母や祖母が手芸好きだったんですね。可愛らしい花がちくちく刺しゅうされたハンカチやビーズのリング、手編みのニットはいまだに捨てられません。モードの世界ではこういったものを「グラニー(おばあちゃん)・テイスト」なんて呼びます。あえての素朴な「外し」。今季、この流れを汲む「クラフト」がトレンドに上がっていますが、とても親近感を覚えます。
ただ、「おしゃれ」として考えた時、意外と難しい。好きだからこそ、よけいにです。経験上、キュンと来たものこそ衝動買いでなく、じっくり吟味しないと失敗します。単なるほっこりで終わるか、おしゃれな「外し」として成立するのか。
この問いへの最適解が、ボッテガ・ヴェネタのバッグでした。チャンキーなニットにがま口フォルム。まさにおばあちゃんの手作り風なぬくもりが感じられます。しかしよく見ると持ち手にはソリッドなチェーン。開口部にはシグネチャーであるトライアングルのディテールをあしらい、洗練された仕上がりになっています。
素材のムードを裏切るかのような、エレクトリックなブルーもモダン。近所でぶらぶらするとして、例えば楽チンなジャンプスーツにサクッと持ってもおしゃれを更新できる。ちなみに、ガバッと開いて気兼ねなく持ち物を入れられる包容力もありがたいです。
ボッテガ・ヴェネタを手がけるダニエル・リーは絶妙なバランス感覚を持っていると思います。私はダニエルが手がける2シーズン目のショーを目撃したのですが、彼の服はランウェイで見るとスーパー・スタイリッシュ。一見、「この服を着るには、緊張感が求められそう、ゴクリ(←唾を飲み込む音)」と思わせるところがあります。ところがその翌日、展示会でプレスの方から裏話を伺うと途端に人間味が溢れてくる。ボタンに茶目っ気が込められていたり、ストイックに見えて実はどんな体型にも合うように作られていたり。
一番印象的だったのは、彼が自分の家族や近所に住んでいる人々を思い浮かべてデザインしているというエピソード。一般的にデザイナーのミューズはセレブリティであることが多いのですが……。ダニエルの「スタイリッシュ」は突き放すのではなく、とっても親密。そんな彼の美的感覚と人柄が凝縮されたバッグなんですよね。 (エディターNAMIKI)
【CRAFT BAG】
この春挑戦すべきは「クラフト」感のあるバッグ







