに就任し、名実ともにチームを支える存在に。

「正直、選ばれたときは本当に驚きました。みんなを引っ張っていく役目は得意ではないのですが、先輩、後輩関係なく、意見を言いやすい雰囲気作りを徹底しています。苦しいときやつらいときには愚痴を言ってもいいと思う。みんなが同じ方向を向き、明るくなれるような声かけを心がけています。日本代表チームの持ち味は組織力が高いところ。他国は9mのコートを3mずつ守っているような感じですが、私たちは3人+ベンチのスタッフからの声かけでしっかりと壁を作り、9mをみんなで守っています」

SPUR6月号 高橋利恵子
ⒸAflo

3年前の東京2020パラリンピックでの銅メダルという成果を経て、パリ大会では悲願の金メダルの獲得を目指す。

「残りの4カ月でしっかりと仕上げていけば、必ず優勝を狙える位置にいけると思います。今はパラリンピックに向けて各国が競技力を高めている時期。最後は運をものにし、実力を出し切ったチームが勝つと思います。結果を通して、ゴールボールをもっと広く知ってもらいたい。視覚障がいがあってもいろいろな選択肢があることを伝えていきたいですね」

高橋利恵子プロフィール画像
高橋利恵子

たかはし りえこ●1998年3月20日、広島県生まれ。先天性の網膜の病気により、幼い頃から視覚障害がある。中学は地元の特別支援学校で学び、高校からは上京して筑波大学付属視覚特別支援学校に進学。高校2年生のとき、ゴールボールに出合う。その後、受験のために競技を一時離れるも、大学入学後に再開。2018年に日本代表入りを果たす。2021年には2020東京パラリンピックに初出場し、銅メダル獲得に貢献した。2023年から日本代表のキャプテンを務める。現在は、関彰商事株式会社に所属。

高橋さんを読み解く3つのS

Society

障がいの有無にかかわらず、競技を通じて、いろんな価値観や違う国の文化にも触れることができました。今日の取材前には小学校で行われたゴールボールの体験会に参加しました。子どもたちの元気のよさに圧倒されることもありますが、競技以外に私の障がいについても関心を持ち、たくさん質問をしてくれてうれしかったです。

Sleep

この冬、無印良品で寝具を新調してから、寝る環境を整えることも重要だと思うようになりました。本当に暖かくて気持ちがいいので、つい布団から出られなくなっています(笑)。寝る前のルーティンは読書をすること。この時間が至福のときです。今はチームメイトにすすめてもらった『記憶屋』という小説を読んでいます。

Smile

日本代表合宿中のひそかな楽しみは、みんなで近くのコンビニまで散歩に行ってスイーツを買うことです。どうしても合宿中は練習施設に缶詰めになるので、こうしたちょっとした息抜きを大切にしています。あとは、お茶も私のリラックスアイテムの一つ。今までいろいろと試してみましたが、最近のお気に入りは黒豆茶です。

 

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